京都農販日誌

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梅雨時期の大雨対策

2022/05/29

毎年発生するようになった大雨の対策の話をしてほしいという連絡を頻繁に受けるようになったため、内容を整理してみます。



連日の大雨で日射量が減る等色々と考えることはありますが、根腐れに注目して話を進めます。

根腐れの被害が少なければ、たまにある晴天や雨上がり後の光合成の際に根から適切に養分を吸収でき、光合成の質が向上するので気にするべき事が少なくなります。


根腐れが発生する原因は主に根の酸欠とガスの発生があります。

根の酸欠は畑全体が水没をして、土の中に酸素が行き渡らない時に発生し、ガスの発生は酸素がない嫌気状態で硝酸塩や硫酸塩系の即効性の肥効の肥料が還元された時に発生します。

ガスは主にアンモニアガス、亜硝酸ガスと硫化水素があり、どれも根に当たると根が焼けてしまいます。

※今回の記事では触れませんが、メタンガスもあります


根腐れを回避する手段として、「水没をさせない」や「ガスが発生する肥料は元肥として用いない」があり、これらを一つずつ丁寧に見ていきます。




水没をさせないで最初にすべき内容は土壌の物理性を向上して、排水性を高めることです。

畑作であれば地表から大体60cmあたりに形成されている耕盤層と呼ばれる硬い層を壊して、土の中で水の溜まりやすいところを少なくします。


耕盤層の破壊はサブソイラ等を用いて行います。




耕盤層を破壊すると土の水持ちが悪くなるので、次は土の物理性を改善し、排水性と保水性を高めます。



土の物理性を高めるには、枝葉が腐熟した腐植と呼ばれる植物性の有機物を投入するのが有効ですが、



腐植を速やかに土になじませるために、2:1型もしくは2:1:1型粘土鉱物を合わせて用います。

これらの土壌改良材を用いた後に根の強いイネ科の緑肥を育てると更に有効です。

緑肥を活用して、土壌の物理性の向上を早める





次は通路に降雨後に水が溜まりにくいようにします。

畑の端に明渠を掘り、畑の外側に向かって積極的に排水をできるようにします。



可能であれば明渠への排水を確保した後に通路にマルチムギといった背丈が高くならない緑肥で覆うと良いです。



根の強いイネ科の緑肥により水が下に抜ける道が増えつつ、根周辺の水持ち(保水性)が高まります。

葉からの定期的な蒸散により土壌の水分量が適量になり、根腐れの心配が軽減されます。

アザミウマの対策を考える




最後に保険として酸素供給剤を仕込むという手もありますが、あくまで保険程度に留め依存し過ぎないことをお勧めします。



酸素供給剤の仕組みは過酸化石灰を土に仕込み、水に触れることで過酸化水素と消石灰を発生させ、過酸化水素から酸素を放出する仕組みです。

少量とはいえ、土を固くする要素の石灰を用いますので、降雨後に土が固くなり、梅雨が開けた後の夏場のガスの発生率を高めます。




続いて、ガスの発生要因の軽減ですが、



最も心配なのが、家畜糞による土作りを行っていた場合です。

家畜糞にはガスを発生する硝酸塩の肥料成分がふんだんに含まれていて、有機質肥料のような肥料なのですが、堆肥と捉えて多投する方が非常に多いです。

物理性も多少は向上しますが、それ以上にガスの発生率が高まってしまうため、



畑が水没してしまった場合の悪影響は深刻です。

硝酸態窒素のような即効性の肥料は根周辺の浸透圧を高めてしまい、この圧も作物に根に対して悪影響です。

生育状況の確認と発根促進に関すること


土作りを行いたい時は枝葉が腐熟した腐植量が多い植物性の堆肥を必ず用いることにしましょう。


今回の内容を徹底した上で、はじめて酸素剤の葉面散布といった対処療法が有効になります。

対処療法としては、根の痛みを考慮して、アミノ酸や微量要素の葉面散布剤が有効です。

詳しくは下記の記事をご覧ください。

葉面散布で殺虫剤の使用回数を減らして秀品率の向上を目指す

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