食害性昆虫への防御と天敵の誘引について

投稿日:2022-11-11  


ダイコンやコマツナ等の同じ種の野菜を育てている畑で、



時々、1株のみ昆虫に食害されて葉が網目状になっているが、隣を含む周辺の株では葉に食害痕がほとんどないという状態を見かけます。


土が良い(土がふかふかで大雨の後でもすぐに水が引きつつ、保水性は高い)所では、



野菜の葉や根元でミイラになったイモムシを見かけることもあります。

植物が食害性昆虫に葉をかじられるといった物理的な傷害の後には傷害誘導全身抵抗性という防御を行いますが、興味深いことに周辺で食害を受けている株があると、まだ食害を受けていないにも関わらず、同様の防御を行い、食害性昆虫による被害がなくなるといったことがあります。


私が学生の頃は根と根が繋がっていて、隣同士の株が痛みの情報のやりとりをしているのでは?という話題がありましたが、最近は食害を受けた葉から痛みのメッセージの物質を放出し、隣の株がそのメッセージを受け取っているのでは?という話題をよく見かけるようになりました。


このメッセージのやりとりに付随して、食害を受けた株の葉から放出されたメッセージが、肉食昆虫を引き寄せて、食害性昆虫を捕食してもらうという話題もあります。

今回は食害性昆虫による食害を受けた葉から放出されるメッセージについて見ていくことにします。




新しい植物ホルモンの科学 第3版 - 講談社に食害性昆虫や病害性のカビに対する防御応答の植物ホルモンとして、ジャスモン酸とサリチル酸についての詳しい説明が記載されています。

植物体内でのジャスモン酸の働きを見てみると、


※図:豊田正嗣 グルタミン酸とカルシウムシグナルを介した傷害応答 植物の生長調節 Vol. 53, No. 2, 2018 図2を改変


食害された組織だけではなく様々な組織で食害性昆虫の防御反応を示すような物質(消化酵素の働きを止める等)を合成して食害性昆虫から身を守ります。

※関連記事:ジャスモン酸機能制御剤プロヒドロジャスモンの制虫剤としての開発研究 植物の生長調節 Vol. 55, No. 1, 2020


このジャスモン酸周りでは更に興味深いことがいくつかありまして、食害された箇所からメッセージとして放出され、周辺のメッセージを受け取った株が同様の防御反応を示すようになります。

ジャスモン酸メチル - Wikipedia


他には食害性昆虫に食害されなくても、葉にグルタミンを投与したり、根圏で非病原性のカビ等と共生(誘導全身抵抗性)をしても同様の防御反応を示しました。

大木理 植物病理学 第2版 東京化学同人 136ページより

Trichoderma Species: Versatile Plant Symbionts Phytopathology Vol. 109, No. 1 January 2019


植物は葉を食害された時にいくつかの物質をブレンドして放出し、天敵を誘引するという報告もあります。

植物の香りで特定の天敵を誘引し、標的とした害虫の発生抑制に成功 -植物の香りを用いた新しい害虫防除法- | 京都大学


自身の耐性と天敵による食害性昆虫の個体数の減少を組み合わせることで、食害性昆虫からの被害を減らします。

※上記の話は主にアブラナ科のシロイヌナズナでの研究報告ですが、主要作物でも同様の反応があると仮定して話を進めます。




トマトの話題にはなりますが、葉から発せられる香りで興味深い話があります。

松井健二 植物の葉の香り化合物による生存戦略 日本農薬学会誌 44(2), 132‒140 (2019)で葉が損傷した時に放出される「みどりの香り」についての記載があります。


葉が損傷すると傷口からみどりの香りが放出し、周辺の植物が青葉アルコールを吸収すると防御反応等(天敵誘引も含む)を示すという報告があります。

興味深い話題として、ダイズを栽培している畑で、周辺のセイタカアワダチソウを刈り取って周辺に置いたところダイズの食害が減り、イソフラボンの量が増えたり、トマトが人工的に放出したみどりの香りを吸収したところ、蒸散量が増して高温耐性が増したという報告があります。

PHYTOCHROME WEB Site すずみどり詳細


ダイズとセイタカアワダチソウの例でも分かる通り、みどりの香りは様々な植物が合成して放出する香りになり、全く異なる種が放出したみどりの香りを葉で吸収しても防御反応を示します。


この話題を応用すると、



通路に管理しやすい草のタネ(緑肥のマルチムギ等)を播いておき、ある程度の背丈になりましたら草刈り機で刈り倒します。

刈り倒す際に通路の草から大量のみどりの香りが放出され、畝の作物がみどりの香りを吸収して食害性昆虫等の抵抗性を向上するように刺激しますといったことが実現出来る可能性があります。


別の話題ですが、畑に草の根を張り巡らされた状態になりますので、大雨後の水はけの向上に繋がり、根の健康から蒸散周りのみどりの香りから得られる他の恩恵も強化されます。

梅雨時期の大雨対策




ジャスモン酸から誘導される抵抗性(傷害誘導全身抵抗性)には注意すべき点があります。

植物の抵抗性の発現には食害性昆虫から食害を受けた際に発生するもの(傷害誘導全身抵抗性)と根圏で非病原性のカビと共生した際に発生するもの(誘導全身抵抗性)の他に病原性のカビ等の感染により発現する「全身獲得抵抗性」があります。


この抵抗性で厄介なことがありまして、食害性昆虫による食害と病原性のカビ等の感染による抵抗性が拮抗します。

拮抗するというのは食害性昆虫への防御を強くすれば、病原性のカビへの防御が疎かになり、病原性のカビへの防御を強くすれば、食害性昆虫への防御が弱くなるといったことを指します。


この問題に対して、好都合なことに土壌中のリン酸量と病原性のカビの振る舞いについてで触れた内容が役立ちそうです。

土壌中の病原性のカビは土のリン酸の量が多い場合は病原性になり、リン酸が少ない場合は非病原性になる傾向があります。



土のリン酸値を低く抑えることができれば、抵抗性を食害性昆虫への防御一点に絞ることが出来るようになります。



上記の内容を実現するに当たり、リン酸を豊富に含む家畜糞での土作りはすべきではないということになります。


作物が病原性のカビに感染され発病しないというのは、寄生されたカビに成長に必要な養分を盗られないということに繋がりまして、盗られなかった分の養分は食害性昆虫や空気中を漂う病原性のカビ等への防御へ回したり、品質の向上に繋げることができます。


有機農業や高品質の野菜を栽培する方から時々耳にする家畜糞での土作りは害虫を呼ぶというのは今回の話が背景にあるからなのかもしれません。

土壌中のリン酸量と病原性のカビの振る舞いについて

投稿日:2022-11-04  

作物が病原性のカビに感染することに関して興味深い研究報告がありますので、今回はその内容を紹介します。


リン栄養枯渇条件下での根圏糸状菌による植物生長促進 - Jpn. J. Phytopathol. 84: 78–84 (2018)


上の図は左がColletotrichum tofieldiae(以後Ctと表記する)というカビ(菌、糸状菌)で、右が有用な共生菌で有名な菌根菌で、アブラナ科のシロイヌナズナの根での挙動を示しています。

Colletotrichum属は作物の病原菌として報告されている菌がいくつかいる属になっています。


土壌中のリン酸が少ない環境で根にCtを感染させた植物を育てたところ、宿主の植物の成長を促すことが見られました。

一方土壌中にリン酸が豊富にある場合は宿主の植物の成長を促すということはなかったそうです。


この報告で興味深い報告として、Ctと近縁種のColletotrichum incanum(以後、Ciと表記する)という菌の話題があります。



Ciはダイコンの炭疽病の原因菌として知られていますが、Ciが根に感染した際、土壌中にリン酸が豊富にある場合は宿主の植物の成長を阻害し、土壌中にリン酸が少なかった場合は、宿主の植物に少量ではあるがリン酸を輸送したということが見られました。

これは土壌中のリン酸量によって病原性だと思われていたカビが病原菌になるか、共生菌のような振る舞いをするかが決まるということになります。

※ここでいうリン酸量は無機態のリン酸を指します。

リン酸過剰問題を緑肥で解決する時に意識すること


今回はダイコンの炭疽病菌のみの話題でしたが、おそらく他のカビ(菌)でも同様のことが言える可能性が高いので、



施肥時のリン酸は過剰にならないように注意深く設計する必要がありそうです。

※家畜糞で土作りを行うとすぐにリン酸過剰になります




ここで一つ厄介な問題に当たります。

病原性のカビの天敵は何か?の記事で病原性のカビの天敵を誘引するために


マッシュORG


廃菌床堆肥のマッシュORGを紹介しました。

このマッシュORGには一点程欠点があって、土壌改良を目的とした堆肥なのにリン酸の量が多いというものがあります。


この問題を解決する為には、施肥の意識を変える必要があると考えていまして、肥料の三大要素であるNPKのうち、P(リン酸)を必須要素から外す必要があります。

土作り以外の基肥でリン酸を含めずに、リン酸は追肥のみで使用することを徹底すれば、廃菌床堆肥のリン酸が許容範囲に収まっていくと予想しています。




作物が病気に感染するというのは、病原性のカビが作物体内にある成長に重要な要素を盗るということになり、耐性や天敵の誘引に関する物質の合成量が減ってしまいます。

病気を抑えることが食害性昆虫の被害を抑えることに繋がり、殺虫剤や殺菌剤の使用回数の削減し、利益率の向上に繋がります。


減肥減農薬や有機栽培をするに当たって、今回の知見は重要になるはずです。

病原性のカビの天敵は何か?

投稿日:2022-11-03  

病害虫の被害の軽減の策として天敵を利用する方法があります。

天敵の例を挙げると、カメムシやウンカの天敵はカエル、チョウ目の幼虫の天敵はアシナガバチ等


天敵は食害性昆虫に注目が行きがちですが、病原性のカビ(糸状菌)でも天敵の話を時々見かけますので、カビの天敵について見ていきます。




病原性のカビ限定の話題ではありませんが、カビを捕食するカビとしてボタンタケ科のトリコデルマがいます。

トリコデルマはシイタケ菌を捕食するという厄介なカビというイメージがありますが、作物に病原性を示すカビを抑えるという報告もあります。

Trichoderma Species: Versatile Plant Symbionts Phytopathology Vol. 109, No. 1 January 2019


市場にトリコデルマの資材はたくさんありますが、事前にトリコデルマの好む環境にすることは必須ですが、目には見えない微生物であるため成果がわかりにくいという問題があります。


ここで一つ興味深い話を紹介します。


U. Burkhardt - Taken and uploaded on de:WP the 01/06/2006 by de:Benutzer:Onychiurus, CC 表示-継承 3.0, リンクによる


トビムシやササラダニが作物にとっての病原性のカビを捕食するという報告があります。

※トビムシが病原性のカビを捕食する報告はいくつかありますが、下記のURLの高校生の報告が読みやすかったのでリンクを掲載します

トビムシと伝染性植物病原菌 - 化学と生物 Vol. 51, No. 4, 2013


ここで更に興味深い話を紹介すると、



ミミズが通ったミミズ孔にトビムシが集まり、カビを捕食しているそうです。

中村好男著 根の生育環境としてのミミズ - 根の研究(Root Research) 10(4):127-133(2001)


昔からミミズがいる土は良い土という話がありますが、上記の関連から「ミミズが活発な土は作物が病気になりにくい」ということが言えそうです。




ミミズとトビムシの話を栽培で活用したいと思った時に何をすれば良いか?になりますが、


マッシュORG


廃菌床堆肥を施肥した土でよくミミズを見かけるようになります。

廃菌床はキノコ栽培時に使用した培地で、キノコに与えた米ぬか等の有機質の資材が残っていて、堆肥として施肥した際にそれらの有機物にミミズが集まってくるのでしょう。


培地栽培をするキノコといえば白色腐朽菌というカビ(糸状菌)で、細菌を捕食しながら成長を続けるそうです。

廃菌床堆肥の生物性の分析(サンリット・シードリンクスさんにして頂きました)を行ったところ、ほぼ白色腐朽菌で占められていたそうです。

マイナビ農業でサンリット・シードリンクスさんとの取り組みが紹介されました


ここで冒頭のトリコデルマの話に戻すと、トリコデルマはシイタケ等の白色腐朽菌の天敵です。

廃菌床堆肥を施肥して、白色腐朽菌の環境が整うと、トリコデルマの環境も整っていく可能性が高く、トビムシと合わせて作物に対しての病原性のカビの天敵が増えるという展開に繋がるかもしれません。


ここでトビムシが白色腐朽菌やトリコデルマを捕食してしまうのでは?と不安が生じますが、生態系の考え方の一つに極端に増えた種から捕食され、種毎の個体数のバランスが取れていくというものがあり、病気が多発するような土では、トビムシの食性の偏りが無い限り、病原性のカビから捕食されるようになります。


ここで一点注意すべきこととして、トビムシの環境が整った状態で殺虫剤を散布するとトビムシに影響を与え、作物の発病が高まり、殺菌剤を散布するとトリコデルマ等に影響を与え、作物の発病の恐れが更に高まる可能性があります。


農薬を使用しないと食害性昆虫の被害が心配になりますが、Trichoderma Species: Versatile Plant Symbionts Phytopathology Vol. 109, No. 1 January 2019でトリコデルマと根圏で共生した植物は病気に対する耐性や天敵を誘導するサリチル酸の合成が活発になるという報告が記載されていますので、天敵を活用した栽培を行うのであれば、自身で施した対策を信じて待つという姿勢が重要になります。

新しい植物ホルモンの科学 第3版 - 講談社 p161〜168




トビムシに関してもう一つ興味深い話があります。

この話を進める前に農業問題の一つの脱窒について触れておきます。


Cicle_del_nitrogen_de.svg: *Cicle_del_nitrogen_ca.svg: Johann Dréo (User:Nojhan), traduction de Joanjoc d'après Image:Cycle azote fr.svg.derivative work: Burkhard (talk)Nitrogen_Cycle.jpg: Environmental Protection Agencyderivative work: Raeky (talk) - Nitrogen Cycle.svgNitrogen_Cycle.jpg, CC 表示-継承 3.0, リンクによる


脱窒というのは、硝酸態窒素を施肥した際に土壌の微生物らによって一酸化二窒素や窒素ガスになり気化して窒素肥料が損失するという現象です。

一酸化二窒素が厄介で温室効果ガスとして扱われ、温室効果の影響は二酸化炭素の約300倍とされています。

気象庁 | 一酸化二窒素


この脱窒に対して、トビムシが脱窒に関与するカビを捕食して、一酸化二窒素の排出を削減したという報告があります。

エッセンシャル土壌微生物学 作物生産のための基礎 - 講談社 p92


脱窒は栽培から見たら窒素肥料の損失であり、昨今の肥料の高騰に対して肥料分の損失を防ぐことが出来る価値は大きいです。

トビムシの天敵活用で、施肥量を減らしつつ農薬の散布量も減らすことになり、環境貢献しつつ利益率が高まりますので、積極的に活用していきたいところです。


関連記事

微生物資材に頼る前に意識してほしいこと

ネギ作の間に行う稲作の効果を高めるには

投稿日:2022-10-22  


ネギの栽培が不調になった畑で、



ネギ作の間に稲作を行いネギ作の不調を改善するという手法があります。

稲作時の潅水でネギ作の時に溜まった悪影響を与える成分を溶かして排出することでネギ作の栽培の改善を行うことを狙っていますが、最近は間に稲作を行っても期待した効果が発揮しなくなったそうです。


問題を整理しながら解決策を探ることにしましょう。




ネギ作が不調になる要因を挙げてみると、

・ネギに対する病原性のカビが優勢になっている

・リン酸過剰(カビ由来の病気が多発する可能性あり)

・ガス発生要因(水溶性肥料)の残留

・カルシウム(石灰)過剰

・土の劣化で金属系の肥料(カリ、マンガンや亜鉛等)

・土壌の有機物が不足している

があります。


この要因に対して、稲作の潅水で期待出来る効果を考えてみると、稲作ではリン酸が溶解しやすいということなのでリン酸過剰は解決出来る可能性があります。

エッセンシャル 土壌微生物学 作物生産のための基礎 - 講談社 101ページより


ガス発生要因は栽培後半で使用する水溶性肥料や家畜糞、意識が向きにくいですが、



ロング肥料にある硫黄コートの肥料の殻が該当し、経験則になりますが潅水をすることで抜けるということは難しく、老朽化水田を誘発して次作以降の鉄欠乏が発生しやすくなります。

※鉄欠乏は光合成に影響します


カルシウム過剰に関しては、蓄積しやすいカルシウムの形状が炭酸石灰なので田に入水する水のpHでは劇的に改善するということは難しそうです。

※塩類集積の原因になる硝酸石灰や硫酸石灰は潅水によって量を減らせるかもしれません

※リン酸石灰は上記のリン溶解菌によって量を減らせるかもしれません


残りの土壌鉱物の劣化や有機物不足は稲作後のネギ作時の施肥設計でどうにかなりますが、ここで稲作のもつポテンシャルについて触れておきます。




年々増える猛暑日対策として、中干し無しの稲作に注目していますの記事で、稲作には

・田に入水する水に肥料分が含まれている

・潅水で酸素を遮断するので、田の底に有機物が蓄積しやすい

・酸化還元電位(Eh)が下がる(今回は触れません)

という特徴があります。


前者の水に含まれる肥料分は上流域にある鉱物から溶脱したもので、先程のネギ作の不調の原因の土壌の劣化と合致します。

欠乏症診断で最初に覚えるべき内容の移行性について


ネギ作の間の稲作でこの特徴を無下にするのは勿体ないです。


田の底に有機物が蓄積しやすいというのも、



ネギ作ではマルチを利用することが多く、マルチは有機物の消耗を早めるのでネギ作のみでは有機物が溜まりにくいですが、稲作時の有機物が蓄積しやすい状況をフル活用して有機物を大量に蓄積するのは有効な手になります。


興味深いことに、稲作でも有機物を積極的に蓄積するとガス発生要因の除去にも有効になりつつ、田の入水時に得られる肥料分の保肥に対しても有効です。


であれば、



ネギ作の間に行う稲作の効果を高めるためにすべきこととして、腐植質(有機物と同義)の堆肥を仕込んでおくことが考えられます。

ここで生じる不安に腐植質の堆肥をいつ頃にどれくらい使用すれば良いか?になりますが、レンゲ米等の栽培の知見から田起こしの1ヶ月前あたりには堆肥を入れておき、量は次作のネギ作で使用予定量の50%以上だとアタリを付けています。


稲作のデメリットになりますが、稲作後のネギ作では稲作時に水と一緒に粘土鉱物も流入して土が締まりやすくなっていますので、気持ち多めに腐植質の堆肥を入れておくと良いでしょう。


腐植堆肥でおすすめなのは、


ハイブリットORG - 京都農販


ハイブリットORGです。

マッシュORGは腐植以外にリン酸を含む米ぬか等が含まれていますので、今回の用途に合いません。

マッシュORG - 京都農販

今年も高槻の原生協コミュニティルームでレンゲ米栽培の報告会を行いました

投稿日:2022-10-19  



例年通り、今年も高槻の原生協コミュニティルームで物理性の改善 + レンゲ米 + 中干し無しの稲作の報告会を行いました。

高槻の原生協コミュニティルームでレンゲ米栽培の報告会を行いました


昨年まではレンゲ米をされている方のみでしたが、今年はこれからレンゲ米栽培を行いたいという方の参加もありました。


今年は中干し期間に猛暑日が当たってしまい、葉色が急激に落ち、追肥をした方が多かった(一発肥料が設計通りに効いていない)という異常な状態でした。

ただ、全体的に多収であったために猛暑日が早かった異常性の存在感が薄まってしまったという危機感を感じています。


おそらくですが、収支計算に追肥費 + 人件費を入れたら多収分を補填出来ない程の赤字になったのではないか?と心配しています。


報告した内容の詳細は下記の記事をご覧ください。

年々増える猛暑日対策として、中干し無しの稲作に注目しています

新しく畑を借りた時に意識すべきこと

投稿日:2022-10-13  


「新しく畑を借りました」という方から、「この後何をすれば良いですか?」と相談を受けることが多々あります。

尾野農園様勉強会詳細の記事で記載したように地質や土質を見たり、前作の栽培履歴を確認して施肥設計を決めますが、その前に注意しなければならないことがありますので今回は注意点を紹介します。


新しく畑を借りる時、前の栽培者が畑の管理に手が回らなくなることで栽培を辞めることが思いの外多いです。

世間では栽培者の高齢化により耕作面積が少なくなっているという情報が多いですが、



実際に畑に行ってみると、無茶な栽培をして土を酷使し、肥料や農薬にかかる費用や管理コストが年々増えているのに収量が減っていることで畑を手放したという所を多く見かけます。

栽培は土の状態が良いと「土が仕事をしてくれる」という状態になり、畑の管理コストが大幅に削減します。

酷使しなければ管理出来たところを、土の劣化によって管理コストの割に収穫できなくなった畑がたくさんあります。

欠乏症診断で最初に覚えるべき内容の移行性について


上記のような状態により手放された畑を借りて、今までの感覚で栽培を始めると、想定外の作業ロスが発生して利益率が低下します。

管理コストが上がってしまった畑の土の特徴を整理すると



・リン酸過剰により作物の病気が頻繁に発生する

・カルシウム過剰で他の金属系の要素が吸収できなくなる

・今までの栽培で有機物の投入が少なく、物理性が低く土が締り発根が不調になる

・(主にハウスで)高ECで塩類集積を起こしている

等があります。


上記のような状況で無理やり栽培を始めても、肥料にかけた費用に対して収量が低くなるのは自明ですので、出来ることならば借りてすぐに栽培を始めるのは止めた方が良いです。

栽培をする代わりに、



粗めの腐植質の堆肥を施した後で、



リン酸をよく吸収しつつ、根が強い緑肥を栽培した方が良いです。

できれば夏季の大きな緑肥が育つ時期にしっかりと緑肥を育てておいた方が後の栽培が楽になります。


緑肥をしっかりと育てて、花が咲く前に鋤き込んで土の物理性を改善させたところで始めて土台に立てたという認識にしておくと良いでしょう。

緑肥の栽培に関してはクリーニングクロップとして緑肥を育てた時に土に鋤き込んでも良いですか?の記事の一読をおすすめします。

年々増える猛暑日対策として、中干し無しの稲作に注目しています

投稿日:2022-08-18  

今回の内容は近畿中部の稲作になります。

収穫時期が9月上旬〜10月上旬を想定しています。



稲作の栽培に注目しています。


稲作に注目している理由は

肥料の使用量が少なく、肥料の海外依存率を低くできる

年々増え続ける猛暑日に対して有効

腐植の蓄積が容易で、大気中の二酸化炭素を固定して田の土に埋めることができる

ということがあります。



稲作が他の作物の栽培と大きく異なる点として、田に川から水を入れるということがあります。

川の水には上流域にある鉱物由来の様々な栄養素が含まれていて、田に入水することでリンや金属系の肥料分が入ってくることになります。

他に田の土壌にいる細菌によって窒素固定が頻繁に行われているという報告もあり、これらの要因から他作物と比較して肥料の使用量が格段に少ないということを実現しています。

水田土壌における増田曜子等 鉄還元菌窒素固定の発見と応用―マイクロバイオーム解析から低窒素農業へ― - 土と微生物(Soil Microorganisms) Vol. 74 No. 1, pp. 2–7(2020)

鉄で土を肥やす!低窒素農業 | 広報誌『弥生』 | 東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部




稲作と猛暑日ですが、

植物が根から水を吸い上げ、葉の裏側の気孔から蒸散する際に、体内の熱も一緒に放出します。

猛暑日対策


お盆前後に田に水があることで、日中の最も暑い時間帯でもイネが高温障害を受けにくくなります。




田に水を張ることはイネ以外の周辺の畑地にも良い影響をもたらします。

田んぼは水を管理する | 田んぼがもつ役割 | クボタのたんぼ [学んで楽しい!たんぼの総合情報サイト]のページに拠ると田の水の蒸発とイネの蒸散により、周辺の気温が下がります。



年々猛暑日が増え、植物の光合成できる温度帯を超える事が多い中で、田があることで周辺の作物にとっても高温障害を緩和する可能性を秘めています。





田に水を張ることにより、田の底は酸素が少ない嫌気環境になります。

嫌気環境では土壌の微生物等による有機物の消費が減るので、消費されなかった有機物が蓄積します。


蓄積する有機物は光合成産物が大半で、光合成産物は二酸化炭素を固定したものになりますので、田の底に二酸化炭素を固定することに繋がります。

田に二酸化炭素を固定することに関して、カリ肥料を控えることで蓄積量が向上するという研究報告があります。

炭素化合物の蓄積が増えれば増える程、土壌環境が良くなり生産性が高まりますので、畑地や水田に二酸化炭素を埋没させる事は主流になっていく可能性があります。

(研究成果) カリウムの施肥量を抑えた水稲の栽培方法により土壌中に難分解性炭素が蓄積することを発見 | プレスリリース・広報




昨今の気候変動から中干しという工程の必要性に付いて考えるようになりました。



中干しというのは、7月下旬からお盆前あたりまで、土を乾かす為に田から水を抜くという技術で、土表面にヒビが生えることにより、イネの根に酸素を供給して発根を促進しつつ、肥料の効きを抑えて無効分げつの発生を抑え、肥料の無駄効きを減らすことを目的として言われています。


畑作の方で様々な畑を見ていて、稲作の中干しには深刻な問題が潜んでいるのではと考えています。

畑作では雨が降らず乾燥の日が続いた時に土表面にヒビが生えるような畑の土はダメな状態だとされています。

ヒビが生えるというのは有機物量が少なく、作物の根に多大なストレスを与え、収量に悪影響を与えます。


土表面のヒビ割れは畑作はダメで、稲作では推奨される事に違和感を感じました。


もう一つ重要な事として、イネは植物学では抽水植物と呼ばれる水草に分類されています。

水草であるので、


ROL バリア:湿生植物の過湿状態の土壌への適応を支えるしくみ - 根の研究(Root Research)25 (3):47-62 (2016)


根の先端に酸素を運搬?する仕組みがあります。

根の先端に酸素を送ることができるのに、わざわざ劣悪な状態のヒビ割れ状態から酸素を送る必要があるのだろうか?


そこで、中干しをしないことで調子が悪くなった株を見てみると、



根がガスにやられたような症状になり、根量が減っていました。

中干しによる発根促進というのは、実際には水を張ることによって嫌気環境になったことで発生したガス(硫化水素等)に当たって根が消滅しないようにガス交換をするという解釈が適切です。

図説:中干しの効果 | NARO 農研機構 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構

梅雨時期の大雨対策


年々猛暑日が増える中で、慣習で行う中干しの期間でも猛暑日が訪れるようになり、高温障害の回避のための中干しをしない栽培体系の開発が急務になるはずです。

土の物理性を向上させることに常にガスが発生しない、もしくはガスが常に抜ける状態にすることで中干しは不要になるという仮説を立て、物理性の向上に取り組むことにしました。


余談ですが、農文協から出版された世界の土・日本の土は今 地球環境・異常気象・食料問題を土からみると(日本土壌肥料学会 編)という本で、中干しという管理技術は歴史が浅く、中干しという急激な水環境の変化について、どのような影響があるかわかっていないと記載されています。


中干しはおそらくガスが発生しやすい硫酸塩系の無機肥料の使用に合わせて開発された技術で、それ以前では中干しはしていなかったとされているので、歴史的に見ても、中干しをしない方が安定して稲作を継続できる可能性は高いです。




物理性の改善で行った事に関しては長くなりますので、またの機会にしますが、3年程から物理性の向上に取り組んだ方の田で興味深い事が紹介します。



一発肥料の施肥量を例年の2割減(追肥無し)で稲作を開始しても、例年通りの生育になりました。

毎年見られた興味深い事の一つに初期生育時の地上部の伸長が緩やかで、各々の茎が固く葉が大きく垂れる事なく、高温時の葉の色落ちも緩やかになりました。


畑作の話題になりますが、


ことねぎ会様で施肥と巡回で意識していることの話をさせて頂きましたより


普段話している事の一つに初期生育の伸長は緩やかな方が良いということがありまして、土壌の物理性を改善した後の栽培で初期生育で地上部の成長が遅い(と見える)場合、発根が優勢になっていて、後の栽培で吸水量と蒸散量が増し高温障害が受けにくくなる可能性があります。


他の大きな変化として、



物理性の改善後に中干しを抜くことで7月末から収穫直前の期間でオタマジャクシの個体数が増えました。

オタマジャクシはお盆期間を経て、晩夏あたりでカエルになる個体が多数います。

中干しを無しにしたことで上記のカエルのオタマジャクシの居場所ができたのでしょう。


オタマジャクシは発芽したての草の芽生えから、底にある有機物等の様々なものを食べ、田の雑草防除として役立ちます。

※観測している田では中干し時期以降に除草作業は発生せず、除草剤も不使用でした。


カエルになってからは、カメムシやウンカといった稲作の厄介な昆虫を食べるので、



周辺の田がウンカ由来のツボ枯れで苦戦している中、殺虫剤を使用せず収穫までツボ枯れを起こさず乗り切ることができました。

※カメムシやウンカは殺虫剤に耐性を持っていることが多く、カエル等の天敵は殺虫剤使用で悪影響を受けることが多いので、これからの稲作は殺虫剤に頼らない栽培体系にシフトした方が良いです。

害虫に殺虫剤抵抗性を持たせる共生細菌を発見 -殺虫剤抵抗性は害虫自身の遺伝子で決まるという常識を覆す- (共同プレスリリース 2012年4月23日)- 農業環境技術研究所




稲作で土の物理性を高め、中干しをしないことで、肥料と農薬にかかる経費を削減しつつ、二酸化炭素排出量にも貢献して収量は今まで通りを維持することができます。

更には周辺の畑地で栽培している作物にも良い影響を与え、稲作には巷で言われている持続可能な技術開発の要素がふんだんに含まれています。


改めて書きますが、これから更に増えるであろうと言われている猛暑日対策として、稲作を中心に農業環境を整備していくことが急務であることは間違いないです。




余談ですが、田に水を張ると温室効果ガスとして有名なメタンガスの発生源になるので稲作は環境負荷が大きいという話題を時々見聞きします。

メタンガスは炭水化物系の有機物を嫌気環境下に置くことでメタン生成細菌によって発生しますが、田の鉄還元細菌の窒素固定と競合して、鉄還元細菌の方が優位な場合はメタンガスの発生量が減るという報告があります。

復元田では土壌酸化鉄還元との競合によりメタン発生量が低減する - 農研機構


鉄還元細菌が活発になるには硫化水素の発生を抑える必要がありますので、持続可能な稲作を目指すためには最初に土の物理性の向上に着手することは間違いないです。


追記

今年は元肥に用いる一発肥料が意図通りの肥効にならずに追肥(穂肥)をしている方を頻繁に見かけます。

観測している物理性を改善した田では減肥をしていますが今のところ、追肥をせずに例年通りの生育をしています。


補足

初期生育で発根が促進されていれば、その後の栽培で吸収が難しい微量要素の吸収が活発になり、様々な二次代謝産物(食害性昆虫や病原性の菌への耐性や周辺の草の発芽抑制)の合成が活発になります。

網干貴子 植物の防御機構に関わる二次代謝物-ストレスから身を守れ!植物体内で誘導される様々な生理活性物質- 日本農薬学会誌 44(2), 248 日本農薬学会誌 ‒249 (2019)

欠乏症診断で最初に覚えるべき内容の移行性について

投稿日:2022-05-31  

病気を含む栽培の不調の大半欠乏症に依るもので、欠乏症の診断が適切にできれば病気にかかりにくく、食害線昆虫による被害も減り農薬の使用量を減らして利益率の高い栽培を行う事ができるようになりますが、欠乏症診断はたくさん見て教科書の写真と照らし合わせて判定の経験値を積むといった丸暗記の要素が強いです。

この丸暗記的な要素を減らす為の知見を整理します。



これから不調になりそうなトマトの話題がありましたので、この株を教材として話を整理します。

この株を見てすぐに気になる点は、




下位葉の縁の萎れ部分的に葉が黄色くなりかけていることと、




先端に向かって茎が太くなっている箇所でしょうか。

後者は欠乏ではなく窒素過剰症と判断されるものなのですが不調には変わりないので挙げておきます。


ここで最も注目したいのが、

前者の下位葉の縁の萎れと部分的な黄化です。

これはおそらくカリウム欠乏と判断される症状です。

カリウムは根肥と言われ、欠乏した際の症状は、初期は縁が萎れ、徐々に黄化が見られるようになります。

※窒素過剰の時に土壌中にカリウムが十分量あったとしても、カリウム欠乏のような症状になることがあります。




欠乏症の診断を行う際に最も重要となる考え方として移行性というものがあります。

肥料の要素としては、窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)等の微量要素があり、各々の要素で株のどの部位に欠乏症が現れるかが決まっています。


移行性というのは、欠乏した際に再利用できるか?の指標で、葉を緑色にするために必要なマグネシウムを例にして、

根から吸収できるマグネシウムが不足した場合、下位葉の葉緑素を分解してマグネシウムを取り出し、新しい葉にマグネシウムを送ります。

このように下位葉から要素を取り出し上の葉に送ることを移行性と呼び、移行性の高い要素は下位葉に欠乏症が現れます。

カルシウム等の移行性が低い要素は上位葉に欠乏症の症状が現れます。

※マグネシウム欠乏の場合は葉全体が黄化しますが、葉脈の緑が残ります。


移行性ですが、有り難いことに目立った症状は窒素、リン酸、カリウムとマグネシウムのみ顕著に現れるとなっていまして、カリウムにはカリウム欠乏以外のもっと重要な情報を含んでいるので、とりあえずカリウム欠乏のみ抑えておけば解決できる事が多いです。




先程記載した肥料の要素を改めて見てみると、カリウムやマグネシウムの他に鉄、マンガンや亜鉛といった金属になっています。

これらの金属系の肥料要素は



土壌を構成する鉱物から溶脱してくるものが大半です。

栽培の教科書を開くと、カリウム欠乏は土壌中の鉱物や川からの入水時にふんだんに入っているのでカリウム欠乏が不足することはありませんと記載されている事が多いです。


なので、カリウム欠乏が発生した場合は、土の劣化で金属系の肥料分を供給する鉱物がなくなったか、根が障害を受けて養分の吸収がうまくいっていない事が考えられます。

どちらも同様の問題になりますが、根からの水と養分の吸収に問題があると、連鎖的に他の金属系の肥料成分も同時に吸収できなくなり、株の弱体化を誘発します。


微量要素の中には鉄やマンガンといった光合成の質を向上させるものや、銅や亜鉛といった免疫に関与するものがあり、カリウム欠乏から農薬の使用量が増えるのに秀品率が下がるといった問題が生じます。


上記の問題はどちらも土作りが上手くいっていない時に生じるものなので、カリウム欠乏を見かけたら、カリウムだけが不足していると捉えずに、土壌の物理性・化学性の向上に注力を注ぐようにした方が良いです。


梅雨時期の大雨対策の記事でも記載しましたが、土作りの際に家畜糞を用いるのは厳禁です。

家畜糞には根痛みの原因となるガスを発生させる成分が豊富に含まれ、根痛みの他に発根自体を抑制することもあり、土にカリウムが十分量あったとしても、根が水や養分が吸えずにカリウム欠乏のような症状になることもあります。

猛暑日対策

投稿日:2022-05-30  

例年の極端な気候変動と温暖化により夏の猛暑日が増え、栽培に大きな影響を与えています。

この猛暑日の増加に対して何らかの対策をしたいという相談を頻繁に受けるようになりましたので、内容を整理してみます。



猛暑日に対しては、作物自身の葉からの蒸散量を増やすことを意識する必要があります。



植物は根から吸収した水を葉に移行させ、葉の気孔から水を蒸散させる際に体内の熱を外に逃がすことを行います。


それであれば、発根量が多く土に常に水がある状態であれば、葉から定期的に熱を逃し、猛暑日であっても比較的に萎れずに済むことになります。

発根量を多くするためには土の排水性を高め、常に土に酸素が行き渡りつつ、ガスの発生を抑える、もしくはガスが発生してもすぐに土に外に放出されるようにしておく必要があり、常に水がある状態は保水性を高める必要があり、どちらも腐植が土に馴染むことで実現することができます。

腐植質の肥料で土作りを行うことに関しては、ひび割れしている畑ではバークの施用時に必ず地力薬師を併用してくださいをご覧ください。




続いて、光合成の質を高めることを考えます。

猛暑日の光合成で注意する点としましては、大きく分けて葉周辺の湿度と紫外線対策があります。



前者の葉周辺の湿度の話題は、光合成は気温の上昇とともに光合成速度が増しますが、30℃を超えた辺りから低下します。



定期的なスプリンクラで周辺の温度を下げつつ湿度を上げると温度による光合成速度の上限が高くなり、蒸散量も増やすことができます。



通路で緑肥を育てることで、緑肥からの葉で周辺の湿度を高める事ができ、畑全体で光合成速度を低下させないという手もあります。


後者の紫外線対策は、葉表面のツヤ(クチクラ層)の形成により、紫外線フィルタのようなものが形成されますので、定期的な微量要素剤等の葉面散布を行うことをオススメします。




最近の研究で、トマトの葉で、周辺の草の葉が損傷した際に放出される緑の香りを吸収すると、葉の蒸散量が増したという報告があります。

日本バイオスティミュラント協議会 第3回講演会「温暖化による農作物への影響とその対策」 レポート (後編) | カルチべ取材班 現場参上 | カルチベ – 農耕と園藝ONLINE


緑の香り周辺の作用機構が他の作物にもあるとし、上記の話の応用を考えると、



通路を覆っている緑肥を定期的に刈り倒すことによって、緑肥の葉から緑の香りを放出することができ、作物の葉の方の蒸散量を高める事ができます。

除草剤に使用していた費用を高性能な草刈り機に回すことで土を向上させつつ、秀品率を高めることに繋がります。


除草剤を利用せずたくさんの草の根が畑にある状態にすると、作物にとって良い菌が増える傾向にあるらしく、それらの菌によって作物が猛暑日に強くなる傾向もあります。


気候変動により栽培の難易度が年々高まりつつあります。

今一度、栽培方法の見直しを行う機会であるのかもしれません。

梅雨時期の大雨対策

投稿日:2022-05-29  

毎年発生するようになった大雨の対策の話をしてほしいという連絡を頻繁に受けるようになったため、内容を整理してみます。



連日の大雨で日射量が減る等色々と考えることはありますが、根腐れに注目して話を進めます。

根腐れの被害が少なければ、たまにある晴天や雨上がり後の光合成の際に根から適切に養分を吸収でき、光合成の質が向上するので気にするべき事が少なくなります。


根腐れが発生する原因は主に根の酸欠とガスの発生があります。

根の酸欠は畑全体が水没をして、土の中に酸素が行き渡らない時に発生し、ガスの発生は酸素がない嫌気状態で硝酸塩や硫酸塩系の即効性の肥効の肥料が還元された時に発生します。

ガスは主にアンモニアガス、亜硝酸ガスと硫化水素があり、どれも根に当たると根が焼けてしまいます。

※今回の記事では触れませんが、メタンガスもあります


根腐れを回避する手段として、「水没をさせない」や「ガスが発生する肥料は元肥として用いない」があり、これらを一つずつ丁寧に見ていきます。




水没をさせないで最初にすべき内容は土壌の物理性を向上して、排水性を高めることです。

畑作であれば地表から大体60cmあたりに形成されている耕盤層と呼ばれる硬い層を壊して、土の中で水の溜まりやすいところを少なくします。


耕盤層の破壊はサブソイラ等を用いて行います。




耕盤層を破壊すると土の水持ちが悪くなるので、次は土の物理性を改善し、排水性と保水性を高めます。



土の物理性を高めるには、枝葉が腐熟した腐植と呼ばれる植物性の有機物を投入するのが有効ですが、



腐植を速やかに土になじませるために、2:1型もしくは2:1:1型粘土鉱物を合わせて用います。

これらの土壌改良材を用いた後に根の強いイネ科の緑肥を育てると更に有効です。

緑肥を活用して、土壌の物理性の向上を早める





次は通路に降雨後に水が溜まりにくいようにします。

畑の端に明渠を掘り、畑の外側に向かって積極的に排水をできるようにします。



可能であれば明渠への排水を確保した後に通路にマルチムギといった背丈が高くならない緑肥で覆うと良いです。



根の強いイネ科の緑肥により水が下に抜ける道が増えつつ、根周辺の水持ち(保水性)が高まります。

葉からの定期的な蒸散により土壌の水分量が適量になり、根腐れの心配が軽減されます。

アザミウマの対策を考える




最後に保険として酸素供給剤を仕込むという手もありますが、あくまで保険程度に留め依存し過ぎないことをお勧めします。



酸素供給剤の仕組みは過酸化石灰を土に仕込み、水に触れることで過酸化水素と消石灰を発生させ、過酸化水素から酸素を放出する仕組みです。

少量とはいえ、土を固くする要素の石灰を用いますので、降雨後に土が固くなり、梅雨が開けた後の夏場のガスの発生率を高めます。




続いて、ガスの発生要因の軽減ですが、



最も心配なのが、家畜糞による土作りを行っていた場合です。

家畜糞にはガスを発生する硝酸塩の肥料成分がふんだんに含まれていて、有機質肥料のような肥料なのですが、堆肥と捉えて多投する方が非常に多いです。

物理性も多少は向上しますが、それ以上にガスの発生率が高まってしまうため、



畑が水没してしまった場合の悪影響は深刻です。

硝酸態窒素のような即効性の肥料は根周辺の浸透圧を高めてしまい、この圧も作物に根に対して悪影響です。

生育状況の確認と発根促進に関すること


土作りを行いたい時は枝葉が腐熟した腐植量が多い植物性の堆肥を必ず用いることにしましょう。


今回の内容を徹底した上で、はじめて酸素剤の葉面散布といった対処療法が有効になります。

対処療法としては、根の痛みを考慮して、アミノ酸や微量要素の葉面散布剤が有効です。

詳しくは下記の記事をご覧ください。

葉面散布で殺虫剤の使用回数を減らして秀品率の向上を目指す

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