京都農販日誌

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緑肥の可能性を探る

2019/04/19

栽培環境の向上の一手として緑肥の可能性を感じている。

一般的に緑肥の活用といえば、作物の栽培が終わった後に畑を休ませる一環として緑肥を活用する。


緑肥を栽培するメリットとして、



※写真は緑肥のエンバク


緑肥は強い植物が多く、栽培しにくい環境でも力強く育ってくれる為、栽培後に大量の有機物量の確保として株を土壌に鋤き込むことが出来る。

特にイネ科は根が力強く伸長するため、緑肥を鋤き込んだ後に土がフカフカになっていることが多い。



農文協から出版されている新版 緑肥を使いこなす 上手な選び方・使い方 橋爪 健著の本に

緑肥のソルゴー(ソルガムやモロコシと呼ぶこともある)を育てると、土壌の団粒構造の形成を促進するといった意味合いの内容が記載されていた。


詳細は端折るけれども、土壌をフカフカな状態にすることを目的とするならば、ソルゴーでなくても他のイネ科の緑肥でも団粒構造の形成を促進できる。

栽培中に過剰に与えてしまった養分を緑肥が吸収して、植物や土にとって有用な物質として還元でき、土壌のクリーニング的な意味合いも大きい。


緑肥のデメリットは緑肥を栽培している間に、他の作物が栽培できなくなる。

休ませるはずなのに播種等の作業が発生することもある。





京都市内では上記のような乾燥すると土壌の表面が薄くヒビ割れする畑が沢山ある。

地域柄少ない面積で一定以上の収量を確保しなければならない状況から、上の写真のような状況になっても畑を休ませずに栽培せざるを得ない状況になっている。


栽培と栽培の間に緑肥をかませば、状況は好転することはわかっているけれども、緑肥を栽培する程の畑がない。


昨年、上記のような状況の中で、ネギの連作の畑で苦肉の策で畝間で緑肥のマルチムギを育てる事で、ネギの秀品率を上げつつ、栽培中に土の状況を向上することが出来た方がいた。



関西は土が硬いところが多く、



ちょうどネギの根元にマルチムギの葉の先端が揃うような栽培になり、ネギとマルチムギが光の競合することがなく、おそらくマルチムギが土を砕き、団粒構造の形成を促進したことで、排水性を高めつつ、土に空気が入りやすい状態になったのだろう。


土に空気がしっかりと入ることで、


※この写真はイメージです。マルチムギとの混作の畑のネギではありません


発根が促進され、光合成、成長や免疫に関与する金属系の要素の吸収が活発になり、秀品率が向上する。


面白いことに全国各地で苦戦しているネギのアザミウマの被害が軽減したそうだ。


何故アザミウマの被害が減少したのだろう?と調べてみると、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(通称:農研機構)の研究報告で、作物とマルチムギとの混作で、アザミウマがマルチムギの方に寄り付き、マルチムギの群生内でマルチムギの天敵である徘徊性のクモが増え、アザミウマを捕食したそうだ。

土着天敵を活用する害虫管理の最新技術 IPMに取り込むことが可能な土着天敵利用技術



アザミウマがネギではなくマルチムギに集まっていることがわかれば、防除する時もマルチムギの方に重点的に薬剤を噴霧すれば良くなるので農薬の散布コストは軽減されるはず。




アザミウマは一般的に病原性微生物を媒介する昆虫として有名で、作物はアザミウマの食害で出来た穴から病原性の微生物が侵入して病気が発症する。

今回紹介した栽培は土作りの苦肉の策でマルチムギを栽培したが、

嬉しい副産物として病原性微生物を媒介するアザミウマの防除にも繋がった。


アザミウマが近づかない事によって微生物由来の病気の発症率も当然のことながら下がるので、栽培者にとって緑肥が救世主的な存在であることは間違いない。

もしかしたらアザミウマ以外の厄介な害虫に有効な緑肥があるかもしれないと、日々新しい緑肥について模索している。


その中で最近気になっている緑肥として、タキイ種苗から販売されているペレニアルライグラスのアフィニティがある。

芝・緑化・緑肥 | 品種検索 | ペレニアルライグラス | アフィニティ - タキイ種苗


この緑肥にはエンドファイト活性があり、エンドファイト活性がヨトウムシの食害を軽減させるのではないか?と期待している。

ただし、ゴルフ場で利用されている緑肥であるため、栽培中の土壌では有効なのだろうか?


試さなければならないことが多くて日々勉強中。

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