京都農販日誌

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尾野農園様勉強会詳細

2022/05/21

今回の記事は尾野農園様にて勉強会を開催しましたの詳細になります。


午前は座学で土壌分析の結果の見方と基肥の施肥設計の考え方について、午後は土壌分析の結果を見ながらの巡回で次作以降の施肥設計の改善の話をさせて頂きました。


はじめに当日までにこちらで行った予習について記載しておきますと、



香川県善通寺市の地質の山陽の花崗岩から

善通寺市周辺 - 20万分の1シームレス地質図v2



花崗岩由来の排水性は高いが保水性や保肥力が少ない真砂土を基礎として、この土にCEC低めの粘土鉱物が敷き詰められた固まりやすく肥料持ちしない粘土質の土であることを予想しました。

他に善通寺市の南側に位置する四国山地の影響で降水量が少なく、根で水と酸素を欲するネギにとっては不利な土地であると予想しました。

近隣にある農研機構の研究所のページを読むと、冬期は比較的暖かい地域であるらしいので、夏場の水不足の影響をどれ程小さくするか?が秀品率の決定打になります。

善通寺市 | 農研機構


先に土質の答え合わせを記載してきますと、土壌改良に注力し病気や食害の発生が少なく秀品率が最も高い土壌であっても、



土壌診断の結果でECは低めでCECがなかなか上がらないとのことで予想通りでした。




午後のほ場巡回では、良い畑と悪い畑で何の要因で差が出てきているのか?を体感して頂くために、最も良い畑数カ所と最も悪い畑数カ所を案内して頂き、土壌診断の結果を元に推測して頂きました。

どの地域でも言えることですが、大半の作物で秀品率を高める要因として、土の柔らかさがありまして、団粒構造がしっかりと形成されていてば、排水性、保水性と保肥力が高く栽培者にとって有利な環境と言えます。


降水量が少ない善通寺市にとって、保水性こそが最も注目すべき要因で、保水性の高さの指標は通路のひび割れ具合でわかります。

なので今回の巡回でも、



通路でひびが生えているか?の確認から行いました。


もう一つ良い指標として、



ほ場に植わっている株を抜き発根状況を見るということもしています。

排水性と保水性が高い土では、根に酸素が十分に行き渡りつつ、常に水がある状態なので白く綺麗な根がたくさん生えることになります。

一方、物理性が低い土壌では酸欠により根が十分に行き渡らないであったり、酸素不足により水溶性肥料のガス化で根が焼け、黄色や褐色の根が見られます。




今回の巡回で興味深い点がありまして、秀品率の高いほ場よりも低いほ場の方が土壌の物理性の向上の要因である腐植量が高かったということがありました。

実際の巡回では秀品率が高いほ場では通路にひび割れはなく、低いほ場ではひび割れが発生していました。


低いほ場の土壌診断の結果を見てみると、



良いほ場と比較して、腐植が多いのでCECは高いのですが、石灰とリン酸の量が目立っています。

石灰は粘土鉱物や腐植と結合して土を固くする要因になり得ますので、不調の要因は石灰だと辺りを付け、次作以降で石灰の使用量を減らすといった課題が見つかりました。


一般的に石灰 : 苦土 : 加里 = 5 : 2 : 1が良いとされていまして、悪いほ場の石灰苦土比が 7 になっていましたので、3 以下を目指すことにしました。

石灰値の改善でひび割れの発生を抑えつつ保水性が高まり、降水量が少ない善通寺市で栽培のコストが減り利益率の向上に繋がります。




秀品率の良いほ場と悪いほ場で見られた他の顕著な特徴としまして、悪いほ場では何処もリン酸値が高いということがありました。

この内容はことねぎ会様でリン酸過剰問題についての話をさせて頂きましたの記事でも触れている通り、リン酸の過剰は病気の発生率が高まり農薬のコストが上がります。

リン酸の高いほ場では、次作はリン酸の施肥を控える、もしくは可能であれば緑肥をして畑を休ませた方が良いということになりました。

緑肥に関しての注意点はリン酸過剰問題を緑肥で解決する時に意識することの記事で詳細を記載しています。


余談で善通寺市のような土質では腐植が定着しにくいので、粘土鉱物肥料は気持ち多めに施肥してくださいということもお伝えしています。

粘土質の畑で粘土鉱物系の肥料を使用しても良いか?

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