福岡県の宗像で施肥設計の前の土質の確認

投稿日:2019-06-13  

福岡の宗像(むなかた)という地域でこれから本格的に営農される方から、

肥料についての話と候補地の土壌を見て欲しいという連絡があり行ってきた。


候補地の土壌を見る前に既に栽培をしているところが赤土ですぐに締まるからどうすれば良いか?という話題が挙がった。


全国各地のほ場巡回の前に行っている情報収集で記載した通り、

実際の土に触れる前に確度を高める為に予想を立てることにしてみた。


赤土という言葉から二つのパターンを挙げてみる。

一つ目は古土壌と言われる赤黄色土

土を使い倒して、土壌中に酸化鉄と水酸化アルミニウムの含有量が高くなりすぎた土が多い。

※栽培の話ではなく、地質時代の視点で使い倒した土

地質時代 - Wikipedia


もう一つは安山岩質的の岩石が風化して良質な粘土鉱物になって土を形成したものだ。


出来れば後者の土壌であって欲しいと思いながら地域の土質と地質を確認してみる。

何故後者が良いのか?と言えば、赤黄色土と比較して、これからの土なので粘土鉱物に限らず、ミネラル分も豊富だろう。


先に土質から見てみると、



全体的に水田多め(青っぽい色)の土地で所々有機物多めの土(緑色)が点在している地域で、


※土質の確認は日本土壌インベントリー - 農研機構を活用


所々に懸念している赤黄色土がある。


続いて地質を確認してみる。


20万分の1日本シームレス地質図 - 国立研究開発法人産業技術総合研究所を活用


地域に点在する山の地質が中心は粘性の高い花崗岩(ピンク)が多めだけれども、

花崗岩を囲うように安山岩質的な火山岩(矢印で示した二番目に濃い緑)で構成されている。


土質と重ね合わせると、

安山岩質的な火山岩の周辺に赤黄色土のエリアは少ない


冒頭で話題に挙がった赤土で締まりやすい土の土質は二つの候補の後者の良質な粘土鉱物で形成された土の可能性が高くなった。


これらの予想を踏まえて実際の畑に行ってみた。






赤土の個所は濃い青のグライ土だ。

山から流れてきた目の細かい粘土が堆積した(または客土した)土になる。

上流にある山は安山岩質的な火山岩から花崗岩になっている。


これらの情報を頭に入れながら実際の土と対面する。



話題に挙がった通り締まりやすい土ではありそうだけれども、

扱い方次第で肥料持ちが良くなりそうな土だった。


注意深く基肥を設計すれば大化けしそうな予感すら感じられた。


宗像という地域で新たなパターンの知見を得ることができた。



読み物

土作りの視察に行くなら赤黄色土の地域へ - saitodev.co

粘土鉱物を理解する旅3 - saitodev.co

台風でも倒伏しないイネ - saitodev.co

生育状況の確認と発根促進に関すること

投稿日:2019-06-07  


作物が順調に育っているか?

これから収穫まで苦戦しないか?という指標として、



可能であれば一本引かせていただいて、

作物の発根状態を確認している。


土作りの指標の一つとして、



発根、特に側根(単子葉であれば不定根)の発根量と根の色を見ている。

発根量が多ければ本当に栽培に良いのか?の証拠はないけれども、

一般的に発根量が多く根が綺麗な白であれば秀品率が高くなるという感覚はあるはず。


現に全体的に発根量が増えた畑では、

他の畑と比較して、虫による食害や病気の被害が格段に減り、

被害の減少からの防除回数も下がる。


発根量が増えることによって、光合成や耐性に関わる微量要素の吸収が向上し、結果として秀品率が向上するはずだ。


旬でも無い時期に地域平均の1/10の使用量に減った事例もある。


というわけで、

昨年よりも発根量が増えた ≒ 土壌環境が良い方向に向かっている

ということを判断材料としている。


目標を絞れば、何をやるべきか?を決めやすくなるわけで

今回は発根量が増えることについて知っていることをまとめてみる。





発根が促進される要因として最初に思いつくのが、

土作りの要素である物理性と化学性が改善された土壌だろう。


排水性を持ちつつ、保水性を持てるようになったことで、

作物は欲しい時期に水を根から吸収出来る状態でありながら、

土の中にはふんだんな酸素があるため酸欠にならない。


このような土で作物は、

根腐れせず、より深く根を伸ばすことが出来るようになる。




ここで一つ高校理科の話題に触れてみよう。

側根のといえば植物ホルモンのオーキシンが頭に浮かぶ。

オーキシンといえば、脇芽の発生を抑制して、側根の発生を促進することで有名である。


このオーキシンに関していくつかの小話を紹介する。



有機栽培で時々話題に挙がる米ぬかボカシ肥料というものがある。

米ぬかを酸素に触れさせない嫌気発酵をすることで、

甘い香りを放つように熟成させた肥料で、

熟成には乳酸菌が関与していると言われる。


この米ぬかボカシが作物の発根を促進するという報告がある。

乳酸菌が合成するフェニル乳酸が植物の発根を促進する。

眞木祐子 ぼかし肥料の発根促進作用における乳酸菌の働きについて - 雪印種苗株式会社


フェニル乳酸が植物ホルモンのオーキシンの合成に関与しているとか。

この時、微量要素の亜鉛も重要な役割を果たす。

根伸長促進物質 L-β-フェニル乳酸が水稲幼植物の生育に及ぼす影響 新大農研報,62(2):97-103,2010


ちなみにオーキシンはトリプトファンというアミノ酸を元に合成される。




オーキシンに関してもう一つ興味深い話がある。


図:植物の生育促進への利用に資する,枯草菌の転写応答機構の研究 30ページより引用


それは共生細菌である枯草菌(B. subtilis)が、

植物から栄養をもらう代わりに細菌は植物にオーキシンを渡す

という共生関係がある。

※みすず書房 これからの微生物学 マイクロバイオータからCRISPERへ 98ページより抜粋


上記のように植物と共生関係を結び、植物の生育が促進する細菌を植物生育促進根圏細菌(PGPR)と呼ぶ。



枯草菌は刈草から発見された細菌であるので、

植物性の有機物がふんだんにある土壌では発根が促進される可能性がありそうだ。




発根促進の作用のある肥料として酵母エキス入りの肥料の話題が度々挙がる。

概要は下記のプレスリリースを読んでいただくとして、

ビール酵母細胞壁が植物の成長や免疫力を向上させるメカニズムを解明 | ニュースリリース | アサヒグループホールディングス


植物は根で酵母の細胞壁の断片であるβ-グルカンを吸収することをきっかけとして発根の発生が促進されたらしい。

これまたオーキシンの合成量が増えたことによって発根が促進されたらしい。


更にβ-グルカンを調べてみたところ、

酵母に限らず糸状菌の細胞壁でもβ-グルカンが利用されているので、


クレジット:photolibrary


大型の糸状菌であるキノコや、

キノコ栽培の廃培地にも同様の発根促進効果があるのでは?と期待している。




前に酸素供給剤を試した方から酸素供給剤を基肥に仕込んだ方が明らかに生育したという連絡があった。

先に酸素供給剤について触れておくと、


酸素供給剤は過酸化石灰のことで、

水に触れると、pHを上げつつ酸素を放出してくれるので、

水に浸かりやすい畑で重宝する肥料を指す。


話は戻って生育の差があったと報告をくださった方の写真を見ると、



手前(写真左)が酸素供給剤を仕込んだ畝で、

奥(写真右)が仕込んでいない畝となる。


生育確認の為に抜いてみると、



酸素供給剤を仕込んだ畝の方が発根量が多く、

根の色も白かった。


今回の報告は実験室のような精密な環境での試験ではないので、

酸素供給剤による生育促進は経験則として捉えておくことにする。




今までは発根の促進について見てきたけれども、

これからは発根を抑制する要因について見ていく。


抑制する要因を栽培環境から除けば、

発根量はより多くなるので抑制の要因を把握しておくことは大事。


はじめにオーキシンの合成を抑制する要因を探してみると、

講談社から出版された新しい植物ホルモンの科学 第3版のサイトカイニンの章に

植物は根の周辺に栄養塩、特に窒素系の塩が多いと、発根が抑制されるという報告が記載されていた。


聞き慣れない言葉が並んだけれども、



要は熟成された家畜糞堆肥でよく聞く硝酸態窒素というもの根の周辺にあると発根が抑制される

ということを意味している。


特に牛糞堆肥は土作りにとって良いという話が流れている為、

反あたり1トンと多めに入れてしまう傾向があるけれども、

それが発根促進と秀品率の向上の視点で見ると逆効果となる。




発根を抑制するもう一つの要因として、

土壌中で活性アルミナが発生することにより根の伸長が停止する

ということがある。


土壌中にはアルミニウムを含む鉱物というものがあり、

その鉱物をかなり詳細に見ると、

こんな感じのイラストで書かれることがある。


この鉱物に対して、



トラクタによる耕起や栽培中に使用する酸性度の高い肥料(即効性のある肥料)を使用し、

次作で腐植質等の肥料で土作りをせずに栽培を続けると、

同型置換という現象によりアルミニウムが土壌中に放出される。

この放出されたアルミニウムを農学では活性アルミナと呼ぶらしく、

活性アルミナを植物の根が触れるとアルミニウムの毒性により根の伸長が停止する。

松本英明 酸性土壌とアルミニウムストレス Root Research 12(4) :149-162(2003)


ここで再び熟成した家畜糞堆肥を見直すと、

家畜糞堆肥でよく見聞きする硝酸態窒素は酸性度の高い肥料として扱われる為、

活性アルミナの発生を促進する可能性がある。

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所/大地の五億年 せめぎあう土と生き物たちを参考にして予想した


活性アルミナが栽培に影響を与える程発生した土壌の指標として、



畑の真ん中あたりでスギナが旺盛に成長しているところでは、

作物の根の成長は抑制されることが予想される。


以上で現時点でわかっている範囲の発根の促進と抑制に関することをまとめてみた。




最後に発根の促進に関して肥料で何が出来るか?を整理すると、

腐植質の肥料を活用する前に腐植について整理しようの内容に従って、腐植質の肥料を土壌に定着させ、土壌の排水性を高めつつ、保水性を高め、発根のストレスを軽減するような環境にする。


発根しやすい環境を用意できたら、

アミノ酸肥料で発根に重要なオーキシンの合成の材料を作物に与える。

※オーキシンの元のトリプトファンの合成にグルタミンが必要

アミノサンプロ - 京都農販ショップ


糸状菌や乳酸菌のくだりは

糸状菌であるキノコの培地由来のマッシュORGを信じるということで良いだろう。

マッシュORG - 京都農販ショップ


発根に関与する各種微量要素は

粘土鉱物を毎作の栽培前に仕込むことによって改善する。

地力薬師 - 京都農販ショップ



他に長期間土壌に留まってくれる酸素供給剤であるネオカルオキソも候補に入れておきたい。

ネオカルオキソ - 京都農販ショップ


栽培中の土壌中の微生物に関しては、微生物は難解なので、下記の記事の紹介までに留めておく。

土壌の微生物にとっての餌とは何だろう?


時々緑肥を育てて、栽培環境のメンテナンスも忘れずに

緑肥の可能性を探る


読み物

植物の根と枯草菌のバイオフィルム - saitodev.co

土壌のpHを上げたい時は

投稿日:2019-05-17  

九州の福岡県糸島市で普段見たことないような土壌分析の結果の畑に行きました。




海岸から近く、

砂壌土の夏場の水やりが大変そうな土でした。


作付け前の土壌分析の結果を確認してみると、



何故か苦土が多い土壌ではあるが、

砂質土特有のCECとECが低くなっていました。


ここで栽培されている方から基肥はどうすれば良いですか?と質問がありましたので、

その時に返答した内容をまとめることにします。




最初に注目すべき個所は、



pHが低いことです。

pHといえば肥料の効きの指標で、

pHが低い環境であると作物は石灰、苦土やカリの吸収効率が落ちます。


一方、pHが高いと鉄等の微量要素の吸収効率が落ち、

pHは低くても高くても問題となる要素です。

pHと養分の吸収性 - お役立ち農業辞書 - 株式会社京都農販


営農指導員はこの結果を見ると

pHが低いので石灰(消石灰、有機石灰や苦土石灰)を入れてpH調整をしましょう

と提案されるはずですが、



石灰が理想的な数値であることを注意する必要があります。


石灰(カルシウム)は作物を丈夫にしたりと重要な要素ではありますが、

土壌中に石灰が過剰にあると苦土やカリウムの吸収を阻害します。

石灰(カルシウム)について - お役立ち農業辞書 - 株式会社京都農販


石灰は配合肥料や堆肥に含まれている成分でもあって、

ついつい過剰になってしまう要素でもあります。



堆肥の王様と言われる廃菌床堆肥(商品名:マッシュORG)や、



長雨等で重宝する酸素供給剤(商品名:ネオカルオキソ等)にも石灰は含まれています。

土壌の微生物にとっての餌とは何だろう?

酸素剤


知らない内に土壌の石灰量が高まっていくということを避ける為に

pHが低いからといって安直に石灰でpHの調整を行うことはやめましょう


石灰でpH調整が出来ないのであれば、

どうやって栽培開始前にpHを調整すれば良いのだ?

と疑問に思うはずです。


そんな時には



pH調整を行うことが出来る苦土肥料のロングマグを勧めていますが、

もう一度土壌分析の結果を確認してみると、



苦土が理想的な量よりも多くなっています。

苦土も石灰と同様で過剰症になると石灰やカリの吸収を阻害します。


今回の土壌ではpHの調整に石灰と苦土のどちらを提案してもNGになるみたいです。




それでは今回の畑では栽培開始前にpHの調整は行えないのか?

と落胆しそうになりますが、


土壌中に腐植が定着すると、

土壌のpHが常に理想的な数値になる緩衝性を得ることが可能です。


腐植について下記の記事を読んで頂くとして、

腐植質の肥料を活用する前に腐植について整理しよう - 京都農販日誌


今回の畑では腐植を活用する時にも一つ問題が発生します。



この畑は砂質で、

腐植質の肥料を施用しても土壌に上手く定着せずに流れてしまう可能性があることです。


現在の腐植の蓄積のモデルでは、

土壌中の粘土鉱物に腐植が結合すると考えられています。


腐植が定着しなければ土壌のpHは理想値で安定しません。

この畑の土ではずっと肥料効率が低いことを許容して栽培をしなければならないのか?


そう落胆する必要はなく、



腐植質の肥料を施用する際に粘土鉱物質の肥料も合わせて施用すれば、

自ずと土壌のpHは安定化(土作りの化学性の向上)します。


面白い事に

粘土鉱物質の肥料には土壌のCEC(保肥力)を高めたり、

カリや微量要素の補充という役割があり、


粘土鉱物と結合した腐植には、

土壌分析のECが理想的になるという作用もあります。


土壌分析の結果から施肥設計を検討するときは、

不足しているところを足すという考え方ではなく、

尖った項目を生み出さないという発想の方が良い成果になるはずです。


読み物

苦土が多い不思議な砂質土 - saitodev.co

緑肥の可能性を探る

投稿日:2019-04-19  

栽培環境の向上の一手として緑肥の可能性を感じている。

一般的に緑肥の活用といえば、作物の栽培が終わった後に畑を休ませる一環として緑肥を活用する。


緑肥を栽培するメリットとして、



※写真は緑肥のエンバク


緑肥は強い植物が多く、栽培しにくい環境でも力強く育ってくれる為、

栽培後に大量の有機物量の確保として株を土壌に鋤き込むことが出来る。


特にイネ科は根が力強く伸長するため、

緑肥を鋤き込んだ後に土がフカフカになっていることが多い。



農文協から出版されている新版 緑肥を使いこなす 上手な選び方・使い方 橋爪 健著の本に

緑肥のソルゴー(ソルガムやモロコシと呼ぶこともある)を育てると、土壌の団粒構造の形成を促進するといった意味合いの内容が記載されていた。


詳細は端折るけれども、

土壌をフカフカな状態にすることを目的とするならば、

ソルゴーでなくても他のイネ科の緑肥でも団粒構造の形成を促進できる。


栽培中に過剰に与えてしまった養分を緑肥が吸収して、

植物や土にとって有用な物質として還元でき、

土壌のクリーニング的な意味合いも大きい。


緑肥のデメリットは緑肥を栽培している間に、他の作物が栽培できなくなる。

休ませるはずなのに播種等の作業が発生することもある。





京都市内では上記のような乾燥すると土壌の表面が薄くヒビ割れする畑が沢山ある。

地域柄少ない面積で一定以上の収量を確保しなければならない状況から、

上の写真のような状況になっても畑を休ませずに栽培せざるを得ない状況になっている。


栽培と栽培の間に緑肥をかませば、

状況は好転することはわかっているけれども、

緑肥を栽培する程の畑がない。


昨年、上記のような状況の中で、



ネギの連作の畑で苦肉の策で畝間で緑肥のマルチムギを育てる事で、

ネギの秀品率を上げつつ、栽培中に土の状況を向上することが出来た方がいた。



関西は土が硬いところが多く、



ちょうどネギの根元にマルチムギの葉の先端が揃うような栽培になり、

ネギとマルチムギが光の競合することがなく、

おそらくマルチムギが土を砕き、団粒構造の形成を促進したことで、

排水性を高めつつ、土に空気が入りやすい状態になったのだろう。


土に空気がしっかりと入ることで、


※この写真はイメージです。マルチムギとの混作の畑のネギではありません


発根が促進され、光合成、成長や免疫に関与する金属系の要素の吸収が活発になり、秀品率が向上する。


面白いことに全国各地で苦戦しているネギのアザミウマの被害が軽減したそうだ。


何故アザミウマの被害が減少したのだろう?と調べてみると、

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(通称:農研機構)の研究報告で、

作物とマルチムギとの混作で、アザミウマがマルチムギの方に寄り付き、

マルチムギの群生内でマルチムギの天敵である徘徊性のクモが増え、アザミウマを捕食したそうだ。

土着天敵を活用する害虫管理の最新技術 IPMに取り込むことが可能な土着天敵利用技術



アザミウマがネギではなくマルチムギに集まっていることがわかれば、

防除する時もマルチムギの方に重点的に薬剤を噴霧すれば良くなるので農薬の散布コストは軽減されるはず。




アザミウマは一般的に病原性微生物を媒介する昆虫として有名で、

作物はアザミウマの食害で出来た穴から病原性の微生物が侵入して病気が発症する。


今回紹介した栽培は土作りの苦肉の策でマルチムギを栽培したが、

嬉しい副産物として病原性微生物を媒介するアザミウマの防除にも繋がった。


アザミウマが近づかない事によって

微生物由来の病気の発症率も当然のことながら下がるので、

栽培者にとって緑肥が救世主的な存在であることは間違いない。


もしかしたらアザミウマ以外の厄介な害虫に有効な緑肥があるかもしれないと、

日々新しい緑肥について模索している。


その中で最近気になっている緑肥として、

タキイ種苗から販売されているペレニアルライグラスのアフィニティがある。

芝・緑化・緑肥 | 品種検索 | ペレニアルライグラス | アフィニティ - タキイ種苗


この緑肥にはエンドファイト活性があり、

エンドファイト活性がヨトウムシの食害を軽減させるのではないか?と期待している。


ただし、ゴルフ場で利用されている緑肥であるため、

栽培中の土壌では有効なのだろうか?


試さなければならないことが多くて日々勉強中。


読み物

グラスエンドファイトと天敵でヨトウの被害を減らせるか? - saitodev.co

イネ科緑肥の再考のアレロパシー編 - saitodev.co

発根に関することをまとめてみると - saitodev.co

全国各地のほ場巡回の前に行っている情報収集

投稿日:2019-04-13  



ご縁から全国各地の畑に行く機会が増えてきて、

現地に行く前にインターネットで出来る限り多くの情報を得ることが出来ないか?

とここ数年模索していた。


その中でこれは確度が高いかもしれないというものを今回の記事で紹介する。




国立研究開発法人産業技術総合研究所のサイトが運営している



20万分の1日本シームレス地質図というWebサービスがあって、



例えば、畑で利用している水の水源である山にフォーカスしてみると、


https://gbank.gsj.jp/seamless/seamless2015/2d/index.html?center=33.2629,133.0820&z=12


このように地質が何であるかを把握することが出来る。

この情報に合わせて、


(株式会社誠文堂新光社 日本の石ころ標本箱 201ページの図を参考にして作成)


詳細は割愛するが、

火成岩の分類の表を合わせると面白いことが見えてくる。


一例を挙げると、



京都北部の舞鶴という地域の地質が特徴的で、


https://gbank.gsj.jp/seamless/seamless2015/2d/index.html?center=35.5523,135.3976&z=12


超塩基性の蛇紋岩で有名な地域で、

周辺には塩基性の斑糲岩で構成されている。


火成岩の分類の表から舞鶴市の大半の畑ではカリが不足しやすいと予想され、

実際に訪れ地域の方の施肥に対する意識を確認してみると、

他地域と比較してカリ肥料を非常に多く入れている傾向があった。


他にも興味深いことは沢山あったが今回の記事では割愛する。




今回紹介した内容はまだまだ確信がないものになるので、

新たなご縁で新しい地域に行く度にこの地図から得られる情報の精度を高めていく。


地質図から得られる情報からの解釈の精度が高まれば、

栽培を難しくしている天候が読めないであったり、土の中で施肥した肥料成分がどのように作用しているかであったりといった難解な要素の一つを削減出来るだろうと期待している。


追記

地質が周辺の水質に最も影響を与え、それを簡単に可視化出来るであろうものに温泉名水があるので、



数年前から温泉巡りと名水散策を始めた。


写真の箇所は岐阜県の飛騨小坂の巌立峡ひめしゃがの湯の腐植酸鉄(Ⅱ)多めの鉱泉

巌立峡 ひめしゃがの湯 ~天然炭酸泉の日帰り温泉~


読み物

高アルカリ性の温泉から土を考える - saitodev.co

あの山に海底火山の跡はあるか? - saitodev.co


関連記事

腐植質の肥料を活用する前に腐植について整理しよう

土壌の微生物にとっての餌とは何だろう?

投稿日:2019-04-08  

秀品率向上の為に土壌の微生物を豊かにしよう。

このようなフレーズを良く見聞きし、土壌の微生物環境を良くする微生物資材というものが沢山ある。


その中で良く挙がるのが、

微生物の餌を与えて土壌で有用な微生物を増やそう

という肥料をよく見かける。


微生物を増やすこと目指す事は良いと思うのですが、

闇雲に土壌の微生物の為の資材を使うと、

微生物という目に見えないものなので費用対効果の判断が困難で知らない内に経費の無駄遣いということになりかねない。


そこで微生物資材を活用する前の参考になるように土壌の微生物についてまとめることにしよう。




はじめに栽培者が有用な微生物群に求めるものこととして、

・土がフカフカになること

・作物の栄養として与えた肥料がより効率的に効いてくれること

・作物が病気にかかりにくくなること

の三点ではないかと考えている。





土がフカフカになるということは、

バーク堆肥等で土の排水性や保水性が向上することを指しているので、

前回の腐植質の肥料を活用する前に腐植について整理しようで触れた



難分解性有機物である木材(リグニン質)の有機物が土壌の微生物によって分解されながら土壌粒子として混ざりあえば良いことになる。


リグニンが分解される過程で関与する微生物をイメージしやすくする為には、



キノコの栽培のノウハウが良い教科書となる。


キノコが後に腐植となるリグニンを分解する際、炭水化物からエネルギーを取り出して、そのエネルギーを元にリグニンを腐植酸へと代謝して土壌に蓄積させているだろうと考えられている。

西村裕志 木に学ぶ、きのこに学ぶサイエンス



キノコの菌床栽培のノウハウを見ると、

主栄養源はコメ糠ムギ糠(フスマ)トウモロコシ糠小麦粉など

補助栄養源は貝殻カルシウム塩木酢液ビール酵母粕等、pH調整や成長促進剤など

で構成されていることから、

菌床栽培 - Wikipedia


土をフカフカにする為の微生物の餌として考えると、

穀物由来の炭水化物あたりになるだろうということが分かった。


リグニンは非常に壊れにくい有機物であるので、

分解には強力な作用を引き起こす事ができる銅のような各種微量要素が必要になるため、

糸状菌等の餌として亜鉛ミネラルを忘れてはならない。


更にもう一点注意があって、

キノコは周辺に窒素分が多いとリグニンの分解が弱まってしまうので、

木質資材主体の堆肥作りで窒素分の補給として家畜糞を入れる慣習はNGとなる。




続いて、

肥料分が効率的に効いてくれたり、病気にかかりにくくなる為に微生物を増やす話題に移ると、

どちらも良く挙がる微生物として細菌のバチルス属(枯草菌)やラクトバチルス属(乳酸菌)、

糸状菌でいえば菌根菌あたりがいる。

※菌根菌は難解なのでここでは触れないことにする。



植物の根が枯草菌の仲間と共生すると微量要素の吸収促進や土壌の病原性細菌による病気の感染を抑制するという報告がある。

広岡和丈 植物の生育促進への利用に資する,枯草菌の転写応答機構の研究


土壌で活性があるか不明だが、乳酸菌には周辺の細菌の増殖を抑えるという報告がある。

乳酸菌バクテリオシン -探索から応用まで- 一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会 はっ酵乳、乳酸菌飲料公正取引協議会


植物の根と枯草菌の共生で頻繁に見聞きするのが、

植物の根からアミノ酸等の栄養が枯草菌に渡され、

枯草菌は微量要素を植物の根に渡す

という内容だろう。


乳酸菌は糖を分解するということで有名であるので、

これらの細菌にとっての餌を考えると、

炭水化物(糖が直鎖状に繋がったもの)やタンパク質(アミノ酸が直鎖状に繋がったもの)

ということになる。


コウジカビ等に炭水化物やタンパクを分解して、糖やアミノ酸になってからはじめて細菌が利用するかもしれないけれども、

ここらへんの話は土をフカフカするの話と重複するので直鎖状のものでも細菌は利用できるとする。




今までの話で栽培者が土壌の微生物を豊かにする為に効果のある肥料というものがわかってきた。




土をフカフカにする糸状菌には米ぬかや魚粉等の食品残渣系の有機質肥料がある。


ここで微生物の餌という観点でオススメできる肥料を紹介すると、



サトウキビの搾り粕を酵母等によってアミノ酸に分解された黒糖肥料というものがあり、

アミノ酸以外に糖や微量要素を含んでいて、

土壌の微生物を活発にする起爆剤として活用できます。


土をフカフカにするところで触れた通り、

土壌の微生物にとっても微量要素というものが重要になってくるので、

事前に微量要素をふんだんに含む地力薬師を仕込んでおくことをオススメします。


最後に今回の話で一点程注意を記載しておくと、

土壌微生物に限らず、どの生物にも言えることで、

環境に一番合った生物が活発に増殖するということがあり、


栽培での有用菌に不利な環境であれば、

微生物の餌として与えた肥料も逆効果になってしまう。


特に病原性の細菌は排水性の悪いところで活発に動く傾向があるらしいので、

微生物の餌に頼る前に土壌の物理性を意識しておく必要がある。


土壌の物理性は下記の記事を参考に土壌に腐植を蓄積させることを最優先にする。

腐植質の肥料を活用する前に腐植について整理しよう


読み物

白色腐朽菌とトリコデルマの戦い - saitodev.co

植物の根と枯草菌のバイオフィルム - saitodev.co

イネ科緑肥の再考のアレロパシー編 - saitodev.co

腐植質の肥料を活用する前に腐植について整理しよう

投稿日:2019-04-03  

昨日、肥料関係の方と話をしていて、

腐植を与えたら土壌中の微生物の餌になり得るのだろうか?

という話題になった。


肥料を扱う者にとって腐植は難解なものであるが、

秀品率の向上の為の超重要な要素であるため、

この機会に腐植についてわかっていることをまとめてみることにする。



腐植を可能な限り正しく把握して使いこなすことで、

確実に秀品率が上がりつつ、諸々の栽培コストは削減される。


はじめに腐植について記載されている箇所から抜粋してみることにしよう。

腐植の説明をWikipediaから抜粋してみると、

/***************************************************/

腐植とは、土壌微生物の活動により動植物遺体が分解・変質した物質の総称である。広義には単に土壌有機物としてのそれを指し、狭義には腐植化作用と呼ばれる分解・重合を繰り返し経て生成された、暗褐色でコロイド状の無定形高分子化合物群(腐植物質)を指す。

/***************************************************/

と記載されている。

腐植土#腐植 - Wikipedia


物事を正確に捉える為には狭義の腐植の方を重点的に見ると良いので、

広義の方の土壌有機物を狭義に分解してみると、

非腐植物質(糖、タンパク質や脂肪等)

腐植物質(フミン酸やフルボ酸でこちらが狭義の意味での腐植)

に分かれる。


非腐植物質は一昔前の用語で言うところの栄養腐植に当たり、

腐植物質が貯蔵腐植に当たるはずだ。


最近、腐植系の肥料の成分表で長鎖炭素化合物という記述を見かける。

長鎖炭素化合物は分子量が10000以上、炭素数にして700以上のものを指すので、

糖が直鎖に繋がったデンプンや植物繊維、アミノ酸が直鎖に繋がったタンパク質あたりが長鎖炭素化合物にあたり、

これもまた非腐植物質に当たるはず。


糖の大半はカロリーの貯蔵物質で、タンパク質は主に体の材料になるので、

非腐植物質は土壌の微生物の餌になると捉えて良いだろう。




これから本題の狭義の意味での腐植について見ていく。

フミン酸やフルボ酸の違いについてはここでは触れず、腐植物質と言えばフミン酸ということで話を進める。


図:藤嶽暢英 土・水環境に遍在するフミン物質の構造化学的特徴とその多様性 学術の動向 2016.2 51ページより抜粋


上記の図は土壌フミン酸の平均化学構造モデルなのであくまで推定ということで、

フミン酸を含む腐植酸自体が未知なことが多いという前提の元、

再びWikipediaからフミン酸の説明を抜粋してみると、

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フミン酸とは、植物などが微生物による分解を経て形成された最終生成物であるフミン質(腐植物質)のうち、酸性の無定形高分子有機物。狭義では、腐植土や土壌などにおいてアルカリに可溶で、酸で沈殿する赤褐色ないし黒褐色を呈する、糖や炭水化物、タンパク質、脂質などに分類されない有機物画分のことを指す。腐植酸とも言う。

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フミン酸 - Wikipedia


フミン酸を含む腐植酸は土壌の微生物によって非常に分解されにくく、地下水等を経て湖の底に堆積しやすい。

そのため湖の底から回収した泥炭系の肥料には高濃度の腐植が含まれているという謳い文句のものが多い。


上記のフミン酸の説明文の中に糖、タンパク質や脂質に分類されない有機物画分のことを指すことになっているので、

腐植物質が土壌の微生物の餌になるのでは?という当初の話題は、

腐植は土壌中の微生物の餌にはならないと返答することができる。




フミン酸の構造を眺めてみると、



化学でよく見かけるベンゼンという芳香族炭素化合物が大量に結合している構造になっている。

ベンゼン - Wikipedia


話を進める前にベンゼンを理解するための化学式の記述ルールを見ておくと、


By Jynto - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link


本来であればベンゼンは上記のようにC6H6の炭素化合物になるが、

C(炭素)とH(水素)は省略して良いことになっているので、

六角形の中に線が三本の形式で表現することができる。


ベンゼンの構造は安定で、安定が故に壊れにくい(≒分解しにくい)。

有機物の中でベンゼンを多く含む有機物を思い出してみると、



木の幹の主成分である

By real name: Karol Głąbpl.wiki: Karol007commons: Karol007e-mail: kamikaze007 (at) tlen.pl - own work from: Glazer, A. W., and Nikaido, H. (1995). Microbial Biotechnology: fundamentals of applied microbiology. San Francisco: W. H. Freeman, p. 340. ISBN 0-71672608-4このW3C-unspecified ベクター画像Inkscapeで作成されました., CC 表示-継承 3.0, Link


リグニンというベンゼンを含むフェニルプロパノイドが不規則?に結合したものか、

※六角形の中に丸の形もベンゼンを表す

※リグニンは茎葉にも蓄積する

リグニン - Wikipedia



ワインの赤い色で一躍有名になったポリフェノールがある。

※他に下記のタンニンも

ポリフェノール - Wikipedia




リグニンの方に注目して、



リグニンは木材腐朽菌と呼ばれる糸状菌によって分解され、

ベンゼンを含むフェニルプロパノイドという小さな断片へと変わっていく。

※シイタケ等のキノコが木材腐朽菌に含まれる

木材腐朽菌 - Wikipedia

フェニルプロパノイド - Wikipedia


断片化したフェニルプロパノイドをコウジカビ(アスペルギルス属)の仲間が吸着・代謝してより大きな化合物へと変えていくという報告がある。

KAKEN — 研究課題をさがす | 土壌腐植の恒常性を支える微生物の代謝と生態 (KAKENHI-PROJECT-26310303)

コウジカビ - Wikipedia


コウジカビは断片をより大きな腐植酸に変えていく過程で、

周辺の動植物遺体由来の有機物からエネルギーや材料を取りながら腐植酸に追加していくのだろう。

※コウジカビの仲間はフミン酸による抗酸化作用で増殖が活性化されたという報告もある


※農文協 作物はなぜ有機物・難溶解性成分を吸収できるのか 198ページの図を参考にして作成


フミン酸を含む腐植酸は土壌中にあるアルミニウムや鉄と結合しやすく、

土壌中でアルミニウムを含む粘土鉱物等と結合して蓄積されていくと考えられている。


アルミニウムと結合した腐植はより安定になり、

土壌の微生物による分解が更に遅くなりつつ、

腐植が持つ保肥力が増加する可能性があるとされる。


腐植物質と粘土を見ることで、



栽培者にとって良い土とは何だろう?とうっすらと見えてくるから面白い。




今回紹介した話を肥料で実現する為に検討したものが、

キノコの廃培地を徹底的に使いやすくしたマッシュORG



マッシュORGを土と馴染みやすくする為の良質な粘土鉱物である地力薬師の併用になる。


これらの肥料の実例の記事は下記になる。

露地野菜嬉しい想定外


次の記事

土壌の微生物にとっての餌とは何だろう?


読み物

恐竜と石炭と酸素 - saitodev.co

リグニン合成と関与する多くの金属たち - saitodev.co

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