葉面散布で殺虫剤の使用回数を減らして秀品率の向上を目指す

投稿日:2020-03-04  

前々回の殺菌剤の使用を見直すことが秀品率の向上に繋がるの記事と、前回の菌根菌に関して肥料でどこまで出来るか?の記事で、殺菌剤を使用すると作物が弱る可能性があり、虫や病気の被害を軽減するためには殺菌剤の使い方を意識的に変える必要があるということを記載し、殺菌剤の使用量の削減として菌根菌についてわかっていることを整理しました。


今回の記事では菌根菌とは別の視点で作物が強くなる為にヒントになりそうなことを整理して紹介します。


早速、興味深い研究報告を一報紹介します。

うま味が痛みを伝えている!?-植物が傷つけられたことを感じ、全身へ伝える仕組みを解明-(大学院理工学研究科 豊田 正嗣准教授) - 埼玉大学


要約すると、葉が幼虫に食害されたり、ハサミで一部を切ると傷ついたところから全身に向けてグルタミン酸(アミノ酸の一種)を用いて傷ついた情報を伝達していました。グルタミン酸を受容した細胞では次の傷害に備えはじめました。


研究ではシロイヌナズナを用いていましたが、情報の伝達という植物が生きる上での基礎的な反応ですので、植物全般に上記の内容が言えるという仮定で話を進めます。


この報告で気になった箇所があり、

更なる検証として、細胞の外からグルタミン酸を投与したところ、葉が損傷した時と同じ反応を示したという報告が記載されていました。

投与に関して詳しい記述はありませんでしたが、実験方法から考えると、おそらく葉にグルタミン酸を散布もしくは注入が考えられますが、注入は葉にダメージを与える行為になりますので、この可能性は外すとなると、葉にグルタミン酸を散布という可能性が強くなります。


この研究報告に目を通した時、アミノ酸の葉面散布は効果がありますか?で紹介した内容が頭に浮かびました。

アミノサンプロ - 京都農販


アミノサンプロというアミノ酸肥料を定期的に葉面散布されている方々から、葉の照り艶が増して、食味が向上しつつ、虫の被害が減って農薬の散布量が減ったという話題が頻繁に挙がります。

虫の被害が減ったということは、食害時の傷穴から病原菌が侵入する機会が減る事になるので、作物が病気の感染も減り、殺菌剤の使用量の削減にも繋がる事になります。


アミノ酸肥料の葉面散布は作物が防御の為に合成する各種タンパクの材料として働くので、防御力が増すという意味合いで病気が減ると予想していましたが、今回の研究報告を加味すると、被害を受けていない株が病害虫に対して身構える為のキッカケになる可能性も有り得るわけで、アミノ酸肥料の葉面散布が予防薬的な面でも有効であるかもしれません。


アミノ酸肥料の葉面散布以外で、


農文協から作物の栄養生理最前線 ミネラルの働きと作物、人間の健康という本に記載されていた内容になりますが、


葉面散布は作物に追肥的な意味合いの他に障害発生の予防として有効とされていて、障害発生の予防のためには1週間に一回程度の継続散布が必要とされているそうです。興味深い効果として、水溶性ケイ酸による病気に対する抵抗性の誘導やアミノ酸による根圏微生物相の改善効果もあるとされていると記載されていました。

地力薬師 - 京都農販


粘土鉱物肥料を葉面散布用に粒状にしたものを使用している方々から、葉が固くなって、病気の感染が減ったように感じると話題に挙がることが度々あります。


ここで一つよく挙がる質問があるので紹介すると、

虫や病気に強くなった作物は美味しくないのでは?という話題が挙がります。


先に体感した内容で返答すると、

虫の被害を受けにくく、病気になりにくい作物は食感が良く、味も良好です。


葉が硬くなって、虫の被害を受けにくくなったものは良好な食感に繋がっているはずです。

葉が合成する虫を寄せ付けにくくする成分は、



ネギの仲間であれば、動脈硬化の予防等の硫化アリルであったり、コマツナ等のアブラナ科の作物であれば、抗がん作用があるとされるイソチオシアネートであったりして、機能性野菜としての価値が高まっている可能性が十分に考えられ、前回の菌根菌からの観点も加味すると、葉にミネラルも蓄えているので、栄養価も高まっている可能性も考えられます。


ミネラルを豊富に含む作物は光合成の質も高い為、糖由来の甘み、アミノ酸由来の旨味も良いはずで、グルタチオンによる味の増強やポリフェノール類のほんのりとした苦味が作物の味の質を高めている可能性もあります。

※グルタチオンは光合成が盛んな葉でよく蓄積されている物質です。


最後に葉面散布は今回紹介したアミノサンプロや粉の地力薬師以外でもノウハウが蓄積されています。



弊社のノウハウは土壌散布と葉面散布の実践手引き(有料)に予防薬と合わせて記載があります。

土壌散布と葉面散布の実践手引きは京都農販が関与しているイベントや勉強会で入手することができます。

京都農販の取り組み


補足

グルタチオンについて

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近年レバーやホタテ貝、魚醤、ニンニク、タマネギ、酵母エキスといった食べ物に含まれるグルタチオンのような小さなトリペプチドが、舌上のカルシウム感受性チャネルを刺激することによってこく味が引き起こされると報告されています。グルタチオン自体に味はありませんが、苦味を抑え、塩味、甘味、うま味を増強します。なお、酸味への影響は明らかにされていません。しかし、わずか2〜200ppmといった微量でもこく味を感じさせる効力があります。

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食感をめぐるサイエンス - 株式会社 化学同人 14ページより引用


補足2

グルタチオンには抗酸化作用があります。

作物の収穫量・品質向上に関与するグルタチオンの機能解明 - 農林水産技術会議

2-アミノ酪酸による新たなグルタチオン代謝制御機構を発見 -錆びない体づくりの秘訣として期待- | Research at Kobe

菌根菌に関して肥料でどこまで出来るか?

投稿日:2020-03-03  

前回の殺菌剤の使用を見直すことが秀品率の向上に繋がるの記事の続きです。



前回の記事では作物と菌根菌の共生の観点から、虫の被害や病気を減らしつつ秀品率を高める為には、殺菌剤を減らすか使用しないということが重要であることを記載した。

殺菌剤の作用機構のイメージをより明確にすることで、殺菌剤はより効率的に使用できるようになり、殺菌剤による作物のダメージを減らし、それが秀品率の向上へと繋がっていきます。


今回は作物の耐性を増やすという観点で話を進めたいと思います。




菌根菌といっても、目には見えない微生物の話なので、自身の栽培に取り入れることが難しいかと思います。

菌根菌に限らず、微生物資材全般に言えることを記載しておくと、

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各微生物には得意な環境があって、得意な環境であれば爆発的に増殖するけれども、不得意な環境であれば、増殖できないどころか、休眠や自殺することがある。

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高価で有益な微生物資材を購入してきたとしても、使用前に土壌環境を整えていなければお金をドブに捨てる行為になるということを忘れてはいけません。



有益な微生物や病原性の微生物の生態から判断するに、ECを常に低くしつつ、土壌をフカフカにすることを目的としていてば、比較的有益な微生物が増えやすい環境に近づいていると言えます。


上記の環境を目指す上で大事な話は下記の記事に記載があります。

腐植質の肥料を活用する前に腐植について整理しよう




良い菌はどういう環境に集まるか?という観点を元に菌根菌の環境を考えてみたいと思います。

作物と共生すると言われる菌根菌は普遍的に土壌中にいるとされています。


作物は菌根菌と共生するとお互いに優位になると言われているが、共生には双方にそれなりのコストがかかる上、菌の住処が植物の根であるので



作物側で発根が活発な環境であることが大事であることが重要であるはずです。

発根促進に関しては下記の記事に記載があります。

生育状況の確認と発根促進に関すること




次に菌根菌に関して最近の興味深い研究報告を紹介します。

アーバスキュラー菌根菌の純粋培養に世界で初めて成功~微生物肥料としての大量生産に道~ - 国立研究開発法人 科学技術振興機構

上記の論文の要点は2つで、土壌中に普遍的にいる細菌(バクテリア)や植物油に含まれる脂肪酸を含めて培養すると、菌根菌の増殖が活発になるというものです。

※油分を酵母等の微生物が分解すると上記の脂肪酸になる

パニエバシラス属 - Wikipedia

パルミトレイン酸 - Wikipedia


上記の研究報告が作物にとっても有効であるか?という論点はありませんが、有効であると仮定して話を進めます。


※図:堀越孝雄、二井一禎編著 土壌微生物生態学 - 朝倉書店 12ページより引用


上の図は土壌構造と微生物のすみかということで、土壌微生物が土壌中でどういうところにいるかをイラスト化したものとなっている。


用語の整理をしておくと、

・菌類の菌糸→菌根菌を含む糸状菌の菌糸

・1次鉱物→粘土鉱物ではない鉱物

・2次鉱物→粘土鉱物

となっている。


ここで注目したいのは、菌糸は土壌の間隙(≒気層)にいて、細菌は粘土鉱物や植物の根の近くにいることになっている。

上記の研究報告と合わせると、粘土鉱物と腐植が土に馴染んでいるところで菌根菌が活発になる可能性が高いことが言える。




余談だけれども、



最近生ゴミを土に混ぜる時に2:1型粘土鉱物を一緒に混ぜて経過を観察していたら、

2:1型粘土鉱物→地力薬師



粘土鉱物の持つ吸着性が周辺の有機物や小石を吸着し、粘土鉱物がコロイド化し、



上の写真のように土壌粒子内に粘土鉱物が微細になって入り込み、いずれは粘土鉱物が見えないぐらい小さくなりながら、土壌粒子を接着するように馴染んでいく経過が観察できた。

上の写真の数日後は空気がふんだんに入るような団粒構造のような形を形成していた。


話を戻して、土壌粒子に溶け込んだ粘土鉱物に土壌の細菌が住み着いて、土壌微生物の多様性というものが増す事になる。




話を菌根菌の培養の研究報告に戻して、菌根菌の培養のもう一つの条件の方を見てみる。

もう一つの条件に挙がっていたのが、植物油に豊富に含まれる脂肪酸が菌根菌の増殖にとって重要であるそうだ。


普段の肥料で脂肪酸を豊富に含んでいる肥料は何だろう?と考えてみて浮かんだものが、



米ぬかや油粕等の食品残渣系の有機質肥料があった。

米ぬかという言葉で連想する堆肥として、


マッシュORG


キノコの廃菌床由来の堆肥がある。

キノコ栽培を行う時、キノコの餌として米ぬかを添加する。

米ぬかは菌の働きによって分解され、堆肥中にもそれなりの量が残るとされます。

※有益な微生物を米ぬかで活発にしたというイメージ


廃菌床を土に馴染ませるという観点から土作りを始めることが秀品率を高める上での重要な一歩になるかもしれません。


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露地野菜嬉しい想定外

殺菌剤の使用を見直すことが秀品率の向上に繋がる

投稿日:2020-03-01  

先日の京葱SAMURAI株式会社様向けで秀品率の向上の為に意識すべきことの話をさせて頂きました等での内容になりますが、栽培を苦戦している要因として、殺菌剤や土壌消毒という言葉に対して過度に信用していることが様々な問題を起こしているのではないか?と予想しています。

今回はより秀品率を高める為に殺菌剤の使用時に意識したいことをまとめます。

結論から伝えますと、殺菌剤の使用を誤ると、病気の発生率が格段に向上すると予想しています。


今回は様々な視点から上記の予想の説明を記載することにします。




※図:京都大学学術出版会 菌類の生物学 53ページより引用


菌根菌というものがあります。

菌根菌とは植物の根と共生する糸状菌の仲間で、菌根菌に感染した植物の根に菌根という非常に細い根が無数に生え、植物は菌根菌に栄養を与える代わりに、菌根菌から植物の根では吸収が難しいようなリンや微量要素を得るという共生関係を結びます。

菌根菌に感染した植物は菌根菌から頂いた特殊な糖によって、乾燥や寒さに強くなったり、菌根菌からの感染の刺激をトリガーとして、虫害への耐性が強くなると言われています。

※詳しく知りたい方はトレハロースやジャスモン酸で検索してみてください。


整理すると、菌根菌と共生した植物は食害を受けにくく、食害を受けたとしても、微量要素を快適に吸収し続けている為、傷の回復がはやくなります。




ここで植物の病気の感染経路を見てみます。

病原性微生物の感染経路として、作物の栽培では大きく3種類の経路があると言われています。

・うどんこ病等の葉の表面を無理やり穴を空けて感染する(メラニンによる圧力)

・葉の裏にある気孔から侵入して感染する

・細菌やウィルス等で虫にかじられた穴から侵入して感染する


もし、虫による食害被害が減ったのであれば、もしくは傷がはやく回復するのであれば、三番目の傷穴からの感染の確率は大幅に削減出来ることになるわけで、菌根菌との共生した植物では虫への耐性が増し、同時に病気になりにくくなったと言えます。




ここで一つ興味深い研究結果を紹介します。

西田 貴明 特集2 ミクロな世界からの新展開 アーバスキュラー菌根菌が地上部の植食性昆虫に及ぼす影響 -植物と昆虫の相互作用研究における地下部からの視点- 日本生態学会誌 57:412 - 420(2007)


要約しますと、

菌根菌と共生した植物では葉食性昆虫や潜葉性昆虫に食害されにくくなり、(カーバメート系)殺菌剤を使用した実験区では食害されやすくなった。

※ただし、すべての昆虫で同様のことを言えたわけではない。


研究報告ではオオバコで試験をしていますが、おそらく作物全般に当てはまると捉えて良いはずです。



殺菌剤を利用すると、菌根菌も菌であるため、何らかの悪影響を与えるのは容易に想像出来、菌根菌との共生が弱くなることで、虫に対して弱くなり、虫害によって病気になる可能性が増すと言えます。


であるので、極力殺菌剤の使用は控えた方が良いと言えます。




殺菌剤についてもう一つの視点を紹介します。

殺菌という言葉を聞くと、おそらく薬剤を散布したら、薬剤に触れた病原性微生物が即座に消滅するというイメージがあるかと思いますが、殺菌の定義について調べてみますと、

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殺菌は文字通り菌を殺すことである。対象や程度は保証されない。極端な話をすれば、1%の菌を殺して99%が残っている状態でも「殺菌した」と言える。

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殺菌#殺菌より抜粋


農薬としての殺菌剤の作用点を見ると、大半の殺菌剤は病原菌を徐々に弱体化させつつ、いずれ無毒なところまで個体数を減らして症状を治すことになっていて、病気が蔓延した状態では効果を発揮しないものが大半です。

※上記の内容は朝倉書店から出版された新版農薬の科学を参考にしています


病原菌に限らず、すべての微生物で言えることですが、環境条件に当てはまった微生物は個体数を爆発的に増加させ、当てはまらなかった微生物は増加することはないという鉄則があります。病気が蔓延したということは、病原菌にとって増殖しやすい環境条件が揃ったということになります。

土壌の微生物にとっての餌とは何だろう?


整理しますと殺菌剤は予防的に活用する際は効果を発揮しますが、治療を目的とした時は効果は薄いという事になり、病気が大発生した時に殺菌剤を使用すると、作物は菌根菌等の有用な菌にまで悪影響を与え、虫への耐性が減ることで病気になりやすくなるといった悪循環に陥る可能性があります。

※病気が蔓延している環境では、病原菌の増殖が優勢で、有益な菌が抑えられている状態ですので、殺菌剤によって有益な菌が弱り、病原菌をより優勢な状態にする可能性があります。




それでは作物が病気になった場合はどうすれば良いのか?という質問が挙がると思います。


有効な手段として、

酸素供給剤の殺菌作用についてに記載されている内容であったり、



弊社のノウハウをまとめた土壌散布と葉面散布の実践手引き(有料)に具体的な記載があります。

作物が病気にかかった時こそ、巧みな追肥で作物を強くすることが有効です。


土壌散布と葉面散布の実践手引きは京都農販が関与しているイベントや勉強会で入手することができます。

京都農販の取り組み


余談ですが、

作物が菌根菌と共生することでリン酸や微量要素の吸収能力が向上し、作物の栄養価や味が改善される可能性があります。

殺菌剤の使用を適切にすることで、美味しく健康的な作物の栽培に繋がるかもしれません。


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クリーニングクロップとして緑肥を育てた時に土に鋤き込んでも良いですか?

投稿日:2020-01-27  

高槻の原生協コミュニティルームで緑肥の話をさせて頂きましたの会で下記の質問がありました。

育てた緑肥は土に鋤き込んで良いですか?



この質問の背景には塩類集積のハウスで過剰な養分を緑肥に吸わせて除塩することを目的としていることがあります。



せっかく緑肥に余剰分を吸わせたのにそれを土に還して良いか悩むところ。

ハウス内の塩類集積対策について


この質問に対していつも鋤き込んで良いと返答しています。

鋤き込んで良いと返答している理由は緑肥が吸収した窒素(硝酸態窒素)は体内でタンパクに変わって、それは土壌への有機物の補給で利用出来ます。同じ窒素であっても土壌への影響は全く別物です。

有機物の投入は土壌の物理性を改善し、排水を良くしつつ保肥力を高める為、余剰成分の土壌への影響は少なくなります。


リン酸等の余剰成分の話も同様です。

リン酸過剰問題を緑肥で解決する時に意識すること


他にも鋤き込む方が良い理由はありますが、その理由はこの記事の文末に記載します。




上記の返答に対して更に質問がありました。

農林水産省のサイトの緑肥の資料でクリーニングクロップとして緑肥を利用した場合、ソルガム等では窒素やカリウムの吸収量が多いので、刈り取って土壌の外に持ち出さなければならないと記載がありましたが、それでも土に鋤き込んで良いのでしょうか?


この話を始める前に農学で一般的に考えられている内容に触れておくと、

農学や栽培の指導書ではカリウムは欠乏症を起こさないという考え方があります。

土壌鉱物由来や川からの入水でカリウムは補充されるのでカリウムは不足しないと考えられていますが、この学説も最近疑問視され始めています。


上記の内容を踏まえた上で、自身でお持ちの土壌分析の結果を眺めてほしいのですが、



ハウスで家畜糞を連投しているところを除くと慢性的にカリウムは不足している傾向にあります。

この理由として土壌の酷使があり、有用な金属系の肥料の元となる鉱物が消耗され尽くされているという背景があります。


有用な土壌の鉱物が消耗され尽くされているという背景の元でハウスの方を考えてみると、



土壌分析値としてカリウムが多くなっていますが、おそらくこれは家畜糞由来のカリウムで、家畜糞の連投によって土壌の鉱物は消耗されている可能性は十分に有り得ます。

もう一点注目してほしいのが、家畜糞という有機物量が大いにも関わらず、保肥力が少ないということ。

※家畜糞特有のECを上げる硝酸態窒素が多いにも関わらず、本来必要なCECの要素となる腐植が少ないことから判断しています。おそらくこの畑は物理性が悪くECが上がりやすい状態であるはずです。


土壌の保肥力が上がると相対的にカリ、石灰と苦土の値は下がります。

ここからカリは余剰に見えるけれども、それは保肥力が低いからであって、本来欲しい腐植の量が増えるとカリウムの量は大したことはないということになります。そこに土壌の鉱物は消耗している可能性も十分あるということを加えると、緑肥で畑の外にカリウムを持ち出すという行為は勿体無いことになります。


窒素のところで触れましたが、土壌の物理性が高くなると余剰成分は土表面に留まらなくなるので、その観点からもカリウムの持ち出しは栽培時のカリウム欠乏を招く要因になります。




最後に緑肥を土に鋤き込むべき理由ですが、


Bishnu SarangiによるPixabayからの画像


緑肥は休耕に対して省力化しなければ本末転倒です。刈り取りして有機物の量を減らして、植物性堆肥を再投入するのは人件費と肥料の購入の経費の面で勿体無いです。

余剰成分の土壌への還元が心配であれば、緑肥を鋤き込んだ時に

ハイブリットORGバークあたりの養分の少なく且つ、土壌の物理性や化学性を高める資材を投入すれば良いです。

団粒構造を作りやすい腐植の種類などはありますか?


土壌の化学性が向上すれば、緩衝性が増し、余剰成分に対して土の方でなんとかしてくれます。

石灰過剰の問題は緑肥の活用が巧みな方は次作から石灰系の肥料を極力入れないという対処をされています。

緑肥後の栽培では作物の発根量が増していて、収穫による養分の持ち出しもあるので、その次の作の頃には理想に近い値になっているはずです。


最後に注意ですが、

今回の話は東日本大震災後の緑肥によるセシウムの除去等の話は除きます。


緑肥を活用する前のオススメ記事

緑肥を利用する前の注意事項をまとめました


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腐植質の肥料を活用する前に腐植について整理しよう


余談

カリウムは土の粘土鉱物と有機物が結合する際に重要であると考えられています。カリウムを除くと土への有機物の蓄積が抑制される可能性があります。

カルシウムで団粒構造形成を促進を謳う土壌改良剤 - saitodev.co

ハウス内の塩類集積対策について

投稿日:2020-01-22  

塩類集積しているハウスでどのように対処すれば良いか?という話題になりました。

先に塩類集積について整理しておくと、



EC過剰の結果について、、の記事で触れている通り、土壌表層に塩(えん)がたまり、極端な状態では土表面が白っぽくなる現象です。

※晴天の日に白い粉が見やすいです。雨の日では白い粉が見えないことがあります。



土壌分析の結果を見ると、ECが異常に高く、石灰、リン酸とカリも過剰になっている状態であることが多く、この状態で水を与えても、塩(えん)の方が水を吸ってしまい、作物の根に水が到達せず、株が弱ってしまいます。

塩類集積が発生している土壌で無理やり栽培をしても、追肥や農薬で経費が上がる割に秀品率が低い、もしくはまったく収穫できないという状態に陥り、経営的に非常に不利な状態になります。(最悪の場合、収入がなくなり倒産します。)


塩類集積は土の腐植量が足りず、物理性が悪い状態で、塩(えん)を大量に含む家畜糞等を元肥で使用し続けた場合に発生します。

塩(えん)にはどのようなものがあるかというと、家畜糞に大量に含まれる硝酸態窒素の残留物である硝酸根(こん)、即効性の肥料(硫安や硫酸苦土)等に含まれる硫酸根(こん)や海水が入り込んでしまった際や家畜糞に含まれる塩酸根(塩素イオン)があります。


これらの塩(えん)は水溶性で、大量にある場合は水を吸水するという特徴があるため、本来作物に与えようと思っていたのに、塩(えん)の方が水を奪ってしまう。

水に含まれている養分も作物の根に到達しないということで株が弱ってしまうという現象に陥ります。


この塩類集積が発生したハウスではどのような対策をとれば良いのか?を考えてみます。

塩類集積の問題を解決する一番の手は土表層に溜まった塩(えん)を除塩することです。


水に溶けやすいという特徴を利用して、ハウス全体を潅水して、その水をハウスの外に流し出せば塩類集積は軽減されます。

しかし、この問題は大きな労力を要しますが、塩類が溜まりやすいという状態は解決しません。


他の手として、



緑肥に土から塩(えん)を吸ってもらうという手があります。

他の緑肥の効果である物理性の向上も塩類集積の解決に貢献します。

緑肥を活用して、土壌の物理性の向上を早める


緑肥の種類は土から貪欲に養分を吸収するイネ科のソルゴーあたりを選択すると良いです。


しかし、緑肥にも塩類集積が発生している土壌で無事に発芽するのか?

硝酸根は吸収できるけれども、硫酸根や塩酸塩は吸収できないという問題があります。


ここで塩類集積の環境で緑肥を育てる為に一つ工夫を入れます。


ハイブリットORG - 京都農販


植物性の堆肥を土に混ぜて、土に空隙を増やした状態でスプリンクラで散水して、塩(えん)を土の表層から深いところに移行させた上で緑肥のタネを播種します。

塩類集積は土の有機物が極端に少ない状態で発生しているので、緑肥を育てる前は植物性の有機物は大量に欲しいです。



剪定枝や落ち葉が豊富に手に入るのであれば、これらを大量に入れるという手もありです。

ただし一点程注意が必要で、未熟な木質資材の場合は土の空隙が極端に増えて乾燥しやすくなります。緑肥のタネを播種する時は発芽してある程度育つまで毎日散水する必要があります。


緑肥が無事育ったら、花が咲く前に刈倒して鋤き込みます。

緑肥が土の余分な成分を吸収したのに、株を刈倒して鋤き込んだら成分は土に戻って意味がないのでは?という質問があります。

緑肥は土壌中の過剰な養分を吸収したら、その養分を元に体を作ります。その物質は土に還ると腐植の材料として役立ちます。

リン酸過剰問題を緑肥で解決する時に意識すること


緑肥を育てる為のスプリンクラーは



ハンガースプレーがオススメです。

ハンガースプレーセットとは - 京都農販


ハンガースプレーセットは塩類集積問題の解決後の栽培でも有効で引き続き利用できます。


塩類集積問題に取り掛かる前に下記の記事の熟読をオススメします。

緑肥を利用する前の注意事項をまとめました


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腐植質の肥料を活用する前に腐植について整理しよう

緑肥の可能性を探る

緑肥を活用して、土壌の物理性の向上を早める

投稿日:2020-01-17  

地力薬師 - 京都農販


地力薬師という粘土鉱物系の肥料があります。

腐植系の肥料と併用することで土壌中の腐植の蓄積を助ける働きがあると謳っている肥料になります。

粘土質の畑で粘土鉱物系の肥料を使用しても良いか?



島根県出雲市で採掘される鉱物で、このあたりで採掘出来るものとして緑色凝灰岩というものになります。

グリーンタフ - Wikipedia



地力薬師の肥料袋から中身を取り出し、注意深く見てみると、淡い緑色の石が入っています。

この石は2:1:1型粘土鉱物の緑泥石(英名でクロライト)と呼ばれている鉱物が含まれている可能性が高く、JAの施肥診断技術者ハンドブックによると2:1:1型粘土鉱物は作物の生育に好ましい性質を有すると記載されています。

※JA全農 肥料農薬部 施肥診断技術者ハンドブック 2003 32ページより引用

緑泥石 - Wikipedia


この緑泥石ですが、粘土鉱物に求める性質の一つであるCEC(陽イオン交換容量:保肥力)を見ると、地力薬師の主成分であるモンモリロナイトが60〜100 meq/100gと記載されているところ、緑泥石のCECはなんと2〜10 meq/100gで、相当の差があります。

ちなみによく話題に挙がる1:1型粘土鉱物のカオリナイトのCECが2〜10 meq/100gです。

※meq/100gはCECに用いる数字で値が高い程土壌中での肥料の保持能力が高いとされます。


この緑泥石ですが、植物の根による物理的な風化作用と有機酸による処理(化学的な風化)によってモンモリロナイト並のCECに上がるそうです。

※朝倉書店 白水晴雄著 粘土鉱物学 -粘土科学の基礎- 新装版を参考にして記載

※根から分泌される根酸でも同様の効果が得られるはずです


これらの話をまとめると、地力薬師の肥料は施肥した直後は効果が低く、植物が伸長するに従って効果が高まっていく肥料であると言えそうです。





緑肥を採用する目的の一つに団粒構造の形成により土壌の物理性の改善があります。物理性を改善する過程において植物の根の作用が重要であるとされています。



植物を一株抜いて発根を観測してみると、(特に単子葉で)固いところを貫くように伸長し、貫かれた固まりを指で潰すとすぐに崩れます。

これは植物の根による鉱物の風化作用の一種だと言えます。この風化を経て、土壌中の固い箇所は細かく柔らかくなります。



根による風化作用と緑泥石の話を合わせると、発根が活発になればなるほど、粘土の持つ吸着性は増し、周辺の腐植と結合して良い土へと変化していくと言えます。

緑肥を利用する前の注意事項をまとめましたの記事で緑肥の播種の前に土壌改良材を施用し発根量を増やすべきだと記載しましたが、土壌改良材によって環境が良くなることで発根量が増し、それに伴い粘土鉱物の効果が高まり次作へと繋げることが出来ることになります。

緑肥は作物の栽培と異なり、本来通路である箇所や株数が多く、栽培中では効果を発揮しないような粘土鉱物にも作用し、これに合わせて、地上部の茎や葉が茂り鋤き込んだ際の有機物量も大幅に増え、土に還る腐植の量も増える事になります。


緑肥が堆肥の土壌改良の効果を高める

この視点があると栽培は更に有利になるはずです。

リン酸過剰問題を緑肥で解決する時に意識すること

投稿日:2020-01-17  

土壌分析の結果でカリ不足とリン酸過剰に悩んでいる方から緑肥でどうにかなるか?と質問がありました。



わかりやすくグラフで示すと露地であれば上のような結果でしょうか。

リン酸過剰である時は大抵石灰も過剰になっていることが多いです。



はじめに緑肥で改善できることと出来ない事に触れておくと、

改善出来ることとしては、

・余剰成分を吸収することが出来る。この株を鋤き込んでも余剰成分がそのままの形で還ることはなく、団粒構造の成分として有効活用される

例えば、ECの要素である窒素があります。ECを高める窒素は無機の硝酸塩で、緑肥は根から硝酸塩を吸収するとタンパクに変えます。このタンパクを土に鋤き込むと腐植の基になります。

リンは細胞膜のリン脂質の材料として利用され、これもまた土の中で何らかの良い作用として働く可能性があります。


・難吸収性の成分を易吸収性の成分に変えて、次作で栽培する作物にとって吸収しやすい形にしておく

例えば、リン酸が上記に当たります。


土壌中に蓄積したリン酸は主に無機のリン酸石灰等と有機態リン酸があるとされています。

無機リン酸は溶けにくい為、作物になかなか吸収されません。

※リン酸石灰という形で土に残っている為、リン酸と同時に石灰も過剰であることが多い


もう一つの有機態リン酸とは、


By Yikrazuul - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link

フィチン酸 - Wikipedia


上記のように記載されるリン酸(右側の中心にPがあるものがリン酸)で、穀物の実に多く含まれる貯蔵用のリン酸らしく、人や家畜が食べても吸収されにくく、家畜糞に多く含まれるとされています。


この有機態リン酸は、



作物にとって有用な肥料成分をキレート作用という形で吸収しにくい状態にします。家畜糞で毎年土作りをしていると、年々他の成分の欠乏症が目立ってきたなと感じるものの要因の一つだとされます。

畜産の家畜に与える飼料でも有機態リン酸の消化率の低さが問題になっていて、リン酸の消化率の低さを解決するためにフィターゼという酵素を飼料に加え、リン酸を吸収しやすい形にして与えるとされています。

養豚飼料へのフィターゼの添加効果 - 北海道立総合研究機構


このフィターゼは青カビ等の土壌微生物から分離したものを利用しているそうです。




続いて改善されないこととして、

・カリウムを含め、亜鉛や銅といった微量要素の欠乏の問題は解消しない

があります。


金属系の肥料成分は土壌の鉱物から溶け出たものが主であり、緑肥を採用する時は大半が土壌劣化を感じた時で、この環境では鉱物由来の微量要素が出し切った状態である可能性が高いです。


先に冒頭のカリ不足の解決策を記載しておくと、緑肥を利用する前の注意事項をまとめましたで記載した通り、


地力薬師 - 京都農販


緑肥を育てる為に鉱物系の土壌改良材を使用することです。




冒頭の質問にありますリン酸の過剰に対して、どのように解決すべきか考えてみます。

リン酸は無機有機問わず、どちらも土壌の微生物が活発になることで吸収しやすいリン酸へと変わり、活発になってほしい微生物は好気性の枯草菌や青カビであるとされています。


ハイブリットORG - 京都農販


茶粕やコーヒー豆粕を主とした植物性堆肥を事前に施用し緑肥の発根量が増える環境になった状態で、


Bishnu SarangiによるPixabayからの画像


団粒構造形成率が最も高く土をフカフカにするイネ科のソルゴーか、


acworksさんによる写真ACからの写真


リンの吸収を促進する菌根菌と相性の良いキク科のヒマワリを採用する。

※ソルゴーとヒマワリはどちらも夏の緑肥で、秋から緑肥を利用したい場合はコスモスやエンバク等あたりが効果が高いと予想している。

※緑肥の選定は農文協 橋爪健著 緑肥を使いこなすを参考にしています


どちらの緑肥も背丈が大きいので、緑肥の効果を高める為に追肥を与えると良いです。

※緑肥を育てる前の堆肥として茶粕やコーヒー豆粕が良い理由や追肥で最適な肥料については下記の記事に説明があります。

緑肥を利用する前の注意事項をまとめました




次によくある質問で緑肥の刈り取り時期があります。

上の写真ではわかりやすいように花を付けていますが、花が咲く前に刈り取り鋤き込むと良いです。

よく刈り取った緑肥を持ち出した方が良いか?と質問を受けることが多いですが、よほどの有害物質を吸収させた株で無い限りは鋤き込む方が効果が高いです。


最後にリン酸過剰の問題に取り組むと、




このように一旦リン酸の数値が上がり、



翌年リン酸の値が下がるという現象が見られますが、これはリン酸過剰の問題が解決の方向に向かっている兆しですので心配は無用です。

何故リン酸の値が一度上がるかは下記の記事に説明があります。

団粒構造を作りやすい腐植の種類などはありますか?


関連記事

土壌の微生物にとっての餌とは何だろう?

緑肥を利用する前の注意事項をまとめました

投稿日:2020-01-16  

緑肥の相談を時々受けます。

畑を休ませる時にはどの緑肥が良いですか?が大半ですが、

時々、緑肥のタネを撒いてみたけれども、思うように発芽しなかったり、状況があまり改善されないという連絡もあります。


緑肥の結果がよろしく無い畑では共通の問題点があり、

この問題はこれから緑肥を活用することを検討している方でも重要になるのでこの機会に整理します。


※写真はイネ科の緑肥のエンバク


緑肥のタネを撒く前に、

次作の土壌改良材として使用予定の肥料や堆肥を前倒しして緑肥を育てる為に施用すること

※緑肥の種類に関係なく、上記の内容はどの緑肥でも言えます


緑肥に求める効果といえば、

・有機物の補給

・排水性保水性の改善(団粒構造の促進)

・家畜糞等の連続使用によってよろしくない成分が溜まったものを抜く

・リン酸等の利用困難な成分を吸収しやすい形にする

といったものがあります。


どの効果にも共通して言えることとして、



作物栽培時と同様、緑肥も発根量が重要となります。

有機物の補給では、地上部を繁茂させる必要がありますが、発根がしっかりしていれば葉も茂り、鋤き込んだ際の有機物量が増します。

物理性の向上や余分な成分の吸収は発根量が多ければ効果が高いことは安易に想像できます。


ここで一点意識してほしいこととして、緑肥を使用したいと頭に浮かんだ時の畑の土の状況は十中八九秀品率が落ちていることが体感できた時です。

秀品率が落ちた原因として考えられるのが、土壌の劣化やよろしくない成分が溜まりすぎた時で、これらの状況は病原性微生物が活発になりやすい状態でもあるので、更に秀品率が下がり、農薬代等がかさんで経営が難しく感じている時です。


緑肥も作物同様植物なので、栽培の時のように緑肥も育ちやすい環境を用意してあげなければなりません。

特に家畜糞での栽培の連作の場合、家畜糞の中にある残留性の成分は発根を抑制するので、養分過剰だと思っていた土壌でも緑肥がうまく育ってくれません。

※家畜糞による連作障害の説明は下記の記事に記載があります

団粒構造を作りやすい腐植の種類などはありますか?


土壌の劣化は土壌の鉱物由来の微量要素も減っている状態であり、緑肥も当然微量要素を欲するので、緑肥の前に植物性の堆肥だけでは事足りません。


これらの話をまとめると、

冒頭に記載した通り、土作り資材は前倒しして緑肥の栽培で使用することが大事であることはわかります。


緑肥の栽培時の追肥も緑肥の効果を高めることを貢献します。




緑肥前のオススメの肥料として、


物理性の改善を目的とした肥料でハイブリットORGがあります。

ハイブリットORGを推す理由を知りたい方は下記の記事をご覧ください。

団粒構造を作りやすい腐植の種類などはありますか?



土壌の劣化対策の微量要素の補給を目的とした肥料で地力薬師があります。

粘土質の畑で粘土鉱物系の肥料を使用しても良いか?



追肥用の肥料として黒糖肥料をオススメします。

黒糖肥料に豊富に含まれるアミノ酸によって緑肥の発根を助けます。


緑肥は最低でも3ヶ月近くと長い時間畑を占拠する事になるので、

緑肥の育つ環境を快適にして、より効果を高めましょう。


-続く-


関連記事

生育状況の確認と発根促進に関すること

福岡県の宗像で施肥設計の前の土質の確認

投稿日:2019-06-13  

福岡の宗像(むなかた)という地域でこれから本格的に営農される方から、

肥料についての話と候補地の土壌を見て欲しいという連絡があり行ってきた。


候補地の土壌を見る前に既に栽培をしているところが赤土ですぐに締まるからどうすれば良いか?という話題が挙がった。


全国各地のほ場巡回の前に行っている情報収集で記載した通り、

実際の土に触れる前に確度を高める為に予想を立てることにしてみた。


赤土という言葉から二つのパターンを挙げてみる。

一つ目は古土壌と言われる赤黄色土

土を使い倒して、土壌中に酸化鉄と水酸化アルミニウムの含有量が高くなりすぎた土が多い。

※栽培の話ではなく、地質時代の視点で使い倒した土

地質時代 - Wikipedia


もう一つは安山岩質的の岩石が風化して良質な粘土鉱物になって土を形成したものだ。


出来れば後者の土壌であって欲しいと思いながら地域の土質と地質を確認してみる。

何故後者が良いのか?と言えば、赤黄色土と比較して、これからの土なので粘土鉱物に限らず、ミネラル分も豊富だろう。


先に土質から見てみると、



全体的に水田多め(青っぽい色)の土地で所々有機物多めの土(緑色)が点在している地域で、


※土質の確認は日本土壌インベントリー - 農研機構を活用


所々に懸念している赤黄色土がある。


続いて地質を確認してみる。


20万分の1日本シームレス地質図 - 国立研究開発法人産業技術総合研究所を活用


地域に点在する山の地質が中心は粘性の高い花崗岩(ピンク)が多めだけれども、

花崗岩を囲うように安山岩質的な火山岩(矢印で示した二番目に濃い緑)で構成されている。


土質と重ね合わせると、

安山岩質的な火山岩の周辺に赤黄色土のエリアは少ない


冒頭で話題に挙がった赤土で締まりやすい土の土質は二つの候補の後者の良質な粘土鉱物で形成された土の可能性が高くなった。


これらの予想を踏まえて実際の畑に行ってみた。






赤土の個所は濃い青のグライ土だ。

山から流れてきた目の細かい粘土が堆積した(または客土した)土になる。

上流にある山は安山岩質的な火山岩から花崗岩になっている。


これらの情報を頭に入れながら実際の土と対面する。



話題に挙がった通り締まりやすい土ではありそうだけれども、

扱い方次第で肥料持ちが良くなりそうな土だった。


注意深く基肥を設計すれば大化けしそうな予感すら感じられた。


宗像という地域で新たなパターンの知見を得ることができた。



読み物

土作りの視察に行くなら赤黄色土の地域へ - saitodev.co

粘土鉱物を理解する旅3 - saitodev.co

台風でも倒伏しないイネ - saitodev.co

生育状況の確認と発根促進に関すること

投稿日:2019-06-07  


作物が順調に育っているか?

これから収穫まで苦戦しないか?という指標として、



可能であれば一本引かせていただいて、

作物の発根状態を確認している。


土作りの指標の一つとして、



発根、特に側根(単子葉であれば不定根)の発根量と根の色を見ている。

発根量が多ければ本当に栽培に良いのか?の証拠はないけれども、

一般的に発根量が多く根が綺麗な白であれば秀品率が高くなるという感覚はあるはず。


現に全体的に発根量が増えた畑では、

他の畑と比較して、虫による食害や病気の被害が格段に減り、

被害の減少からの防除回数も下がる。


発根量が増えることによって、光合成や耐性に関わる微量要素の吸収が向上し、結果として秀品率が向上するはずだ。


旬でも無い時期に地域平均の1/10の使用量に減った事例もある。


というわけで、

昨年よりも発根量が増えた ≒ 土壌環境が良い方向に向かっている

ということを判断材料としている。


目標を絞れば、何をやるべきか?を決めやすくなるわけで

今回は発根量が増えることについて知っていることをまとめてみる。





発根が促進される要因として最初に思いつくのが、

土作りの要素である物理性と化学性が改善された土壌だろう。


排水性を持ちつつ、保水性を持てるようになったことで、

作物は欲しい時期に水を根から吸収出来る状態でありながら、

土の中にはふんだんな酸素があるため酸欠にならない。


このような土で作物は、

根腐れせず、より深く根を伸ばすことが出来るようになる。




ここで一つ高校理科の話題に触れてみよう。

側根のといえば植物ホルモンのオーキシンが頭に浮かぶ。

オーキシンといえば、脇芽の発生を抑制して、側根の発生を促進することで有名である。


このオーキシンに関していくつかの小話を紹介する。



有機栽培で時々話題に挙がる米ぬかボカシ肥料というものがある。

米ぬかを酸素に触れさせない嫌気発酵をすることで、

甘い香りを放つように熟成させた肥料で、

熟成には乳酸菌が関与していると言われる。


この米ぬかボカシが作物の発根を促進するという報告がある。

乳酸菌が合成するフェニル乳酸が植物の発根を促進する。

眞木祐子 ぼかし肥料の発根促進作用における乳酸菌の働きについて - 雪印種苗株式会社


フェニル乳酸が植物ホルモンのオーキシンの合成に関与しているとか。

この時、微量要素の亜鉛も重要な役割を果たす。

根伸長促進物質 L-β-フェニル乳酸が水稲幼植物の生育に及ぼす影響 新大農研報,62(2):97-103,2010


ちなみにオーキシンはトリプトファンというアミノ酸を元に合成される。




オーキシンに関してもう一つ興味深い話がある。


図:植物の生育促進への利用に資する,枯草菌の転写応答機構の研究 30ページより引用


それは共生細菌である枯草菌(B. subtilis)が、

植物から栄養をもらう代わりに細菌は植物にオーキシンを渡す

という共生関係がある。

※みすず書房 これからの微生物学 マイクロバイオータからCRISPERへ 98ページより抜粋


上記のように植物と共生関係を結び、植物の生育が促進する細菌を植物生育促進根圏細菌(PGPR)と呼ぶ。



枯草菌は刈草から発見された細菌であるので、

植物性の有機物がふんだんにある土壌では発根が促進される可能性がありそうだ。




発根促進の作用のある肥料として酵母エキス入りの肥料の話題が度々挙がる。

概要は下記のプレスリリースを読んでいただくとして、

ビール酵母細胞壁が植物の成長や免疫力を向上させるメカニズムを解明 | ニュースリリース | アサヒグループホールディングス


植物は根で酵母の細胞壁の断片であるβ-グルカンを吸収することをきっかけとして発根の発生が促進されたらしい。

これまたオーキシンの合成量が増えたことによって発根が促進されたらしい。


更にβ-グルカンを調べてみたところ、

酵母に限らず糸状菌の細胞壁でもβ-グルカンが利用されているので、


クレジット:photolibrary


大型の糸状菌であるキノコや、

キノコ栽培の廃培地にも同様の発根促進効果があるのでは?と期待している。




前に酸素供給剤を試した方から酸素供給剤を基肥に仕込んだ方が明らかに生育したという連絡があった。

先に酸素供給剤について触れておくと、


酸素供給剤は過酸化石灰のことで、

水に触れると、pHを上げつつ酸素を放出してくれるので、

水に浸かりやすい畑で重宝する肥料を指す。


話は戻って生育の差があったと報告をくださった方の写真を見ると、



手前(写真左)が酸素供給剤を仕込んだ畝で、

奥(写真右)が仕込んでいない畝となる。


生育確認の為に抜いてみると、



酸素供給剤を仕込んだ畝の方が発根量が多く、

根の色も白かった。


今回の報告は実験室のような精密な環境での試験ではないので、

酸素供給剤による生育促進は経験則として捉えておくことにする。




今までは発根の促進について見てきたけれども、

これからは発根を抑制する要因について見ていく。


抑制する要因を栽培環境から除けば、

発根量はより多くなるので抑制の要因を把握しておくことは大事。


はじめにオーキシンの合成を抑制する要因を探してみると、

講談社から出版された新しい植物ホルモンの科学 第3版のサイトカイニンの章に

植物は根の周辺に栄養塩、特に窒素系の塩が多いと、発根が抑制されるという報告が記載されていた。


聞き慣れない言葉が並んだけれども、



要は熟成された家畜糞堆肥でよく聞く硝酸態窒素というもの根の周辺にあると発根が抑制される

ということを意味している。


特に牛糞堆肥は土作りにとって良いという話が流れている為、

反あたり1トンと多めに入れてしまう傾向があるけれども、

それが発根促進と秀品率の向上の視点で見ると逆効果となる。




発根を抑制するもう一つの要因として、

土壌中で活性アルミナが発生することにより根の伸長が停止する

ということがある。


土壌中にはアルミニウムを含む鉱物というものがあり、

その鉱物をかなり詳細に見ると、

こんな感じのイラストで書かれることがある。


この鉱物に対して、



トラクタによる耕起や栽培中に使用する酸性度の高い肥料(即効性のある肥料)を使用し、

次作で腐植質等の肥料で土作りをせずに栽培を続けると、

同型置換という現象によりアルミニウムが土壌中に放出される。

この放出されたアルミニウムを農学では活性アルミナと呼ぶらしく、

活性アルミナを植物の根が触れるとアルミニウムの毒性により根の伸長が停止する。

松本英明 酸性土壌とアルミニウムストレス Root Research 12(4) :149-162(2003)


ここで再び熟成した家畜糞堆肥を見直すと、

家畜糞堆肥でよく見聞きする硝酸態窒素は酸性度の高い肥料として扱われる為、

活性アルミナの発生を促進する可能性がある。

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所/大地の五億年 せめぎあう土と生き物たちを参考にして予想した


活性アルミナが栽培に影響を与える程発生した土壌の指標として、



畑の真ん中あたりでスギナが旺盛に成長しているところでは、

作物の根の成長は抑制されることが予想される。


以上で現時点でわかっている範囲の発根の促進と抑制に関することをまとめてみた。




最後に発根の促進に関して肥料で何が出来るか?を整理すると、

腐植質の肥料を活用する前に腐植について整理しようの内容に従って、腐植質の肥料を土壌に定着させ、土壌の排水性を高めつつ、保水性を高め、発根のストレスを軽減するような環境にする。


発根しやすい環境を用意できたら、

アミノ酸肥料で発根に重要なオーキシンの合成の材料を作物に与える。

※オーキシンの元のトリプトファンの合成にグルタミンが必要

アミノサンプロ - 京都農販ショップ


糸状菌や乳酸菌のくだりは

糸状菌であるキノコの培地由来のマッシュORGを信じるということで良いだろう。

マッシュORG - 京都農販ショップ


発根に関与する各種微量要素は

粘土鉱物を毎作の栽培前に仕込むことによって改善する。

地力薬師 - 京都農販ショップ



他に長期間土壌に留まってくれる酸素供給剤であるネオカルオキソも候補に入れておきたい。

ネオカルオキソ - 京都農販ショップ


栽培中の土壌中の微生物に関しては、微生物は難解なので、下記の記事の紹介までに留めておく。

土壌の微生物にとっての餌とは何だろう?


時々緑肥を育てて、栽培環境のメンテナンスも忘れずに

緑肥の可能性を探る


読み物

植物の根と枯草菌のバイオフィルム - saitodev.co

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