
京都農販日誌
ナメクジやヨトウの防除で有効な手段はありますか?に対して
2026/06/25
栽培でナメクジの被害が多くて困っていて、何か良い方法はありますか?という話題が挙がりました。
ナメクジにはコーヒー粕とか色々な情報を見かけますが決定打というものはありません。
そんな中でナメクジの忌避剤について調べてみましたところ、興味深い研究報告がありましたので、今回はその内容を記載します。
Fungal volatile organic compounds show promise as potent molluscicides - Pest Manag Sci . 2019 Dec;75(12):3392-3404. doi: 10.1002/ps.5578. Epub 2019 Oct 1. - PubMedで、メタリジウム属の糸状菌が合成する1-オクテン-3-オール等の数種の化合物でナメクジに対して忌避作用を示したという報告が記載されていました。
先にメタリジウム属の糸状菌の方ですが、ヨトウ対策としての落葉広葉樹の落ち葉で土作り2の記事で昆虫寄生菌として話題に挙げた菌と同属の菌になります。
もう一つの方の話題の1-オクテン-3-オールは、


マツタケのほか、シイタケ、ツクリタケなど多くのキノコ(糸状菌)が合成する化合物になりまして、別名はマツタケオールでマツタケの香りに大きく貢献している香り化合物(揮発性有機化合物:Volatile Organic Compounds:VOCs)になります。
1-オクテン-3-オールは多くの糸状菌が合成出来るということなので、ナメクジは土壌中から揮発した1-オクタン-3-オールを感知することで、この周辺に自身を脅かす天敵がいると感じているのでしょうか?
1-オクテン-3-オールには忌避作用の他にも興味深い特徴がありまして、その一つに植物の根に対してアレロパシーのように作用する可能性があるということです。
植物の根にとって、1-オクテン-3-オールの影響を受けるわけにはいかないので、何らかの防御を行うそうなのですが、その反応がバイオスティミュラントのようになるそうです。
Volatile 1-octen-3-ol induces a defensive response in Arabidopsis thaliana | Journal of General Plant Pathology | Springer Nature Linkによるとシロイヌナズナで1-オクテン-3-オールで処理を行ったところ、誘導全身抵抗性のような反応が見られたとのことです。
誘導全身抵抗性は食害性昆虫への防御と天敵の誘引についてで詳しく記載していますが、ヨトウ等の難防除性の食害性昆虫に対しても抵抗性を発揮する可能性があります。
1-オクテン-3-オールが効けば、ナメクジでなく、ヨトウ等の食害性昆虫の被害に関しても軽減できる可能性が見えてきました。
1-オクテン-3-オールがナメクジやヨトウに効くのであれば、施肥で1-オクテン-3-オールが合成されれば良い事になります。
この内容のヒントとして、Development of an Application Method for Volatile Compounds Derived from Mushroom Fungi Beds as Plant Growth-Promoting Biostimulants - Methods Protoc. 2025, 8(2), 29で、廃菌床から得られた1-オクテン-3-オールでイネの根に対してバイオスティミュラントのような作用が見られたという報告があります。

廃菌床堆肥(商品名:マッシュORG)で土壌改良を行う事で、食害性昆虫の被害が軽減される可能性があることが見えてきます。
更にもう一手打てるか考えてみます。
1-オクテン3-オールは脂肪酸のリノール酸から合成されると考えられています。
であれば、生物性が向上した土壌にリノール酸を豊富に含む有機質肥料を与えれば、1-オクテン-3-オールの合成量が増え揮発量も増える事になります。
リノール酸を豊富に含む有機質肥料を挙げてみますと、

米ぬかがあります。
穀類/こめ/[その他]/米ぬか - 07.脂肪酸-脂肪酸総量100g - 食品成分データベース - 文部科学省
生物性を向上させるには、


高吸水性樹脂のEFポリマーを元肥として施肥することが有効である可能性が高いので、廃菌床 + EFポリマー + 米ぬかの構成で施肥することで食害性昆虫の防除に繋がると考えられます。
1-オクテン-3-オールで誘導される抵抗性は一部の糸状菌由来の病気に弱くなる可能性があります。
この点はリン酸の施肥を意識することを勧めていますで記載している通り、リン酸過剰に細心の注意を払えば問題は緩和できますので、上記で挙げた構成に対して、更に意図的にリン酸の施肥をしないといった事をすれば秀品率の向上に繋がります。
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