京都農販日誌
オータムフェス質疑応答 細菌を利用した農薬の作用点について
2019/12/19
農薬のマスターピースは4パターンのうちどれですか?
オータムフェスの質疑応答の回答です。
この質問への返答を始める前に、質問にある4パターンというのが何か?を触れておきます。
オータムフェスのセミナー中に農薬の話をし、
朝倉書店 新版農薬の科学の内容を元に殺菌剤を4パターンに分けて紹介しました。
殺菌剤の4パターンは下記になります。
・有機物からエネルギーを取り出すもしくは活用する過程を阻害して、菌の活性を弱める
・菌体内で発生する老廃物の除去を阻害して、体内に毒物を溜め込ませ活性を弱める
・作物の免疫力の向上に作用し、菌が感染しにくくする
・薬剤が菌に触れることで、菌が溶解して死滅する
※この作用の農薬はほとんどない
※二番目の老廃物という表現は老廃物に限らず、重要な物質であっても代謝が落ちて細胞に溜まって活性が落ちることも含みます。
※各々の項目の実際の農薬名はこの記事中では端折ります。
これらを踏まえた上で質問にあるマスターピース水和剤が殺菌剤のどのパターンになるのか?を考えてみます。
マスターピース水和剤 - 株式会社ニッソーグリーンのページを開き、有効成分を確認してみると、
有効成分はシュードモナス ロデシア HAI-0804株と記載されていました。
シュードモナスは細菌の一種なので、作物に細菌をふりかけることで何らかの効果を発揮する農薬であるみたいです。
それでは実際にどのような効果を期待できるのか?を見てみると、
バイオフィルム形成能力がある微生物で、植物の負傷箇所を効果的に保護します
と記載されていました。
バイオフィルムというのは同種の細菌がある一定以上集まると、他の細菌が入れなかったり、薬剤を浸透させないようにしたりといったバリアみたいなものを形成します。
マスターピースに含まれる細菌は作物には毒性のないものを選抜しているので、予防的な意味合いではやめに散布することで他の病原性の細菌の侵入を阻止する効果が期待できそうです。
4パターンの中では少し意味合いが異なりますが、
作物の免疫力の向上に作用し、菌が感染しにくくする
のような作用の農薬であると言えます。
余談ですが、予防を目的とした農薬を使用する場合は、事前に
アミノ酸や微量要素の葉面散布剤で作物を健全に育てておくことが大事になります。