京都農販日誌

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欠乏症診断で最初に覚えるべき内容の移行性について

2022/05/31

病気を含む栽培の不調の大半欠乏症に依るもので、欠乏症の診断が適切にできれば病気にかかりにくく、食害線昆虫による被害も減り農薬の使用量を減らして利益率の高い栽培を行う事ができるようになりますが、欠乏症診断はたくさん見て教科書の写真と照らし合わせて判定の経験値を積むといった丸暗記の要素が強いです。

この丸暗記的な要素を減らす為の知見を整理します。



これから不調になりそうなトマトの話題がありましたので、この株を教材として話を整理します。

この株を見てすぐに気になる点は、




下位葉の縁の萎れ部分的に葉が黄色くなりかけていることと、




先端に向かって茎が太くなっている箇所でしょうか。

後者は欠乏ではなく窒素過剰症と判断されるものなのですが不調には変わりないので挙げておきます。


ここで最も注目したいのが、

前者の下位葉の縁の萎れと部分的な黄化です。

これはおそらくカリウム欠乏と判断される症状です。

カリウムは根肥と言われ、欠乏した際の症状は、初期は縁が萎れ、徐々に黄化が見られるようになります。

※窒素過剰の時に土壌中にカリウムが十分量あったとしても、カリウム欠乏のような症状になることがあります。




欠乏症の診断を行う際に最も重要となる考え方として移行性というものがあります。

肥料の要素としては、窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)等の微量要素があり、各々の要素で株のどの部位に欠乏症が現れるかが決まっています。


移行性というのは、欠乏した際に再利用できるか?の指標で、葉を緑色にするために必要なマグネシウムを例にして、

根から吸収できるマグネシウムが不足した場合、下位葉の葉緑素を分解してマグネシウムを取り出し、新しい葉にマグネシウムを送ります。

このように下位葉から要素を取り出し上の葉に送ることを移行性と呼び、移行性の高い要素は下位葉に欠乏症が現れます。

カルシウム等の移行性が低い要素は上位葉に欠乏症の症状が現れます。

※マグネシウム欠乏の場合は葉全体が黄化しますが、葉脈の緑が残ります。


移行性ですが、有り難いことに目立った症状は窒素、リン酸、カリウムとマグネシウムのみ顕著に現れるとなっていまして、カリウムにはカリウム欠乏以外のもっと重要な情報を含んでいるので、とりあえずカリウム欠乏のみ抑えておけば解決できる事が多いです。




先程記載した肥料の要素を改めて見てみると、カリウムやマグネシウムの他に鉄、マンガンや亜鉛といった金属になっています。

これらの金属系の肥料要素は



土壌を構成する鉱物から溶脱してくるものが大半です。

栽培の教科書を開くと、カリウム欠乏は土壌中の鉱物や川からの入水時にふんだんに入っているのでカリウム欠乏が不足することはありませんと記載されている事が多いです。


なので、カリウム欠乏が発生した場合は、土の劣化で金属系の肥料分を供給する鉱物がなくなったか、根が障害を受けて養分の吸収がうまくいっていない事が考えられます。

どちらも同様の問題になりますが、根からの水と養分の吸収に問題があると、連鎖的に他の金属系の肥料成分も同時に吸収できなくなり、株の弱体化を誘発します。


微量要素の中には鉄やマンガンといった光合成の質を向上させるものや、銅や亜鉛といった免疫に関与するものがあり、カリウム欠乏から農薬の使用量が増えるのに秀品率が下がるといった問題が生じます。


上記の問題はどちらも土作りが上手くいっていない時に生じるものなので、カリウム欠乏を見かけたら、カリウムだけが不足していると捉えずに、土壌の物理性・化学性の向上に注力を注ぐようにした方が良いです。


梅雨時期の大雨対策の記事でも記載しましたが、土作りの際に家畜糞を用いるのは厳禁です。

家畜糞には根痛みの原因となるガスを発生させる成分が豊富に含まれ、根痛みの他に発根自体を抑制することもあり、土にカリウムが十分量あったとしても、根が水や養分が吸えずにカリウム欠乏のような症状になることもあります。

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