京都農販日誌
沖縄の土壌と栽培について
2023/04/18
沖縄の作物栽培に関して興味深い話題があります。
※画像:内閣府 沖縄総合事務局 - 沖縄の自然環境 3.土壌より引用
沖縄本島で南部(低島)では
琉球石灰岩由来の暗赤色土の島尻マージ、
石灰岩の影響を受けた泥岩由来のジャーガルがあり、どちらも日本国内では珍しい弱アルカリ性の土質になります。
一方、北部(高島)では、
砂岩泥岩由来の国頭マージ(一部、緑色片岩などの堆積岩由来の土)があり、酸性の土壌になります。
狭い範囲で真逆の特徴を持つ土があるのは珍しく、土質に合わせて栽培される作物が異なる事が大変興味深いです。
例えば、低島では弱アルカリ性土壌で健全に生育できるサトウキビの栽培が盛ん(特に栄養分に富んだジャーガル)で、
高島では酸性土壌を得意とするパイナップルやチャの栽培が盛んであるそうです。
日本は酸性土壌の傾向が強いので、高島のような酸性土壌の話題は多いですが、低島のような弱アルカリ性土壌での栽培ではどのようなことを意識しなければならないのでしょうか?
サトウキビの栽培の知見と合わせて弱アルカリ性の土壌の栽培方法を考えていきます。
弱アルカリ性の土で意識すべき点は慢性的な石灰過剰でしょうか。
沖縄に限らず、本土のトマトの施設栽培でも石灰過剰は深刻で栽培の難易度を高めるとされていますが、石灰過剰の何が問題なのでしょうか?
石灰過剰であると作物の根で石灰以外の様々な養分(苦土等)の吸収が阻害されて生理障害が発生します。
中でも深刻なのが、鉄の吸収阻害でしょうか。
鉄は光合成で得られたエネルギーを株の至る箇所に運搬するために用いられたり、病原菌からの感染の防御として用いられます。
この石灰過剰による鉄不足に陥りやすい環境で、鉄を効率的に吸収できると言われている作物があります。
その作物というのが、
イネ科のサトウキビだと言われています
サトウキビの根から分泌されるムギネ酸という物質により、弱アルカリ性土壌でも適切に鉄が吸収できるそうです。
植物や動物でのムギネ酸類による鉄吸収のしくみ | 公益財団法人サントリー生命科学財団
鉄欠乏に関するおすすめの読み物:植物における鉄吸収 - 新しい植物栄養学入門 - タキイ種苗
低島の土壌は石灰過剰ではありますが、他のミネラル分も豊富で、サトウキビの栽培に適している事になります。
一方、パイナップルやチャはサトウキビ程、鉄の吸収が得意ではないかもしれません。
高島の方のヤンバルで興味深い話を聞きました。
酸性土壌の国頭マージではサトウキビの生育がよろしくないので、低島(那覇市の方)で出てきた土砂(ジャーガル)を客土する事でサトウキビの生育が劇的に良くなったそうです。
沖縄には興味深い知見がたくさんありました。