京都農販日誌
発酵肥料の肥効について
2023/12/08
発酵肥料で栽培した野菜や果物は何故美味しくなるのか?という話題があり、色々と調べてみましたところ、興味深い研究結果がありましたので、今回はその内容を紹介します。
発酵肥料で真先に思いつくのが、米ぬかを嫌気環境で発酵させたボカシ肥料や
※上の写真の左が発酵前の米ぬかで右が嫌気発酵させた米ぬか
※良質な米ぬかの嫌気ボカシ肥料は甘い香りがします。
落ち葉や食品残渣などを山積みして、定期的に撹拌させて熟成した堆肥等があります。
廃菌床等もキノコ菌によって植物の繊維質が分解されているので、一種の発酵肥料と言えます。
最初に挙げた米ぬかボカシ肥料でよく見聞きすることとして、米ぬかに含まれる有機態窒素が発酵に関与した微生物の働きによって、吸収しやすい窒素(アミノ酸態窒素等)まで分解された事により、肥効が無機窒素より穏やかで、有機態窒素よりははやく効くといった説明があります。
※リン酸や微量要素もフィチン酸の観点から良く効くようになります。
発酵肥料で注目すべきはおそらくそれだけではなくて、微生物の働きによりビタミンが増えることも忘れてはなりません。
そこで植物 + ビタミンの切り口で検索をしてみましたところ、植物にビタミンB3ことナイアシンを与えたら、乾燥耐性を得たという研究報告がありました。
植物の乾燥耐性とバイオマス生産性を高める化合物を発見-農作物を乾燥に強くする肥料や技術の開発に貢献-(大学院理工学研究科 川合真紀教授 共同研究) - 埼玉大学
研究ではシロイヌナズナにナイアシンを与えていましたが、植物体内での反応を見る限り、一般的な作物でも十分有り得そうな内容であり、乾燥耐性は品質に直結する要素であるため、発酵肥料で食味が向上する可能性は十分有り得そうです。
他にビタミンではありませんが、リン酸欠乏中の植物にホスホコリンを与えたら発根に影響を与えたという研究報告もありました。
こちらの研究もシロイヌナズナにホスホコリンを与えていましたが、ナイアシン同様、一般的な作物でも肥効は十分有り得ます。
ホスホコリンというのは、ビタミンのような働きのある栄養素とされていて、卵や大豆に多く含まれていると言われますが、微生物の細胞膜にも用いられていて、微生物が増殖することに合わせて増加します。
もしかしたら、発酵の過程によって増加した他の要素でも成長を増強させる何かがあるかもしれません。
発酵肥料にはまだ見ぬ可能性が詰まっていることは間違いありません。
余談ですが、植物の新たな干ばつストレス応答機構を発見―「見えない干ばつ」を克服し、作物の大幅増収への道を切り拓く― | 国際農研で、ダイズが干ばつになるかどうかの乾燥を受けるとリン酸欠乏の状態になるという報告がありまして、今回紹介したホスホコリンが植物の受ける乾燥ストレスを緩和してくれるかもしれません。