お役立ち農業辞書
植物の生理から見たトマトの芽かき
家庭菜園などの本でトマトの育て方を調べると必ず出てくる「脇芽かき」ですが,
なぜ脇芽を取らないといけないのか。
一般的に言われているのが,脇芽をそのまま放置してしまうと,
・脇芽を伸ばすことに養分を取られてしまい実が育たない
・脇芽の葉や茎が茂りすぎて,日当たりや風通しが悪くなる
などがあります。
ここではもう一歩踏み込んで,植物の生理から見たトマトの芽かきをする理由を考えます。
植物は頂点から脇芽の発生を抑制する物質(オーキシン)を出しています。
この脇芽の発生を抑制する物質は上から下に向かって流れ,
根に到達すると今度は側根の発根促進に作用します。
矢印:側根
もし,いくつもの脇芽を放置してその数だけの頂点が増えると,
側根の発根を促進する物質もその分多くなり,比例して側根も増えるということになります。
側根が増えると,養分もそれだけ吸うようになり,結果,樹ボケしやすくなってしまいます。
側根の発根を抑える,これが植物の生態から見た芽かきをする理由の一つです。
ちなみに下図はお客様のトマトの樹ですが,こんなに茎が細くても軽く10段(花房が)以上,
とてもおいしいトマトを収穫されています。
樹ボケをしやすいトマトですが,肥料管理と芽かきによる側根発根抑制によって樹勢のコントロールをしているのです。
他の作物でも,芽かきをする際は樹勢や実付きなどを見ながら,プラス,
見えない根のことも想像しながら行うと,より良い生育が得られるようになるのではないでしょうか。