京都農販日誌
ハウス内の塩類集積対策について
2020/01/22
塩類集積しているハウスでどのように対処すれば良いか?という話題になりました。
先に塩類集積について整理しておくと、
EC過剰の結果について、、の記事で触れている通り、土壌表層に塩(えん)がたまり、極端な状態では土表面が白っぽくなる現象です。
※晴天の日に白い粉が見やすいです。雨の日では白い粉が見えないことがあります。
土壌分析の結果を見ると、ECが異常に高く、石灰、リン酸とカリも過剰になっている状態であることが多く、この状態で水を与えても、塩(えん)の方が水を吸ってしまい、作物の根に水が到達せず、株が弱ってしまいます。
塩類集積が発生している土壌で無理やり栽培をしても、追肥や農薬で経費が上がる割に秀品率が低い、もしくはまったく収穫できないという状態に陥り、経営的に非常に不利な状態になります。(最悪の場合、収入がなくなり倒産します。)
塩類集積は土の腐植量が足りず、物理性が悪い状態で、塩(えん)を大量に含む家畜糞等を元肥で使用し続けた場合に発生します。
塩(えん)にはどのようなものがあるかというと、家畜糞に大量に含まれる硝酸態窒素の残留物である硝酸根(こん)、即効性の肥料(硫安や硫酸苦土)等に含まれる硫酸根(こん)や海水が入り込んでしまった際や家畜糞に含まれる塩酸根(塩素イオン)があります。
これらの塩(えん)は水溶性で、大量にある場合は水を吸水するという特徴があるため、本来作物に与えようと思っていたのに、塩(えん)の方が水を奪ってしまう。
水に含まれている養分も作物の根に到達しないということで株が弱ってしまうという現象に陥ります。
この塩類集積が発生したハウスではどのような対策をとれば良いのか?を考えてみます。
塩類集積の問題を解決する一番の手は土表層に溜まった塩(えん)を除塩することです。
水に溶けやすいという特徴を利用して、ハウス全体を潅水して、その水をハウスの外に流し出せば塩類集積は軽減されます。
しかし、この問題は大きな労力を要しますが、塩類が溜まりやすいという状態は解決しません。
他の手として、
緑肥に土から塩(えん)を吸ってもらうという手があります。
他の緑肥の効果である物理性の向上も塩類集積の解決に貢献します。
緑肥の種類は土から貪欲に養分を吸収するイネ科のソルゴーあたりを選択すると良いです。
しかし、緑肥にも塩類集積が発生している土壌で無事に発芽するのか?
硝酸根は吸収できるけれども、硫酸根や塩酸塩は吸収できないという問題があります。
ここで塩類集積の環境で緑肥を育てる為に一つ工夫を入れます。
植物性の堆肥を土に混ぜて、土に空隙を増やした状態でスプリンクラで散水して、塩(えん)を土の表層から深いところに移行させた上で緑肥のタネを播種します。
塩類集積は土の有機物が極端に少ない状態で発生しているので、緑肥を育てる前は植物性の有機物は大量に欲しいです。
剪定枝や落ち葉が豊富に手に入るのであれば、これらを大量に入れるという手もありです。
ただし一点程注意が必要で、未熟な木質資材の場合は土の空隙が極端に増えて乾燥しやすくなります。緑肥のタネを播種する時は発芽してある程度育つまで毎日散水する必要があります。
緑肥が無事育ったら、花が咲く前に刈倒して鋤き込みます。
緑肥が土の余分な成分を吸収したのに、株を刈倒して鋤き込んだら成分は土に戻って意味がないのでは?という質問があります。
緑肥は土壌中の過剰な養分を吸収したら、その養分を元に体を作ります。その物質は土に還ると腐植の材料として役立ちます。
緑肥を育てる為のスプリンクラーは
ハンガースプレーがオススメです。
ハンガースプレーセットは塩類集積問題の解決後の栽培でも有効で引き続き利用できます。
塩類集積問題に取り掛かる前に下記の記事の熟読をオススメします。
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