京都農販日誌
ネギ作の間に行う稲作の効果を高めるには
2022/10/22
ネギの栽培が不調になった畑で、
ネギ作の間に稲作を行いネギ作の不調を改善するという手法があります。
稲作時の潅水でネギ作の時に溜まった悪影響を与える成分を溶かして排出することでネギ作の栽培の改善を行うことを狙っていますが、最近は間に稲作を行っても期待した効果が発揮しなくなったそうです。
問題を整理しながら解決策を探ることにしましょう。
ネギ作が不調になる要因を挙げてみると、
・ネギに対する病原性のカビが優勢になっている
・リン酸過剰(カビ由来の病気が多発する可能性あり)
・ガス発生要因(水溶性肥料)の残留
・カルシウム(石灰)過剰
・土の劣化で金属系の肥料(カリ、マンガンや亜鉛等)
・土壌の有機物が不足している
があります。
この要因に対して、稲作の潅水で期待出来る効果を考えてみると、稲作ではリン酸が溶解しやすいということなのでリン酸過剰は解決出来る可能性があります。
※エッセンシャル 土壌微生物学 作物生産のための基礎 - 講談社 101ページより
ガス発生要因は栽培後半で使用する水溶性肥料や家畜糞、意識が向きにくいですが、
ロング肥料にある硫黄コートの肥料の殻が該当し、経験則になりますが潅水をすることで抜けるということは難しく、老朽化水田を誘発して次作以降の鉄欠乏が発生しやすくなります。
※鉄欠乏は光合成に影響します
カルシウム過剰に関しては、蓄積しやすいカルシウムの形状が炭酸石灰なので田に入水する水のpHでは劇的に改善するということは難しそうです。
※塩類集積の原因になる硝酸石灰や硫酸石灰は潅水によって量を減らせるかもしれません
※リン酸石灰は上記のリン溶解菌によって量を減らせるかもしれません
残りの土壌鉱物の劣化や有機物不足は稲作後のネギ作時の施肥設計でどうにかなりますが、ここで稲作のもつポテンシャルについて触れておきます。
年々増える猛暑日対策として、中干し無しの稲作に注目していますの記事で、稲作には
・田に入水する水に肥料分が含まれている
・潅水で酸素を遮断するので、田の底に有機物が蓄積しやすい
・酸化還元電位(Eh)が下がる(今回は触れません)
という特徴があります。
前者の水に含まれる肥料分は上流域にある鉱物から溶脱したもので、先程のネギ作の不調の原因の土壌の劣化と合致します。
ネギ作の間の稲作でこの特徴を無下にするのは勿体ないです。
田の底に有機物が蓄積しやすいというのも、
ネギ作ではマルチを利用することが多く、マルチは有機物の消耗を早めるのでネギ作のみでは有機物が溜まりにくいですが、稲作時の有機物が蓄積しやすい状況をフル活用して有機物を大量に蓄積するのは有効な手になります。
興味深いことに、稲作でも有機物を積極的に蓄積するとガス発生要因の除去にも有効になりつつ、田の入水時に得られる肥料分の保肥に対しても有効です。
であれば、
ネギ作の間に行う稲作の効果を高めるためにすべきこととして、腐植質(有機物と同義)の堆肥を仕込んでおくことが考えられます。
ここで生じる不安に腐植質の堆肥をいつ頃にどれくらい使用すれば良いか?になりますが、レンゲ米等の栽培の知見から田起こしの1ヶ月前あたりには堆肥を入れておき、量は次作のネギ作で使用予定量の50%以上だとアタリを付けています。
稲作のデメリットになりますが、稲作後のネギ作では稲作時に水と一緒に粘土鉱物も流入して土が締まりやすくなっていますので、気持ち多めに腐植質の堆肥を入れておくと良いでしょう。
腐植堆肥でおすすめなのは、
ハイブリットORGです。
マッシュORGは腐植以外にリン酸を含む米ぬか等が含まれていますので、今回の用途に合いません。