京都農販日誌

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緑肥で土壌分析の値にどれ程の影響があるかの試験栽培を行っています

2023/02/13


緑肥を栽培することで、土壌分析の数値にどれ程の影響を与えるか?の検証の試験栽培を行いました。


栽培品目はイネ科のソルゴーになります。

時期は5月下旬〜7月下旬まで

緑肥の栽培の前に物理性の改善の為にハイブリットORG + 地力薬師の施肥を行っています。

栽培の終了時期は開花前で終了後は株の持ち出しは行わずに刈り倒して鋤き込んでいます。


緑肥栽培前に施肥を行ったり、緑肥を鋤き込むと土壌分析で過剰だった成分の改善は行われないのでは?という疑問が生じるかもしれませんが、理由については後ほど記載します。




これから土壌分析の結果を見ていきます。



5月下旬の分析の結果になります。



こちらは緑肥の播種前に行ったハイブリットORG + 地力薬師の施肥後の分析の結果になります。

どちらもCECを高める資材になり、分析結果でもCECが若干高くなっていることがわかります。



こちらは約2ヶ月の栽培期間を経て、緑肥を鋤き込んだ後に測定した結果になります。

同様の試験を他に2箇所の計3箇所で行いましたが、どこも同じような結果になっています。


緑肥を鋤き込むことにより、CEC(保肥力)が改善され、塩基性の成分(石灰、苦土とカリ)が相対的に減少し、塩基飽和度が下がっています。

リン酸の値には特に違いがありませんでしたが、グラフでは出ていませんが、どの箇所でもリン酸吸収係数が下がるといったことが見られました。


リン酸吸収係数は土壌中にリン酸を固定化して肥効を無効にしてしまう要素がどれ程あるか?の指標になるのですが、緑肥を育てて鋤き込むことにより、リン酸の肥効の効率が高まったことがわかります。

リン酸吸収係数は活性アルミナの量に影響を受けるため、おそらくですが、土壌の有機物量が増えたことにより、アルミナと有機物が結合してCECの改善要因になったものだと思われます。




緑肥栽培で土壌改良材を施肥したり、緑肥の持ち出しを行わなかった理由ですが、緑肥の目的は緑肥の根による過剰要素の吸収や物理性の改善が主ですが、どちらも緑肥の発根が促進されることで効果が高くなります。



緑肥は連作による土壌の劣化を改善する時に用いることが多いのですが、土壌の劣化のままで緑肥を育てても環境ストレスで根がうまく生えてくれません。

過剰成分の吸い上げを目的とした栽培であっても、播種前に土壌改良材を施肥しておいた方が良いことになります。


続いて緑肥の鋤き込みの理由ですが、緑肥の目的が過剰成分の吸い上げと畑の外に持ち出しであっても、それ以上にCECを高めておく方が価値が大きいからになります。

リン酸以外の石灰等の成分は、土壌が劣化している、他の言い方をするとCECが低い時に飽和していて過剰な状態になっているということが多々あり、CECを高めると受け皿が増え過剰でなくなるということが多々あります。

今回の結果でも、過剰成分を吸収した緑肥をそのまま鋤き込みましたが、塩基飽和度が下がっているのは、CECの向上に拠るものでしょう。


リン酸に関しては、値は増えたように見えますが、リン酸吸収係数が下がっていますので、次作でリン酸の施肥を控えても、深刻なリン酸欠乏にはなりにくいと期待できます。




緑肥を育てて鋤き込むことでリン酸の効きが良くなる話ですが、下記のようなことが考えられます。

難吸収性のアルミニウム型リン酸やフィチン酸は土壌の微生物の働きにより、リン酸イオンとして水に溶けて植物にとって利用しやすい形になります。

※フィチン酸に関してはリン酸無しの基肥の試験栽培を行っていますの記事に記載があります。


アルミニウム型リン酸の方ですが、アルミニウムイオンとリン酸イオンに分かれた後にアルミニウムイオンの方が土壌の有機物(根表面の老廃物等)と結合して、団粒構造のような土壌粒子の基となり、リン酸はアルミニウム以外の金属イオンと結合して、栽培時に植物が根酸で利用が簡単な状態や、微生物にリン酸が取り込まれ、速効性の有機態リン酸に変わった後の一部が土に残ります。

上記の反応はCECが高くなりつつ、難溶性のリン酸を水溶性かく溶性のリン酸に変わったことを意味します。

根の先端を保護する細胞が自ら剥がれ落ちる仕組みを解明、細胞壁を分解する酵素と調節因子を発見 ~植物の成長力増進や土壌環境の改善に期待~|奈良先端科学技術大学院大学

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