京都農販日誌

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国頭マージで土壌改良を考える

2023/04/17


国頭マージで栽培されている方から土壌改良はどのようにすれば良いか?という質問がありました。

バガスを使用しているが、土が良くなったという実感がないそうで、バガスの効果についても合わせて質問がありました。



先にバガスについて触れておきます。




サトウキビの茎を圧搾した際に発生した絞り粕になりまして、主成分は植物繊維(セルロース等)になります。

バガスは紙の製造や燃料に使われていますが、肥料の利用としても使用しています。


冒頭の話題にありますバガスでは土壌改良ができるのか?の疑問に関しての内容を整理します。




以下の内容は予想になりますので、その点を了承した上で読み進めてください。


バガスには土壌改良の効果はないと考えています。

土壌改良で意識すべき点としまして、一般的に物理性・化学性・生物性の改善を視野に入れます。

物理性は主に排水性と保水性になり、化学性は緩衝性(pHが変動しにくくなる)と保肥力(CEC)、生物性は病原性微生物が活発化しない環境作りになりまして、物理性 → 化学性 → 生物性の順に改善していく必要があります。

物理性が向上していない段階で生物性を向上させようとしても、有用な微生物が増殖できる環境ではないので意図した結果になりません。

微生物資材に頼る前に意識してほしいこと




バガスの物理性の向上の効果を考えてみます。

土の物理性の向上にとって効果的なものが腐植酸であると考えられています。

腐植酸について記載すると長くなりますので、興味がある方は腐植質の肥料を活用する前に腐植について整理しようを読んで頂くとして、


図:藤嶽暢英 土・水環境に遍在するフミン物質の構造化学的特徴とその多様性 学術の動向 2016.2 51ページより引用


腐植酸はベンゼン環(六角形の炭素化合物)を多く持つ有機酸になります。

腐植酸は粘土鉱物(特に2:1型粘土鉱物)と結合する事で土を形成していきます。


話はバガスに戻りまして、バガスには土を形成する腐植酸を多く含んでいるか?という疑問に対して、おそらく含んでないという返答になるかと思います。

であれば、バガスには物理性の改善は期待できず、バガスの土壌改良の効果は低いということになります。




もう一つの観点から土作りを見ていきたいと思います。

沖縄の土の土壌改良を考える前にの記事で、沖縄の気候と土壌の特徴から有機物が蓄積しにくいということを記載しました。

沖縄の亜熱帯の気候と、粘土鉱物による有機物の保護の無さから、土に施したバガスは土壌の微生物によるすぐに消費されると考えられます。


微生物による分解がなかなかされない有機物を考えてみますと、木の剪定により発生した枝葉あたりが該当します。

※枝葉にはベンゼン環を含む化合物が豊富に含まれています。


土に枝葉を速やかに定着させる術があれば、沖縄での栽培が優位になるかもしれません。





国頭マージの畑でバガスを入れていた所で旺盛になっていた草を見かけました。

おそらくですが、マメ科のウマゴヤシの可能性が高そうです。


沖縄とウマゴヤシで検索をしてみましたところ、ウマゴヤシが江戸時代に牧草として導入されたという記事がヒットしました。

牧草として導入 肥料にも|マメ科「ウマゴヤシ」|身近で見られる帰化植物①|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン


ウマゴヤシが当てはまるかわかりませんが、マメ科牧草(緑肥)といえば、山積みした剪定枝の上で発芽して、木質の成分の分解が促進(土に馴染みやすくなる)されます。

国頭マージの土作りでウマゴヤシに着目すると栽培が楽になるかもしれません。


可能であれば、ウマゴヤシ+剪定枝の栽培時に地力薬師のような2:1型粘土鉱物が欲しいのですが、本土から離れている沖縄では難しそうです。

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