京都農販日誌

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石灰過剰問題について

2023/10/03

2020年から絶滅危惧植物の全国調査をしつつ、新種の植物を多数発見した矢原徹一氏のインタビューを見ていて、興味深い内容がありましたので挙げておきます。


※写真は石灰岩帯で有名な山口県の秋吉台

秋吉台 | 特設ページ


矢原氏は地質が石灰岩質の地域でよく新種を発見したと発言していました。

石灰岩を母岩とする地質では多くの植物にとって過酷な環境であり、その環境に適応した種が現れたのではないかと


この話は栽培にも通じるものがありまして、石灰岩質の地域での栽培は難易度が高いと言われています。

なぜ石灰岩質の地域では栽培が難しくなるのでしょうか?

今回は石灰と土について考えてみたいと思います。





はじめに石灰岩について触れておきます。

石灰岩はサンゴ礁等の炭酸石灰の殻をまとう生物が海底に堆積して堆積岩となったものです。

地震による隆起により地表に現れます。

※詳細は3億5000万年前からの地球と生命の記憶をめぐろう!! - Mine秋吉台ジオパーク(PDF)にイラスト付きの記載があります。


炭酸石灰は栽培者にとって馴染み深い、栽培前に土壌のpHの調整の為に施肥する石灰のことです。

石灰岩帯の地域の田畑の土壌ではpHの調整に用いる石灰が最初から大量にあります。


石灰岩帯の環境がどのようなものかをイメージする為に、田畑の土壌分析を例に挙げて見ていきます。



石灰岩帯の田畑の土では一般的にpHと石灰の値が高い傾向があります。

上記二点で生じる栽培上の弊害としまして、


土壌pH・ECの診断 - 農林水産省より引用


土壌のpHが高いことで、鉄やマンガンといった光合成時に得られたエネルギーの運搬や亜鉛といった耐性に関与する微量要素の吸収が低下します。


土壌の基礎知識 Ⅰ - 農林水産省 15ページより引用


石灰(カルシウム)が過剰であると、マグネシウムやカリウム(根肥)の吸収の低下に繋がり、吸水力が低下して水と水に溶けている肥料の吸収が落ち弱体化します。

石灰過剰の土は土が固くなり物理性も低下します。


上記の二点から石灰岩帯では植物は水や養分吸収で大きなストレスを感じるので、過酷な環境と捉えて良いでしょう。

作物も植物ですので、石灰岩帯の田畑では栽培難易度が高いことになります。




上記で示した土壌分析の結果を見て、石灰岩帯でない畑でも同様の結果を見たことがあると思ったかもしれません。

実際のところ、様々な畑の土壌分析を見てきて、石灰過剰の結果を多く見てきました。




雨が入らず、塩類が集積しやすいハウスでの栽培でよく見かけます。

露地栽培でも家畜糞主体の土作りをしているところで良く見かけます。



石灰は安価で入手出来る家畜糞等によく含まれています。

石灰が含まれているという自覚のもと家畜糞を使用していれば、pH調整の為に石灰施肥をすることを控えますが、自覚なく土壌改良材として大量に使用した場合、知らない内に土壌に石灰が蓄積していきます。


pH調整の石灰はく溶性に分類され、降雨では畑からなかなか抜けてくれません。

※く溶性の肥料とは、水には溶けにくく、5%クエン酸溶液で溶けて肥効を示します。


石灰を特に意識せずに慣習的に施肥している畑も石灰岩帯の環境に似たようなものになり、作物にとって過酷な環境であると言えます。



トマト栽培等の原因不明な不調を見かけた時は、石灰の量を減らしてみたり、クエン酸溶液の散布で土壌の石灰の量を減らして石灰過剰の環境を脱却してみると解決するかもしれません。


余談

土壌の特殊な環境として石灰岩帯の他に蛇紋岩帯があります。

蛇紋岩帯の田畑の特徴は、高いpHと苦土(マグネシウム)過剰になる傾向があります。

藤川和美 高知県の蛇紋岩地の植物と高知県立牧野植物園 - 地質学雑誌 第112巻 補遺,161~168ページ,2006年9月


栽培している田畑の地質が何であるかを把握したい場合は、日本シームレス地質図v2をご確認ください。


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