
京都農販日誌
ビール酵母から作られた肥料の使い所:還元反応
2026/02/11

セルエナジーというバイオスティミュラント資材的な位置付けの面白い肥効を持った肥料があります。
セルエナジーはビール酵母を水熱処理という反応を経て酵母の細胞壁であるβ-グルカンを断片化した肥料になりまして、主な肥効は還元反応により土壌のリン酸や微量要素の吸収を促進したり、作物が環境から日々受け続けているストレスを軽減するというものになります。
明記はされていませんが、ビール酵母の細胞壁を断片化しているので、酵母に含まれていた内容物(ミネラル)等も有効成分として含まれている可能性が高く、微量要素剤としての肥効の可能性もあります。
この肥料の肥効に関しまして、具体的な使い所は何処なのか?という話題が挙がりまして、今回はセルエナジーの効果の一つである還元反応の方の使い所について見ていくことにします。

微量要素でマンガン(Mn)という成分があります。
植物体内でのマンガンの主な働きは光合成で葉が太陽光を受光した時に、太陽光から得られたエネルギーを元に光合成を開始する時に重要な要素になります。
このマンガンですが、植物が根からマンガンを吸収する時に不可給態のマンガンを可給態のマンガンに変えるという反応が必要になりまして、この時に還元反応というものが重要になります。
土壌中のマンガンはMn(Ⅱ)(二価マンガン)、Mn(Ⅲ)(三価マンガン)とMn(Ⅳ)(四価マンガン)のどれかで存在しているとされ、
可給態マンガン:Mn(Ⅱ)
不可給態マンガン:Mn(Ⅲ)やMn(Ⅳ)
になっています。
Mn(Ⅲ)やMn(Ⅳ)は酸化型マンガンとして扱われていて、

常に地表面が酸素に触れている畑作では、マンガンのほとんどが酸化型マンガンという形状で存在していて、植物は酸化型マンガンの形では吸収する事が出来ません。
植物がマンガンを吸収するためには、還元剤というものを用いて、酸化型マンガンであるMn(Ⅳ)から還元型マンガンMn(Ⅱ)に還元して可給態マンガンになってから吸収します。
ここでいう還元剤の一つに断片化したβ-グルカンがあります。
還元反応を経て吸収される他の成分としまして、鉄型リン酸や各種微量要素があります。
余談になりますが、セルエナジーの話題の時にβ-グルカンの他に還元剤と成り得るものはあるか?という質問が挙がりました。
牧野知之著 土壌中におけるマンガンの酸化還元機能と動態 - 農業環境技術研究所報告 第20号(2001)の研究報告にマンガンの還元に関しての詳しい記載がありまして、


米ぬかに含まれる有用成分のうち、抗酸化作用を持つという事でよく見聞きするフェルラ酸や

ブドウ糖等の還元糖と呼ばれる糖が不可給態マンガンを可給態に還元したそうです。
植物の根や土壌の微生物が分泌したシュウ酸によりマンガンを吸収するという報告もあります。
※土壌マンガンの可給態化と植物のマンガン吸収に対する過酸化水素の効果 - 日本土壌肥料学会講演要旨集 45巻(1999)

マンガンに関しまして、酸化還元電位から家畜糞による土作りを考えるの記事で硝酸態窒素を豊富に含むとされる家畜糞で土作りを行うと、マンガン欠乏を誘発する恐れがあるという内容を記載しました。
硝酸態窒素の代表格の硝酸は、今回触れました還元とは逆の酸化剤としての働きがありまして、マンガンの還元を邪魔してしまうという性質があります。
※詳しくはマンガンの還元よりも先に硝酸が還元されてガス化するという反応になります。
長い間家畜糞を大量に施肥して徐々に不調になってしまった畑で、無機窒素のバランスを整えつつ、微量要素の肥効を高めたい時にビール酵母系の肥料が効果を発揮します。
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