京都農販日誌
オータムフェス質疑応答 粘土質の畑で粘土鉱物系の肥料を使用しても良いか?
2019/12/23
うちの圃場はコテコテの粘土ですが、そこにさらに粘土鉱物系の肥料を入れても大丈夫ですか?
オータムフェスの質疑応答の回答です。
この質問の返答の前に事前にいくつか粘土鉱物系の肥料についてを整理しておきます。
土作りの為に腐植質の肥料を使用する時、日本のほとんどの地域では粘土鉱物系の肥料を併用するよう勧めています。
腐植質肥料と併用を勧めている肥料は2:1型粘土鉱物であるモンモリロナイトになります。
2:1型と呼ばれる粘土鉱物には高い保肥力を持ち、
※農文協 作物はなぜ有機物・難溶解性成分を吸収できるのか 198ページの図を参考にして作成
※Alと書かれているものが粘土で、六角形のものが腐植だとイメージしてください。
粘土の持つ結合力が腐植と強く繋がることで土が形成されると考えられています。
腐植周りについては下記の記事で更に深く触れています。
もう一つ粘土鉱物系の肥料で触れておきたいのは、粘土鉱物肥料といえど、粘土鉱物以外に様々な肥料分を含んでいます。
ここで含まれている成分は普段あまり意識しない微量要素も含まれています。微量要素系の肥料は畑の土を構成する微小な小石から容脱するものが多く、連作で消耗した土ではこの手の成分が少ない傾向にあります。
微量要素が少ないと作物が虫からの食害や病気にかかりやすいという事に繋がりますので、腐植の蓄積 + 微量要素の貯金という効果を狙って粘土鉱物肥料の併用を勧めています。
それでは冒頭の質問にありますコテコテの粘土質の土に粘土鉱物肥料を使用しても良いか?について触れます。
コテコテの粘土質と聞いたらおそらく、
耕した後、トラクタの爪やクワの跡がくっきり残って、乾燥したらカチカチに固まる。塊を手で握っても硬すぎて崩れない。
ということが頭に浮かぶかと思います。
このような粒子が細かくてカチカチに固まるような粘土質の土というのは、
※JA全農 肥料農薬部 施肥診断技術者ハンドブック 2003 32ページより引用
土壌中の主要粘土鉱物でいうところのカオリナイトやイライトといったCECの数値が小さいものだと言われていて、CECが小さいものは腐植との相性が良くない傾向にあるそうです。
一方、粘土鉱物系の肥料として使用するのが、モンモリロナイトやバーミキュライトでどちらもCECが高くなっています。
※他にCECが高いものとしてアロフェンがありますが、これは肥料としては扱われていません。アロフェンに関しては下記の記事に記載があります。
オータムフェス質疑応答 京都には腐植を入れるだけで良い土はありますか?
コテコテの粘土質の土は腐植の蓄積がいまいちな粘土鉱物が多い可能性があると判断出来るので、このような土で秀品率の向上の為に腐植質の肥料を与えても土に定着せずに流れていってしまう可能性があります。
腐植を入れて粘土質の改善の為には、粘土鉱物系の肥料を入れる必要があると言えます。
この時、腐植は気持ち多めに入れると良いでしょう。
※使用量は各肥料のページからダウンロードできるリーフレットに記載があります。
粘土鉱物肥料と併用して使用する腐植については下記の記事をご覧ください。
オータムフェス質疑応答 団粒構造を作りやすい腐植の種類などはありますか?
補足
粘土鉱物系の肥料でベントナイトとゼオライトのどちらが良いか?という質問をよく受けます。
ちなみに今回紹介した地力薬師(モンモリロナイト)はベントナイトに分類されます。
成分は採掘する地域によって異なりますので一概に言えませんが、ベントナイトはCEC低めで微量要素多めであるものが多く、ゼオライトはCEC高めで微量要素少なめという傾向があるみたいです。
肥料としての成績を見ると、粘土鉱物肥料 ≒ CECの高さで評価されることが多いですが、今回の記事の内容にもあります通り、粘土鉱物系の肥料にCEC以外で微量要素の補給にも重きを置いていますので、ベントナイトの方が使い勝手の良い肥料だと判断しています。
追記
粘土鉱物肥料単体での使用は危険です。粘土鉱物系の肥料は風化すると作物に対して毒性を示すアルミニウムが容脱します。粘土鉱物は腐植と結合する事により風化による劣化を避けることが出来ますので、粘土鉱物肥料を守るといった意味合いで腐植の併用が必須になります。