京都農販日誌

京都農販日誌

微生物資材に頼る前に意識してほしいこと

2020/03/28

栽培がうまくいっていない畑で、微生物資材を入れたら改善されますか?という話題が時々挙がります。

大体名前が挙がる微生物資材はバチルス菌や納豆菌(どちらも枯草菌)で、細菌という非常に小さな生物を用いることが多いです。


ここでよく返答している内容が、土作りがしっかり出来ていなければ、微生物資材はお金をドブに捨てるようなものです。微生物資材に頼る前に元肥の設計を見直してください。と伝えています。


何故、土作りよりも先に微生物資材を使うと無駄になりやすいのか?を一つずつ丁寧に見ていくことにします。




微生物に限らず生物が生きる事の前提として、環境が合えば爆発的に増え、環境が合わなければおとなしくなるか消えます。この前提は微生物資材でも同じように言えます。資材だからといって特別にどんな環境でも大丈夫ということはありません。


それでは、枯草菌の得意とする環境を見ていく事にしましょう。

これから始める前提として枯草菌は好気性(酸素を好む)の細菌として扱われていて、中温性で最適生育温度は25〜35℃です。

枯草菌 - Wikipedia


※堀越考雄 二井一禎編著 土壌微生物生態学 朝倉書店 12ページより引用


枯草菌を上の図で土壌細菌に当てはめてみます。

上の図の2次鉱物と記載されているものは粘土鉱物になり、土壌細菌が居る場所を丁寧に見てみると、粘土鉱物付近になります。

※何故粘土鉱物の付近に細菌がいるか?という話は深いので省略します


それでは、



こんな感じのコテコテの粘土質の土壌であれば細菌に適した環境であるか?といえばそうではなく、上の図をもう少し丁寧に見てもらうと、間隙(空気の層)もあることが条件だと読み取ることが出来ます。


これらの内容を整理すると、



粘土鉱物肥料(地力薬師)と腐植(マッシュORG等)や植物性の有機物と合わせて施用し、



粘土鉱物が水を含みコロイド化することで、土壌粒子と有機物をつなぐように中に入り込み、



誰が見ても、フカフカで栽培しやすそうな土になってはじめて、微生物資材の細菌らが快適に生育できる環境になったと言えます。

フカフカの土であれば、空気をふんだんに含み、土が冷たすぎず暑すぎず、枯草菌にとって最適温度の期間が長くなっています。




微生物資材に頼りたくなる時を思い浮かべてみると、



晴れの日が続くと、土表面がひび割れするような土で、栽培が不調な環境です。土壌粒子が細かすぎて、土に空気が行き渡っていない(間隙がない)状態です。

今までの話を踏まえると、この環境は微生物資材にとっては有利な環境では無いということになるので、微生物資材に頼ってもイマイチ、もしくは何も変わらないという事になるのです。


微生物資材に頼りたいと頭に浮かんだら、その前にやるべきことがないだろうか?

この記事を読んで、そう思っていただけるようになれば幸いです。


追記

今回の記事では微生物資材が意味がないということを言いたいわけではありません。微生物資材が効果を発揮すると下記の記事に記載されているようなことが起こる可能性があります。

生育状況の確認と発根促進に関すること


関連記事

団粒構造を作りやすい腐植の種類などはありますか?

ひび割れしている畑ではバークの施用時に必ず地力薬師を併用してください

菌根菌に関して肥料でどこまで出来るか?

一覧に戻る

お問い合わせ

弊社へのご相談・ご質問は
こちらからお問い合わせください。

お問い合わせはこちら