京都農販日誌

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硝酸石灰は元肥で有効ですか?という質問に対して

2020/02/16

硝酸石灰を元肥に使用したら有効ですか?という質問がありましたので、今回はその返答を記載します。

先に結論を記載すると、硝酸石灰は元肥には向いていません

元肥に向いていない理由は2つありますので、これからその理由を記載します。


元肥に適した無機肥料の選定を行う上で大事になる概念として、水への溶けやすさがあります。肥料は水に溶けることによって効くという原理があり、水に溶けなければいつまで経っても効きません。水に溶けやすい肥料は水溶性と記載されることが多く、水に溶けにくい肥料をく溶性や難溶性と記載されます。


水に溶けなければ肥料は効かないのであれば、水に溶けにくい「く溶性」や難溶性は肥料として使えないのではないか?という疑問が生じますが、元肥では水に溶けにくい「く溶性」の理解が重要となります。


く溶性に簡単に触れておくと、水にはほぼ溶けず、く溶性肥料は根酸や生理的酸性肥料によって溶ける肥料になります。

土に仕込んだ時は水に溶けず土壌中にそのまま残り、



植物の根がある程度成長して、作物が欲しいタイミングで少しずつ溶けて効く肥料が「く溶性」肥料になります。

水溶性肥料は栽培者が作物に効かせたいタイミングで効果を発揮する肥料で、く溶性肥料は作物の成長の都合で効く肥料となります。

イメージとしては、水溶性肥料が追肥向きでく溶性肥料は元肥向きと捉えて良いでしょう。




水溶性とく溶性の違いを見た上で、元肥の方に話を戻します。

元肥では初期生育を促進させたいということで栽培者の都合で効かすことが出来る水溶性の肥料を使用したいところですが、二点程問題があります。

一つは降雨によって土壌中の肥料が溶けてどこかに流れてしまい、栽培後期まで肥効を持たすことが出来ないことと、



土壌のEC値を高めるという特徴があります。EC値は水溶性肥料の残量になっていまして、EC値が高いと作物がストレスを感じます。

EC値を高めるとどのような問題になるか?について知りたい方は下記の記事をご覧ください。

ハウス内の塩類集積対策について


これから栽培をはじめるというところで、作物にとってストレスになるような環境にするわけにはいきませんので、元肥には水溶性はできれば避けたいということになります。




次に気になるのは元肥で使用する予定の肥料が水溶性であるかどうか?になりますが、肥料袋に水溶性と記載されていれば良いですが、そうで無い時にどうしてよいか不安になるかと思います。


ここで一つ使いやすい指標を記載しますと、肥料の成分で塩化〇〇、硝酸△△、硫酸××と書かれた肥料は比較的水に溶けやすい性質があります。

一方、炭酸〇〇やリン酸△△と記載された肥料はく溶性の性質があります。

※〇〇、△△や××には石灰や苦土といった肥料成分の名称が入ります。


一例を挙げますと、元肥に苦土(マグネシウム)が有効だと聞いた時に、様々な苦土肥料があります。

有名どころで天然硫酸苦土肥料のキーゼライトがありますが、これは硫酸××の肥料ですので、水溶性の肥料で追肥に向くことになります。

他に苦土石灰の苦土は炭酸苦土肥料になりますので、く溶性で元肥向きになります。


これらの内容を踏まえた上で、冒頭の硝酸石灰は元肥に使えるか?という質問の返答になりますが、これは硝酸△△の肥料になりますので、元肥には向いていないことになります。


余談ですが、



元肥としてよく使用される牛糞等の家畜糞ですが、熟成すればする程、硝酸態窒素の量が増えるという話を聞いたことがあるかと思います。

今回の話を踏まえると、牛糞の大半は硝酸△△の肥料になり、ECを高める水溶性ということになりますので、元肥には向いていない事になります。




ここで一つ疑問が生じるかと思います。

元肥では水溶性の肥料は使用してはいけないのか?という疑問ですが、水溶性をほぼゼロにすると初期生育は期待したものにならないということになります。元肥に水溶性の肥料をどれくらい含めるか?という問題に関して、オススメの肥料があります。


ロングマグ - 株式会社京都農販


ロングマグという苦土肥料になりますが、主の苦土がく溶性の苦土になりますが、初期生育の為に少々水溶性の苦土成分も含まれています。EC値をあまり高めず、初期生育から後期まで苦土肥料をバランスよく効かすことが可能となります。


硝酸石灰が元肥には向いていない理由はもう一つありますが、それは次の記事で記載します。


補足

硫酸××肥料といった◯◯酸という名称から土壌に肥料が残った場合の残留性の症状が判断できます。

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