京都農販日誌
菌根菌に関して肥料でどこまで出来るか?
2020/03/03
前回の殺菌剤の使用を見直すことが秀品率の向上に繋がるの記事の続きです。
前回の記事では作物と菌根菌の共生の観点から、虫の被害や病気を減らしつつ秀品率を高める為には、殺菌剤を減らすか使用しないということが重要であることを記載した。
殺菌剤の作用機構のイメージをより明確にすることで、殺菌剤はより効率的に使用できるようになり、殺菌剤による作物のダメージを減らし、それが秀品率の向上へと繋がっていきます。
今回は作物の耐性を増やすという観点で話を進めたいと思います。
菌根菌といっても、目には見えない微生物の話なので、自身の栽培に取り入れることが難しいかと思います。
菌根菌に限らず、微生物資材全般に言えることを記載しておくと、
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各微生物には得意な環境があって、得意な環境であれば爆発的に増殖するけれども、不得意な環境であれば、増殖できないどころか、休眠や自殺することがある。
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高価で有益な微生物資材を購入してきたとしても、使用前に土壌環境を整えていなければお金をドブに捨てる行為になるということを忘れてはいけません。
有益な微生物や病原性の微生物の生態から判断するに、ECを常に低くしつつ、土壌をフカフカにすることを目的としていてば、比較的有益な微生物が増えやすい環境に近づいていると言えます。
上記の環境を目指す上で大事な話は下記の記事に記載があります。
良い菌はどういう環境に集まるか?という観点を元に菌根菌の環境を考えてみたいと思います。
作物と共生すると言われる菌根菌は普遍的に土壌中にいるとされています。
作物は菌根菌と共生するとお互いに優位になると言われているが、共生には双方にそれなりのコストがかかる上、菌の住処が植物の根であるので
作物側で発根が活発な環境であることが大事であることが重要であるはずです。
発根促進に関しては下記の記事に記載があります。
次に菌根菌に関して最近の興味深い研究報告を紹介します。
アーバスキュラー菌根菌の純粋培養に世界で初めて成功~微生物肥料としての大量生産に道~ - 国立研究開発法人 科学技術振興機構
上記の論文の要点は2つで、土壌中に普遍的にいる細菌(バクテリア)や植物油に含まれる脂肪酸を含めて培養すると、菌根菌の増殖が活発になるというものです。
※油分を酵母等の微生物が分解すると上記の脂肪酸になる
上記の研究報告が作物にとっても有効であるか?という論点はありませんが、有効であると仮定して話を進めます。
※図:堀越孝雄、二井一禎編著 土壌微生物生態学 - 朝倉書店 12ページより引用
上の図は土壌構造と微生物のすみかということで、土壌微生物が土壌中でどういうところにいるかをイラスト化したものとなっている。
用語の整理をしておくと、
・菌類の菌糸→菌根菌を含む糸状菌の菌糸
・1次鉱物→粘土鉱物ではない鉱物
・2次鉱物→粘土鉱物
となっている。
ここで注目したいのは、菌糸は土壌の間隙(≒気層)にいて、細菌は粘土鉱物や植物の根の近くにいることになっている。
上記の研究報告と合わせると、粘土鉱物と腐植が土に馴染んでいるところで菌根菌が活発になる可能性が高いことが言える。
余談だけれども、
最近生ゴミを土に混ぜる時に2:1型粘土鉱物を一緒に混ぜて経過を観察していたら、
2:1型粘土鉱物→地力薬師
粘土鉱物の持つ吸着性が周辺の有機物や小石を吸着し、粘土鉱物がコロイド化し、
上の写真のように土壌粒子内に粘土鉱物が微細になって入り込み、いずれは粘土鉱物が見えないぐらい小さくなりながら、土壌粒子を接着するように馴染んでいく経過が観察できた。
上の写真の数日後は空気がふんだんに入るような団粒構造のような形を形成していた。
話を戻して、土壌粒子に溶け込んだ粘土鉱物に土壌の細菌が住み着いて、土壌微生物の多様性というものが増す事になる。
話を菌根菌の培養の研究報告に戻して、菌根菌の培養のもう一つの条件の方を見てみる。
もう一つの条件に挙がっていたのが、植物油に豊富に含まれる脂肪酸が菌根菌の増殖にとって重要であるそうだ。
普段の肥料で脂肪酸を豊富に含んでいる肥料は何だろう?と考えてみて浮かんだものが、
米ぬかや油粕等の食品残渣系の有機質肥料があった。
米ぬかという言葉で連想する堆肥として、
キノコの廃菌床由来の堆肥がある。
キノコ栽培を行う時、キノコの餌として米ぬかを添加する。
米ぬかは菌の働きによって分解され、堆肥中にもそれなりの量が残るとされます。
※有益な微生物を米ぬかで活発にしたというイメージ
廃菌床を土に馴染ませるという観点から土作りを始めることが秀品率を高める上での重要な一歩になるかもしれません。
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