京都農販日誌

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土作りをしているレンゲ米栽培の田の田植え前の土の様子

2023/05/26


大阪北部の高槻という地域で昨年の秋のイネの収穫後に土壌改良材を施肥して土作りを行った後にレンゲを栽培し、



稲作時は中干し無しで栽培をしている方がいまして、その方の田を継続的に観察しています。

観察を始めたのが2020年ですので、今年で四作目に入りますが、毎年新たに興味深い現象を見ることが出来、土の奥深さを日々実感しています。


今年も興味深い事がありましたので、その内容を紹介します。





観察をしている方の田は大阪北部の高槻の清水地区にありまして、土の色は上の写真のように灰色の典型的な水田の土の色をしています。


この田で今年新たに見られました現象として、



春の田起こし(レンゲの鋤き込み後に再度耕起)の後、数日後に土の表面が局所的に褐色になることが見られました。

今までも上記の現象は発生していたと思いますが、今年は褐色の箇所が遠くからでもわかる程多くなり目立っていました。


おそらくこれは土に含まれる鉄等の酸化に因るものではないか?と予想しています。

  • ・褐色化が目立つようになったのは、有機物が大量に蓄積され土のガス交換が活発になったか?
  • ・土壌の鉄の酸化に関与する微生物が活発化したか?

土壌の物理性と化学性が向上したことに因るものだと予想しています。


この土表面の褐色化を見て、稲作と酸化還元電位の記事で記載した内容が頭に浮かびました。

今年は昨年以上に少ないコストで良いものが出来る!と。

年々増える猛暑日対策として、中干し無しの稲作に注目しています


今回の土表面の褐色化を鉄の酸化だとして話を進め、稲作と酸化還元電位の記事を改めて挙げますと、田に水を張った時に生じる現象として

  • 硝酸 → 亜硝酸、一酸化二窒素、窒素ガスやアンモニア
  • マンガン(Ⅳ) → マンガン(Ⅱ)
  • 鉄(Ⅲ) → 鉄(Ⅱ)
  • 硫酸 → 硫化水素
  • 二酸化炭素 → メタン

※参考:エッセンシャル土壌微生物学 作物生産のための基礎 - 講談社 98ページ

の順に還元されるという事がありました。


今回の現象が土壌中の鉄の酸化だとしますと、鉄(Ⅲ)の量が多くなっていることになります。

これは稲作で厄介な硫化水素(根痛みの原因)とメタンが発生しにくくなっている事に繋がり、株が弱体化しにくくなるのでその分だけ農薬の散布量を減らす事が出来ます。


更に水を張って嫌気状態になっている田では鉄(Ⅲ)が鉄(Ⅱ)に還元される時に窒素固定が行われますので、窒素分の肥料の削減に繋がります。

鉄で土を肥やす!低窒素農業 | 広報誌『弥生』 | 東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部


硫化水素が発生しにくいということは、中干しをする必要性も少なくなり、猛暑日の間に田に水を張り続け、株を冷やし続ける事が出来る為、高温障害による株の弱体化も回避出来るようになります。

年々増える猛暑日対策として、中干し無しの稲作に注目しています





土表面が褐色化した田での栽培の注意点は何か?になりますが、土壌中の有機物量が増えている為、田に水を張った際に嫌気環境下で有機物由来のエネルギー(e-)が増え頻繁に還元反応が生じます。



上記のような環境では、窒素分や土作りの一貫として熟成した家畜糞を大量に施肥する事は避けるべきです。

熟成した家畜糞には硝酸態窒素がふんだんに含まれていて、水を張って嫌気環境下になった際に生じた有機物由来の電子により硝酸が還元され、根痛みの原因のガスや強力な温室効果ガスの発生要因となります。

窒素分は鉄の還元により相当量賄うことが出来るという報告がありますので、鉄分を含んだ肥料の肥効に期待しましょう。





個人的な見解になりますが、水稲の肥料として使い捨てカイロが有効ではないかと考えています。

使い捨てカイロは還元された鉄が酸化された際に発生する熱を利用したものになります。

使い終わったカイロは酸化鉄を豊富に含む資源になりますので、稲作の窒素固定と根痛みや温暖化の要因になるガスの発生を抑えます。


使い捨てカイロに人工物が入っているかもしれませんので、念の為に構成成分を調べてみますと、鉄以外にバーミキュライト、活性炭や食塩が含まれているそうです。

使いすてカイロについて - 日本カイロ工業会


栽培で食塩は入れたくないですが、バーミキュライトは2:1型粘土鉱物で有機物の蓄積に有効な鉱物になり、活性炭は土壌の微生物の住処として活躍し、食塩のマイナス分を上回る利点があると期待しています。


窒素以外の肥料の成分に関しましては、年々増える猛暑日対策として、中干し無しの稲作に注目していますの記事をご覧ください。




余談になりますが還元のしやすさの記載で硫酸と硫化水素の記載があります。

硫酸なんて施肥しないので、硫化水素は心配しなくて良いのでは?という事を以前質問されたことがあります。



硫酸は被覆窒素等で利用されています樹脂コーティングが酸化することで生じたり、家畜糞に含まれていたりします。

小柳渉 土壌の塩類集積を低減する家畜ふん堆肥の利用法 - 新潟県農業総合研究所畜産研究センター


硫酸は硫黄として植物にとって必要な成分ではありますが、要求量が低く蓄積しやすい成分です。

被覆コート肥料は便利ではありますが、弊害もあるということを常に意識して使用すると良いです。

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水を張って嫌気環境になった土壌で根痛みの原因の硫化水素が発生した場合、土壌中に鉄(Ⅱ)がある場合は硫化水素と鉄(Ⅱ)が結合して硫化鉄になり無毒化します。

土壌中の鉄(Ⅱ)が尽きますと、硫化水素が作物の根に悪影響を与えて収量が激減します。

上記の症状の事を秋落ちと呼び、



秋落ちしやすくなった水田の事を老朽化水田と呼びます。


秋落ちが生じた田では、米の収穫後に土に空気をしっかりと当てて、硫化水素が発生しにくい環境にした後、客土等で新鮮な鉱物を補充するようにしましょう。

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