京都農販日誌

京都農販日誌

タンニン鉄を利用して秀品率を上げる

2023/07/12

タンニン鉄の有効性についての話題が挙がりましたので、タンニンについて整理してみます。


タンニンといえば、お茶の渋みやワインの風味の成分として時々耳にします。

苦味や渋みの成分として挙がる事が多いですが、そもそもタンニンとは何なのでしょうか?


タンニンの定義をWikipediaから引用しますと、植物に由来し、タンパク質、アルカロイド、金属イオンと反応し強く結合して難溶性の塩を形成する水溶性化合物の総称と記載されています。

タンニン - Wikipediaから引用


上記の内容だとタンニンの事がよくわかりませんので、もう少し詳細を見ていきます。

タンニンには縮合型タンニン加水分解性タンニンがありますが、タンニン鉄として用いられる方は前者の縮合型タンニンが多いので、今回は縮合型のみに絞って話を進めます。




縮合型タンニンの説明を読みますと、フラバノール骨格を持つ化合物が重合と記載されています。

タンニン#化学構造と性質-分類 - Wikipediaより引用


フラバノール骨格という難しい名称がありますが、



Espresso777 - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによるを改変


これはお茶のカテキン



Espresso777 - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによるを改変


ワインのアントシアニジン等のポリフェノールを指します。

※上記で挙げたポリフェノールはフラバノン骨格を持つポリフェノールになり、フラボノイドと呼ばれています。

フラバノン - Wikipedia

フラボノイド - Wikipedia


余談になりますが、人がポリフェノールを摂取した時の健康効果として、体内で発生した活性酸素を除去して様々な不調を予防するものがあります。

上記の作用の事を抗酸化作用と呼びます。




本題に戻りまして、これらのポリフェノールが


Espresso777 - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによるを改変


上の図のように繋がる事を重合と呼び、何個のポリフェノールでできたタンニンか?を示す指標に重合度があります。

重合度が小さい(重合度4付近)タンニンは苦味になり、大きなタンニンは渋みになります。

河出書房新社 新しいワインの科学 350ページ


重合はポリフェノールを含んだ溶液で活性酸素が活性(酸化)して、抗酸化作用(還元)が発揮した時に発生します。

※上記の酸化還元反応を酵素的褐変と呼びます。


タンニンは重合度が大きい程、褐色になるという特徴があり、



カテキンを意図的に重合させて製造する紅茶が絶妙に酵素的褐変を制御している良い例になります。




今までの話からだと、タンニン鉄の材料となるタンニンはお茶やワイン等の嗜好品から得なければならないのか?という事になりますが、身近でタンニンを多く含むものは他にもたくさんあります。



タンニンを豊富に含むものの代表として、落ち葉があります。



個人的な印象では落葉広葉樹の落ち葉にタンニンが多く含まれている傾向があるように思います。

※クヌギやヤシャブシ等


タンニンの量と直結するかわかりませんが下記のような内容があります。


落葉広葉樹は光合成のパフォーマンスを高いものが多く、葉を広葉で薄くすることで葉全体で無駄なく光合成を行う事ができます。

ただ、この構造には欠点がありまして、光合成を行う葉緑素の維持コストが大きいという事があります。


一例を挙げますと光合成時に糖を合成するのと同時に活性酸素が発生してしまいます。

落葉樹の話題ではありませんが、葉で光合成時の活性酸素を発生を抑える為の工夫として、葉にフラボノイド(ポリフェノール)を蓄積する事があります。

紫外線から植物を守る - 有害な紫外線から植物を守る物質と生合成遺伝子を発見 - 千葉大学


落葉広葉樹の葉でも同じ事が起こっていると仮定して話を進めますと、葉にポリフェノールを溜め込む事で太陽光の中の有害な紫外線を反射し活性酸素の発生を抑えます。


樹木の話題として他の昆虫からの食害の防除として葉にタンニンを蓄積するという事がありまして、これらの内容から落葉広葉樹の落ち葉にはタンニンが多く含む事に繋がります。

原 正利 どんぐりの生物学 ブナ科植物の多様性と適応戦略 - 京都大学出版会 170ページ




最後にタンニン鉄について触れます。


タンニンは一般的にpHが低く、キレート化や酸化還元反応に関与する為、落ち葉等から得られた茶色い液体を土壌に散布すると、土壌粒子が何らかの反応を示します。

タンニンが土壌中のリン酸鉄等に作用して、リン酸の肥効を高めつつ、鉄を還元しながらキレート化し、鉄の肥効も同時に高まる事が期待できます。

※鉄型リン酸は難溶解性のリン酸で土壌に残留しやすい

稲作で酸化還元電位を意識してジャンボタニシの被害を軽減する


タンニン鉄は上記の各肥料成分の肥効を高めるだけでなく、土壌中でタンニン鉄 + 過酸化水素(弱い活性酸素)でヒドロキシラジカルといった強力な活性酸素を発生させる事ができます。

この反応をフェントン反応と呼びますが、土壌中の病原性の細菌に対して殺菌作用を発揮する可能性があります。

(研究成果) コーヒー粕で土壌消毒 | プレスリリース・広報

※上記のページではポリフェノールのコーヒー酸と鉄の内容ですが、タンニンでも同様の作用が発生する可能性があります。


過酸化水素は土壌中で白色腐朽菌が木材を分解する為に利用するという事がありますので、土壌の糸状菌の活動に合わせてタンニン鉄を施せば、秀品率の向上に繋がる可能性が見えてきます。

梅澤俊明 リグニンペルオキシターゼによるリグニン分解の化学 - 木材研究・資料 1991, 27: 1-11


関連記事

リン酸の施肥を意識することを勧めています

一覧に戻る

お問い合わせ

弊社へのご相談・ご質問は
こちらからお問い合わせください。

お問い合わせはこちら