京都農販日誌
リン酸の施肥を意識することを勧めています
2023/02/21
リン酸過剰の問題の話をしていまして、頻繁に話題に挙がった内容がありましたので、今回はその内容に触れます。
土壌中のリン酸量と病原性のカビの振る舞いについて等の記事で土壌分析の結果でリン酸値が過剰の場合、糸状菌由来の病気にかかりやすい可能性があるという内容を記載しました。
この内容ですが、病気があまり発生しないところではリン酸はあまり意識しなくても良いですか?、黒腐菌核病やサツマイモの基腐病でも有効ですか?といった質問が相次ぎましたので、更に突っ込んだ話をすることにします。
はじめに病原性のカビが作物に感染するということを考えてみます。
病原性のカビが作物の根に感染をすると、カビは作物から養分を盗ります。
ここで重要なことは作物はカビから養分を盗られ続けていても、許容範囲内であれば葉や根に病斑は出ません。
上記のような場合、おそらく栽培者は作物の調子がなんとなく悪い程度で判断するはずです。
ここで警戒すべき内容として、カビが作物から亜鉛等の微量要素を盗ったということがあります。
亜鉛は病原性の微生物や食害性昆虫に対しての耐性に関与する要素ですので、カビに亜鉛を盗られた作物は、他のカビ、細菌や食害性昆虫に対して弱くなり、これらの生物に更に養分を盗られるきっかけになります。
上記の内容から病気の発生が少ない土壌でもリン酸値は注意しておいた事が良いことになりますし、黒腐菌核病や基腐病に対しても有効であることがわかります。
作物ではありませんが亜鉛が欠乏すると養分転流が盛んになるという研究報告がありまして、この内容を作物でも同様の事が起こるとして話を進めますと、亜鉛欠乏により外葉が黄化しやすくなります。
葉物野菜であれば、外葉分の収量が減り、調整作業の時間も増えますので、利益率の低下に繋がります。
吉本 光希著 植物の必須栄養素から考える植物オートファジーの重要性 - Journal of Japanese Biochemical Society 91(5): 652-658 (2019)
間接的ではありますが、亜鉛は高温や低温の環境ストレスへの耐性の発現にも関与していますので、昨今の猛暑日や寒波の影響を受けてしまいます。
これらの話から、リン酸過剰は軽視しない方が良いとお伝えすることにしています。
リン酸は三大要素と言われる成分で、不安だからリン酸を多く入れておきたいという理由で過多になりやすい成分でありながら、リン資源の枯渇の面でも問題視されている要素です。
リン酸を意識的に施肥することで農薬の散布コストの削減にも繋がりますので、昨今の肥料や燃料の高騰の機会にリン酸施肥の見直しを行うことをお勧めします。
補足
牛糞等の家畜糞で土作りをされる際は施肥量にご注意ください。
※家畜糞による土作りや基肥としての利用は推奨していません
家畜糞にはリン酸が豊富に含まれていまして、家畜糞は土作りの土壌改良材として大量に施肥してしまう傾向にありまして、土がすぐにリン酸過剰の状態に到達してしまいます。
安価な堆肥のように使用される方が多いのですが、病気の発生の要因になる可能性が高く、農薬代は散布にかかる人件費等で、肥料代の節約分以上に経費が上がることに繋がります。
基肥で家畜糞を使用する場合は、
ハイブリットORG等の植物性の堆肥を混ぜて、家畜糞の影響を薄めながら使用することをおすすめします。
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