京都農販日誌
青い石が出る園地は良いミカンが出来るという言い伝えについて
2023/08/31
ミカンを栽培している方から下記のメッセージが届きました。
昔から和歌山では青い石が出る園地は良いみかんが出来ると伝えられているそうです。
先日訪れました下津のミカンのマルヨ農園様も、同様の事をおっしゃっていました。
和歌山県海南市でミカンの草生栽培に挑戦している方の園地を見学しました
ここでいう青い石とは何か?
この言い伝えはミカン以外の作物でも有効なのか?
上記の内容を判断するために、青い石についてを整理していきたいと思います。
青い石は結晶片岩と呼ばれる変成岩のうち、緑色片岩や青色片岩を指します。
緑色片岩は苦鉄質の火山岩である玄武岩(マグネシウムや鉄を豊富に含み、それ以外の栽培に必要な養分も程々に含む)が海水によって変成して出来た海成粘土の緑泥石が更に高圧の変成を受けて形成された岩石だとされていまして、玄武岩由来の微量要素と海水由来の微量要素を豊富に含みつつ、風化すると2:1型粘土鉱物の特徴を持つといった栽培者にとって喉から手が出る程欲しい要素を兼ね備えた岩石になります。
用語の解説|地質を学ぶ、地球を知る|産総研地質調査総合センター / Geological Survey of Japan, AIST
佐藤暢等 中央海嶺玄武岩の化学組成の多様性とその成因 - 地学雑誌117(1) 124-145 2008
高圧変成作用によって、薄く剥がれやすくなっており、
剥がれた岩の断片は風化されやすく赤茶色の土を形成し、この特徴も栽培者にとってありがたいことがあります。
断片に含まれる緑泥石の風化に関しては緑肥を活用して、土壌の物理性の向上を早めるに記載がありますので、今回の記事では省略します。
母岩となる岩石を整理することで、和歌山のミカン農家の間で伝わっている青い石のある園地では良いミカンができるという理由が見えてきます。
※結晶片岩の成り立ちについて更に知りたい方は日本地質学発祥の地 | ジオパーク秩父をご覧ください。
この結晶片岩についてもう少し見ていきます。
おそらく日本で栽培されている方のほとんどの畑で、冒頭のような青い石は見たことがないと思います。
結晶片岩の分布には規則性がありまして、
※図:三波川変成帯の岩石 | 大鹿村中央構造線博物館より引用
結晶片岩は緑色の箇所の三波川変成帯にあり、日本全国で見ると結晶片岩はあまり無いことになります。
和歌山の下津全域と有田の山側が三波川変成帯に位置します。
※結晶片岩の分布で他の条件もありますが、今回は省略します。
結晶片岩 | 石のまちコレクション | 観光情報と楽しみ方 | 糸魚川ユネスコ世界ジオパーク
三波川変成帯とミカン栽培についてもう少し見ていきます。
ミカン栽培といえば、和歌山に続いて、愛媛のミカンが頭に浮かぶと思います。
愛媛ミカンについて調べてみますと、愛媛県はなぜ日本有数のみかん産地か - 愛媛県で八幡浜市が愛媛県全体の収量の1/3以上を占めています。
八幡浜市を地質図で調べてみますと、三波川変成帯に位置していて、愛媛でも園地に青い石があることで良いミカンが出来るという言い伝えは当てはまりそうです。
最後に肥料としての緑色片岩の話題ですが、主の鉱物である緑泥石は
弊社製品の地力薬師に含まれています。
追記
結晶片岩ではありませんが、緑泥石を含む岩石が多く分布する地域は他にもあります。
※図:鹿野和彦 グリーンタフの層序学的枠組みと地質学的事象 地質学雑誌 第124巻 第10号 781-803 2018 782ページより引用
上の日本地図のGreen Tuff region(グリーンタフ帯)に多く分布している緑色凝灰岩と呼ばれる岩石にも緑泥石が多く含まれています。
※グリーンタフ | 隠岐の宝物たち・ジオパークサイト一覧 | Oki Islands UNESCO Global Geopark