京都農販日誌
水田で高温対策として昼間のかけ流しをするべきか?
2024/11/06
水田で年々厳しくなる猛暑日に対して昼間の水のかけ流しをするべきか?という話題があり、そのときに返答した内容を整理してみます。
上記でも挙げましたが、かけ流しをするメリットというのは、気温が高い日(稲の開花前後)に地温(水温)を下げて、高温ストレスを下げることができます。
かけ流しのメリットを踏まえた上で、気にする箇所を整理してみます。
かけ流しを行わなかったとして、その時の水温はストレスを受ける程の高温であるのか?を考える必要があります。
本件に対して幸運なことに、近隣でしかも標高が少し低い箇所で、中干し無しの栽培をしている方がいて、しかもかけ流しをしていないという田がありましたので、その田の内容を見てみます。
※品種はヒノヒカリ
物理性を向上させた田の収穫状況から稲作の温暖化対策を考えるで記載しましたが、中干し無しで栽培している方の米が品質検査で地域1位になり、反収も最大であったそうなので、かけ流しをせずに田の水温が上がったままで栽培を続けたが、高温障害を受けない環境である可能性が高いという前提で話を進めます。
一般的にかけ流しをする時期の7月下旬に、サーモセンサーでイネの根元の地温(水温)を確認しましたところ、
水温は36℃前後でした。
比較区として、近隣の中干しをしている田の地温を確認しますと、
地温は40℃でした。
ここで注意すべき点として、水を貼っていると周辺温度のばらつきが減り、おそらくですがイネが茂っている箇所でも似たような水温になっている可能性があることです。
※中干しをしている方では、イネの根元が日陰になっていて地温が中干し無しの田よりも下がっている可能性があります。
確認件数は少ないので断言はできませんが、かけ流しをしなくても、中干し無しで高温障害を回避できる可能性は高そうです。
個人的な見解になりますが、かけ流しに関して大きなデメリットがあると予想しています。
かけ流しのデメリットは水に溶けた成分が田から排出するということです。
ネギ作の間に行う稲作の効果を高めるにはで記載しましたが、過剰しやすいカルシウム等は排出しても良いですが、腐植や微量要素も排出される可能性があります。
※(田がある)上流から運ばれる腐植酸鉄によって下流の牡蠣の養殖に良い影響を与えるという話があります。
長尾誠也 河川を通しての陸から海への物質輸送 —腐植物質の特性と錯形成能— - 総合地球環境学研究所
物理性を向上させた田の収穫状況から稲作の温暖化対策を考えるで記載しましたが腐植の蓄積はイネの生産性を高める可能性がありますので、可能であれば田に入れた水はそのまま留めておきたいです。
補足
田に入れた水を滞留させますと、土壌中に様々な物質が還元されやすくなりますので、還元対策は考えておく必要があります。