京都農販日誌
物理性を向上させた田の収穫状況から稲作の温暖化対策を考える
2023/10/21
当ブログで時々話題に挙げています土作りを意識した稲作を行っている方の田で今年も無事に収穫でき、栽培中に得られた知見が参考になりそうなので整理してみます。
先に今年の全国的な稲作の状況を整理しておきますと、米所の新潟におきまして、記録的な猛暑日の影響からコメの見た目の良さを示す一等米比率が各地でわずか数%にとどまるなど、過去に例がないほど落ち込んでいるとのことでした。
「暑さに強い品種に転換必要」 県産米の作況指数 全国最低レベルの「やや不良」《新潟》|県内ニュース|TeNYテレビ新潟
毎年騒がれている地球温暖化のことを考えますと、来年も今年同様かそれ以上の猛暑日が訪れると気構えしておくことが賢明だと思います。
この状況を踏まえた上で、大阪北部の高槻の清水地区で物理性の改善をしている田(品種:ヒノヒカリ)では、
収量は例年通りで、米粒の大きさも例年通りで、白粒は特に見られませんでした。
今後の稲作において、物理性の改善は常に意識しておくことの重要性が感じられる結果となりました。
※周辺の田の米粒は例年より若干の小ぶり
今回話題に挙げています田では、下記のような栽培をしています。
- ・冬期はレンゲを栽培している
- ・稲作では中干しを無しにしている
- ・周辺の田と比較して、一発肥料の量を1/2にしている
- ・農薬は使用していない
上記の内容に関しての詳細になりますが
稲作の収穫後とレンゲの鋤き込み時に2:1型粘土鉱物の施用を行っています。
2:1型粘土鉱物の施用の理由に関しましては稲作の省力化と品質の向上を目指してに記載がありますので、そちらをご覧ください。
稲作の慣習として、冬期に寒起こしをする方が多いですが、地力窒素を含む地力の低下の観点から寒起こしはすべきではないと考えています。
田の物理性の改善をしたことで肥効が高まったことで地域の慣習通りの施肥では倒伏してしまうため減肥を行う必要が生じました。
減肥を行ったことで利益率が向上しただけではなく、根腐れの原因になるガスの発生源を減らすことにも繋がりました。
ガスの発生に関してはネギ作の間に行う稲作の効果を高めるにはをご覧ください。
ガスが発生しなくなれば、
猛暑日付近に行う中干しを行う必要がなくなります。
中干しを行う理由と中干し無しにする利点は年々増える猛暑日対策として、中干し無しの稲作に注目していますをご覧ください。
猛暑日に田に水を張っておくことで、イネの葉が常に蒸散できるようになり、葉温を下げ高温障害の緩和に繋がります。
高温障害の緩和により、耐性に関与する微量要素の吸収が衰えることがなく、結果的に農薬の散布量の削減に繋がります。
最後に中干しの期間の延長を考える前にの記事で触れている中干し無しにすることでメタンガスが発生しやすくなる問題ですが、田の物理性の向上時に土に有機物の蓄積を行い、減肥や減農薬の製造、運搬や散布時に使用する燃料の削減に繋がりますので、これらの削減で相殺、もしくは物理性の改善によるメタンの発生削減分で環境に貢献していれば良いなという希望的観測があります。
※物理性の改善により、イネの根の発根を促進し、根経由で土へ酸素の供給量を増加させ、メタンガスの発生を抑える効果も期待できます。
メタンの発生量以上の有機物(廃菌床等の木質資材や落ち葉)を投入して、田の物理性の改善を行い、生産性を上げつつ出来る限りメタン発生を相殺することを考えても良いかもしれません。
追記
田に常に水を張っておくことで、体感温度が下がると言われ、周辺の畑作の生産性にも良い影響を与える可能性があります。
田んぼは水を管理する | 田んぼがもつ役割 | クボタのたんぼ [学んで楽しい!たんぼの総合情報サイト]
関連記事