京都農販日誌

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土壌の劣化を考えるために地力について整理する

2023/09/13

栽培している土壌の劣化についての話題が有りましたので、その時の内容について記載します。



土壌の劣化と対になっているものとしまして、地力という用語があり、劣化は地力の低下と捉えることができますので、土壌の劣化を考える前に地力とは何か?について見ていくことにします。


地力という言葉を見聞きして、真っ先に思い付くのが作物が病気になりにくく栽培しやすい土だと思います。

具体的に記載すると

・栽培しやすい土というのは適切な排水性がありつつ、程よい保水性もあり、大雨後には水は速やかに引きつつ、雨が少ない時は土に水が残っているという状態が望ましい。

・他に肥料は肥料持ちが良く、栽培マニュアルに記載されている施肥量よりも少なくしても栽培出来る。

・作物は病気にかかりにくく、食害性昆虫からの被害も少なくなる。

といったところでしょうか。

※上記の話の詳細に関しては猛暑日対策で田畑の土の保水性を高めるリン酸の施肥を意識することを勧めていますあたりの記事の一読をおすすめします。


※写真はピートモス

リン酸過剰問題に対して腐植酸の施用は有効か?




これらの内容は土に植物性の有機物(特に腐植)が定着すれば大体解決するのですが、地力を考える上でもう一点注目すべき事があります。

その内容というのが、土を構成する鉱物になります。


土は様々な鉱物で構成されていまして、そのうちのいくつか例を挙げますと、


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火成岩を母岩とする土壌を顕微鏡で観察すると見られる角閃石(かくせんせき)という鉱物がありまして、JA全農 肥料農薬部 施肥診断技術者ハンドブックには、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Fe(鉄)の給源と記載されています。


他に



苦鉄質の岩石を母岩とする土壌や塩基性の火山灰で構成される土壌の土を顕微鏡で観察すると見られるかんらん石マグネシウム(苦土)とFe(鉄)の給源になります。

実際の栽培では秀品率や病害虫への耐性で重要な微量要素の大半は土壌の鉱物から得ます。




続いて作物が土壌の鉱物から成長に必要な成分を得る過程を見ていきます。

作物は土から栄養を吸収する時は、根の先端から根酸を出して、鉱物を溶かして養分を取り出します。


Luis Miguel Bugallo Sánchez (Lmbuga Commons)(Lmbuga Galipedia)Publicada por/Publish by: Luis Miguel Bugallo Sánchez - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる


K(カリウム)の給源とされる正長石を例にして話を進めますと、根酸等の生物風化作用によりカリウム等が溶脱しつつ、1:1型粘土鉱物のハロイサイトへと変質します。

上記の作用を更に詳しく見ると、鉱物が風化する事によって、作物にとっての養分の給源の減少しつつ、粘土鉱物の増加によって土が締り物理性の低下に繋がります。

ハイロサイト等の粘土鉱物は有機物との繋がりも弱く、団粒構造の形成にあまり役に立ちません。

※鉱物の種類によっては有機物の蓄積に有効な2:1型粘土鉱物に変質するものもあります。

※上記の件の詳細は火山と火成岩 - センサー地学 - 新興出版社啓林館から読み始めることをおすすめします。


ここから土壌中の鉱物は消耗するものだということがわかり、栽培で土を酷使しつつ、給源となる鉱物を補充しないことが地力の低下ということになります。


余談ですが、土壌中の鉱物の構成には地域性がありまして、栽培者にとって有益な鉱物がたくさんある地域もあれば、そうでない地域もあります。

極端な例になりますが、



砂質の土壌では鉱物の大半が風化しにくいもので、風化しても作物にとって有意義な成分が溶脱しません。

更には粘土鉱物も少なく、有機物の蓄積もされずに土作りの三要素の向上も難しいです。

青い石が出る園地は良いミカンが出来るという言い伝えについて




最後に懸念している事になりますが、近頃、イネに菌根菌を共生させて陸稲として栽培するという話題をよく見かけます。

イネに限らず、作物が菌根菌と共生するとリン酸の利用効率が高まると言われていますが、それと同時に土壌の鉱物の消費量も高まります。

※菌根菌との共生による高温耐性等に関与する物質(脂肪酸等)の合成に微量要素が必要となる



慣行的に行われている水稲は川から水を引くことによって、水と一緒に新鮮な鉱物や水に溶けている養分が一緒に入ってきます。

この作用により地力は維持され、稲作は連作障害が発生せず少ない肥料で収穫出来る主要作物として扱われるようになりました。

年々増える猛暑日対策として、中干し無しの稲作に注目しています


イネと菌根菌の共生による陸稲で、水稲同様の施肥設計の感覚で栽培をすると、畑作以上の地力の低下の恐れがあります。

陸稲の栽培を推していく場合は地力の回復の手段を持っておくべきです。

地力の回復は、地力薬師等の鉱物系の肥料か、川砂の客土等があります。


補足1

イネは地力で穫り、ムギは肥料で穫るという言葉がありますが、今回の話に当てはめると地力で穫る水稲に当たり、肥料で穫る陸稲に当たります。


補足2

地力の話題から少しずれますが、土壌中の養分のバランスが崩れるという事があります。

石灰(カルシウム)やリン酸の過剰等が挙げられます。

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