京都農販日誌
リン酸過剰問題を緑肥で解決する時に意識すること
2020/01/17
土壌分析の結果でカリ不足とリン酸過剰に悩んでいる方から緑肥でどうにかなるか?と質問がありました。
わかりやすくグラフで示すと露地であれば上のような結果でしょうか。
リン酸過剰である時は大抵石灰も過剰になっていることが多いです。
はじめに緑肥で改善できることと出来ない事に触れておくと、
改善出来ることとしては、
・余剰成分を吸収することが出来る。この株を鋤き込んでも余剰成分がそのままの形で還ることはなく、団粒構造の成分として有効活用される
例えば、ECの要素である窒素があります。ECを高める窒素は無機の硝酸塩で、緑肥は根から硝酸塩を吸収するとタンパクに変えます。このタンパクを土に鋤き込むと腐植の基になります。
リンは細胞膜のリン脂質の材料として利用され、これもまた土の中で何らかの良い作用として働く可能性があります。
・難吸収性の成分を易吸収性の成分に変えて、次作で栽培する作物にとって吸収しやすい形にしておく
例えば、リン酸が上記に当たります。
土壌中に蓄積したリン酸は主に無機のリン酸石灰等と有機態リン酸があるとされています。
無機リン酸は溶けにくい為、作物になかなか吸収されません。
※リン酸石灰という形で土に残っている為、リン酸と同時に石灰も過剰であることが多い
もう一つの有機態リン酸とは、
By Yikrazuul - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
上記のように記載されるリン酸(右側の中心にPがあるものがリン酸)で、穀物の実に多く含まれる貯蔵用のリン酸らしく、人や家畜が食べても吸収されにくく、家畜糞に多く含まれるとされています。
この有機態リン酸は、
作物にとって有用な肥料成分をキレート作用という形で吸収しにくい状態にします。家畜糞で毎年土作りをしていると、年々他の成分の欠乏症が目立ってきたなと感じるものの要因の一つだとされます。
畜産の家畜に与える飼料でも有機態リン酸の消化率の低さが問題になっていて、リン酸の消化率の低さを解決するためにフィターゼという酵素を飼料に加え、リン酸を吸収しやすい形にして与えるとされています。
このフィターゼは青カビ等の土壌微生物から分離したものを利用しているそうです。
続いて改善されないこととして、
・カリウムを含め、亜鉛や銅といった微量要素の欠乏の問題は解消しない
があります。
金属系の肥料成分は土壌の鉱物から溶け出たものが主であり、緑肥を採用する時は大半が土壌劣化を感じた時で、この環境では鉱物由来の微量要素が出し切った状態である可能性が高いです。
先に冒頭のカリ不足の解決策を記載しておくと、緑肥を利用する前の注意事項をまとめましたで記載した通り、
緑肥を育てる為に鉱物系の土壌改良材を使用することです。
冒頭の質問にありますリン酸の過剰に対して、どのように解決すべきか考えてみます。
リン酸は無機有機問わず、どちらも土壌の微生物が活発になることで吸収しやすいリン酸へと変わり、活発になってほしい微生物は好気性の枯草菌や青カビであるとされています。
茶粕やコーヒー豆粕を主とした植物性堆肥を事前に施用し緑肥の発根量が増える環境になった状態で、
Bishnu SarangiによるPixabayからの画像
団粒構造形成率が最も高く土をフカフカにするイネ科のソルゴーか、
リンの吸収を促進する菌根菌と相性の良いキク科のヒマワリを採用する。
※ソルゴーとヒマワリはどちらも夏の緑肥で、秋から緑肥を利用したい場合はコスモスやエンバク等あたりが効果が高いと予想している。
※緑肥の選定は農文協 橋爪健著 緑肥を使いこなすを参考にしています
どちらの緑肥も背丈が大きいので、緑肥の効果を高める為に追肥を与えると良いです。
※緑肥を育てる前の堆肥として茶粕やコーヒー豆粕が良い理由や追肥で最適な肥料については下記の記事に説明があります。
次によくある質問で緑肥の刈り取り時期があります。
上の写真ではわかりやすいように花を付けていますが、花が咲く前に刈り取り鋤き込むと良いです。
よく刈り取った緑肥を持ち出した方が良いか?と質問を受けることが多いですが、よほどの有害物質を吸収させた株で無い限りは鋤き込む方が効果が高いです。
最後にリン酸過剰の問題に取り組むと、
このように一旦リン酸の数値が上がり、
翌年リン酸の値が下がるという現象が見られますが、これはリン酸過剰の問題が解決の方向に向かっている兆しですので心配は無用です。
何故リン酸の値が一度上がるかは下記の記事に説明があります。
関連記事