京都農販日誌

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クリーニングクロップとして緑肥を育てた時に土に鋤き込んでも良いですか?

2020/01/27

高槻の原生協コミュニティルームで緑肥の話をさせて頂きましたの会で下記の質問がありました。

育てた緑肥は土に鋤き込んで良いですか?



この質問の背景には塩類集積のハウスで過剰な養分を緑肥に吸わせて除塩することを目的としていることがあります。



せっかく緑肥に余剰分を吸わせたのにそれを土に還して良いか悩むところ。

ハウス内の塩類集積対策について


この質問に対していつも鋤き込んで良いと返答しています。

鋤き込んで良いと返答している理由は緑肥が吸収した窒素(硝酸態窒素)は体内でタンパクに変わって、それは土壌への有機物の補給で利用出来ます。同じ窒素であっても土壌への影響は全く別物です。

有機物の投入は土壌の物理性を改善し、排水を良くしつつ保肥力を高める為、余剰成分の土壌への影響は少なくなります。


リン酸等の余剰成分の話も同様です。

リン酸過剰問題を緑肥で解決する時に意識すること


他にも鋤き込む方が良い理由はありますが、その理由はこの記事の文末に記載します。




上記の返答に対して更に質問がありました。

農林水産省のサイトの緑肥の資料でクリーニングクロップとして緑肥を利用した場合、ソルガム等では窒素やカリウムの吸収量が多いので、刈り取って土壌の外に持ち出さなければならないと記載がありましたが、それでも土に鋤き込んで良いのでしょうか?


この話を始める前に農学で一般的に考えられている内容に触れておくと、農学や栽培の指導書ではカリウムは欠乏症を起こさないという考え方があります。

土壌鉱物由来や川からの入水でカリウムは補充されるのでカリウムは不足しないと考えられていますが、この学説も最近疑問視され始めています。


上記の内容を踏まえた上で、自身でお持ちの土壌分析の結果を眺めてほしいのですが、



ハウスで家畜糞を連投しているところを除くと慢性的にカリウムは不足している傾向にあります。

この理由として土壌の酷使があり、有用な金属系の肥料の元となる鉱物が消耗され尽くされているという背景があります。


有用な土壌の鉱物が消耗され尽くされているという背景の元でハウスの方を考えてみると、



土壌分析値としてカリウムが多くなっていますが、おそらくこれは家畜糞由来のカリウムで、家畜糞の連投によって土壌の鉱物は消耗されている可能性は十分に有り得ます。

もう一点注目してほしいのが、家畜糞という有機物量が多いにも関わらず、保肥力が少ないということがあります。

※家畜糞特有のECを上げる硝酸態窒素が多いにも関わらず、本来必要なCECの要素となる腐植が少ないことから判断しています。おそらくこの畑は物理性が悪くECが上がりやすい状態であるはずです。


土壌の保肥力が上がると相対的にカリ、石灰と苦土の値は下がります。

ここからカリは余剰に見えるけれども、それは保肥力が低いからであって、本来欲しい腐植の量が増えるとカリウムの量は大したことはないということになります。そこに土壌の鉱物は消耗している可能性も十分あるということを加えると、緑肥で畑の外にカリウムを持ち出すという行為は勿体無いことになります。


窒素のところで触れましたが、土壌の物理性が高くなると余剰成分は土表面に留まらなくなるので、その観点からもカリウムの持ち出しは栽培時のカリウム欠乏を招く要因になります。




最後に緑肥を土に鋤き込むべき理由ですが、


Bishnu SarangiによるPixabayからの画像


緑肥は休耕に対して省力化しなければ本末転倒です。刈り取りして有機物の量を減らして、植物性堆肥を再投入するのは人件費と肥料の購入の経費の面で勿体無いです。

余剰成分の土壌への還元が心配であれば、緑肥を鋤き込んだ時に

ハイブリットORGバークあたりの養分の少なく且つ、土壌の物理性や化学性を高める資材を投入すれば良いです。

団粒構造を作りやすい腐植の種類などはありますか?


土壌の化学性が向上すれば、緩衝性が増し、余剰成分に対して土の方でなんとかしてくれます。

石灰過剰の問題は緑肥の活用が巧みな方は次作から石灰系の肥料を極力入れないという対処をされています。

緑肥後の栽培では作物の発根量が増していて、収穫による養分の持ち出しもあるので、その次の作の頃には理想に近い値になっているはずです。


最後に注意ですが、

今回の話は東日本大震災後の緑肥によるセシウムの除去等の話は除きます。


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余談

カリウムは土の粘土鉱物と有機物が結合する際に重要であると考えられています。カリウムを除くと土への有機物の蓄積が抑制される可能性があります。

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