京都農販日誌

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稲作でケイ酸を効かせるには

2024/09/05


稲作でケイ酸を効かせるには?という話題が頻繁に挙がりますので、イネがケイ酸を吸収することについて整理してみます。


はじめにイネがケイ酸を吸収すると何が良いのか?について見てみます。


イネがケイ酸を吸収すると体内にケイ化細胞が形成され受光態勢が向上します。

その結果、下葉の枯れ上がりが少なくなり、病気にもかかりにくくなるとされています。

けい酸の効果 - JA全農


光合成の向上に合わせて蒸散の質も高まりますので、稲作の猛暑日対策にも繋がります。




続いて、イネがケイ酸を吸収する仕組みについて見てみます。

イネは水に溶けたケイ酸であるSi(OH)4の形で根から吸収されます。

稲わら連用によるケイ酸供給は水稲のケイ酸吸収を増加させるか? - 日本土壌肥料学雑誌 第93巻 第6号 p.421~428(2022)


上記で挙げたケイ酸はどこにあるのでしょうか?



ケイ酸と聞いて真っ先に思い付くのが上の写真にあります透明のキラキラとした鉱物の石英があります。

石英の化学組成はSiO2になりまして、常温の水に極微量溶けるとされています。

地質図から訪れたことのない遠方の土質を予想する1


二酸化ケイ素を水に溶かすと、

SiO2 + 2H2O → Si(OH)4

になりますが、上記のケイ酸は安定しないので、Si(OH)4同士が縮合し合って、縮合ケイ酸となるそうです。

ケイ酸とケイ酸塩の化学 ―シロキサン結合をもつ分子・粒子・ゲル― 化学と教育 66巻 1号(2018年)


細かいことは置いておきまして、イネにケイ酸を効かす為には田にたくさんの水を入れて、二酸化ケイ素を溶かせば良さそうなことはわかりました。




話は代わりまして、前に(研究成果) カリウムの施肥量を抑えた水稲の栽培方法により土壌中に難分解性炭素が蓄積することを発見 - 農業が可能にする新たな地球温暖化対策 - 農研機構という研究報告がありまして、報告中にケイ酸に関する興味深い記述がありましたので紹介します。


研究報告の詳細は、水稲でカリウムの施肥を抑えると田に有機物が蓄積したという内容でした。


イネの栽培中にカリウムが不足した場合、根圏にあるカリウムを含む鉱物を破壊して、カリウムを溶脱させ吸収したという内容でしたが、鉱物が破壊された時にカリウムの他にケイ酸とアルミニウムも溶脱し、ケイ酸はイネに吸収され、アルミニウムは周辺の有機物と結合して難分解性炭素になり蓄積されたそうです。

※アルミニウムと難分解性炭素の話は黒ボク土での栽培についての記事をご覧ください。


上記にあります鉱物とは一体何なのか?を把握するために研究報告を読み進めてみますと、長石類、雲母類、角せん石類、火山ガラス等を挙げています。


これらの鉱物が破壊(風化)するとどうなるのか?を確認してみますと


※表:塚本斉等 風化粘土の生成と変遷 - 応用地質29巻 3号 1988より引用


どれも粘土鉱物に変わっているのがわかります。

粘土鉱物はアルミニウムとケイ素を含む為、イネの根の作用により鉱物からケイ酸が溶脱して吸収することはイメージしやすいです。


であれば、稲作におけるケイ酸の主要な供給源の一つは鉱物だと言えそうです。




ここで一点程注意が必要になります。

土壌の劣化を考えるために地力について整理する鉱物系の地力は劣化するという内容を記載しました。

これは土壌中の鉱物は消耗するものであるということです。


稲作は連作障害がないという意識で例年通りの栽培を続けた場合、ケイ酸不足に陥り何となくの不調から脱却出来ないという症状に陥ることになります。



近年、用水路の整備により、田に土砂が入りにくくなったそうです。

これからの稲作では意図的に田に鉱物を供給(施肥)する必要が生じるかもしれません。

※ケイ酸肥料も含まれますが、肥料で供給出来る分は十分ではありません。

※稲わらともみ殻もケイ酸の供給源となる

岡山等 稲わら連用によるケイ酸供給は水稲のケイ酸吸収を増加させるか? - 日本土壌肥料学雑誌 第93巻 第6号(2022)




ここからは個人的な考えですが、




農業資材として桜島の火山灰のようなものがお気軽に購入出来たら良いなと思うことが多いです。

桜島の火山灰は安山岩・玄武岩質安山岩になっていますので、

桜島 - 20万分の1日本シームレス地質図


図:火山と火成岩 - センサー地学 - 新興出版社啓林館より引用


上の図でいうところの、塩基性岩と中性岩のちょうど間ぐらいで、稲作で必要な成分が豊富に含まれています。


ケイ酸の供給に関する研究報告

松田晃等 山形県における農業用水からのケイ酸とカリウムの供給量の推定 - 日本土壌肥料学雑誌 第88巻 第6号 (2017)


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