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京都農販日誌

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カンキツの果実の酸味を減らすには

2026/04/09


カンキツの果実で酸味が強くなるのをどうにかしたいという話題が挙がりましたので、この内容について丁寧に見ていくことにします。

カンキツの酸味は果実内に酸味の素のクエン酸が多く、糖が少ないので酸味が目立つと思いがちですが、カンキツの果実が熟す過程を丁寧に見ていきますと対策が見えてきます。


カンキツの果実は未熟期にはクエン酸等の酸味の有機酸を溜め込んで獣等から食べられ難くして(と考えられている)、熟す過程でクエン酸を分解して酸味を減らして甘味が目立つようになってきます。

かんきつ類Q&A(品質編) - 愛媛県庁公式ホームページ


カンキツの果実の酸味が強くなるのは、クエン酸の分解が上手くいっていない可能性がありますので、クエン酸の分解について丁寧に見ていくことにします。




クエン酸の分解に関与する酵素を検索してみましたところ、アコニターゼNADP依存型イソクエン酸脱水素酵素という酵素名を見かけました。

※培養砂じょうを用いたカンキツ果実の成熟生理の解析 - 静岡大学学術リポジトリ


これらの酵素がクエン酸からα-ケトグルタル酸に変換して酸味を減らしているそうです。

これは予想になりますが、α-ケトグルタル酸からグルタミン酸(三大旨味成分の一つ)やGABAが出来る可能性があります。


これらの酵素が上手く働かなければ、たとえ果実内に甘味や旨味が豊富に含まれていたとしても、酸味が目立った果実になってしまいます。

酵素反応の詳細を丁寧に見ていくことにします。




NADP依存型イソクエン酸脱水素酵素の方は、触れる事が多いので今回はアコニターゼの方のみを見ていきます。

アコニターゼですが哺乳類での話題になりますがアコニターゼと鉄調節タンパク質1 (Aconitase and Iron Regulatory Protein 1) | 今月の分子 | PDBj 入門に拠りますと構造上鉄が重要な位置を占めていまして、植物でも共通の知見だと仮定して話を進めます。


鉄が不足している際、アコニターゼはクエン酸の分解としては働かず他の働きをするそうで、これは減酸の内容に直結して酸味がなかなか抜けない事に繋がります。


鉄欠乏と聞いて真っ先に思い浮かぶのが、石灰過剰土壌中に鉄がない土が酸化状態で鉄の吸収に強いストレスがかかるかがあります。

カンキツの栽培と聞いて真っ先に思い浮かぶものとして、カンキツは石灰を好むという事があります。


一般的に石灰は鉄と拮抗する成分とされていまして、石灰過剰の状態であると果実の熟成期の減酸が抑制されて酸味が残る可能性があります。

栽培が不調な時は亜鉛に注目しましょう




樹勢の維持と土づくり~樹勢低下の要因を考える!~ - 佐賀県に記載されている内容について考えてみます。

ミカン園地の土壌のpHを測定してみたところ、適正pHよりも低い園地が6割近くあったという記載があります。


読み進めてみると、石灰は撒いているが表層施肥であるため、石灰が効いておらず雨等で流れてしまっているのではないか?という可能性があるそうです。

カンキツの栽培でよく見聞きする石灰が苦土石灰等のく溶性の石灰なので降水では肥効を発揮しません。

置換性塩基、水溶性とく溶性 - お役立ち農業辞書


上記の内容は石灰過剰とは逆の内容になりますが、ここにも鉄欠乏の要因が含まれています。


ミカンに絞って話を進めますが、栽培に適したpHの下限が5.5だとすると、それよりも低いとなるとpHは5前後になっている可能性があります。

このような環境下では土壌中の鉄は不安定になり流出しやすい状態になっています。


佐賀県の報告にもありましたが、低いpHでは細根量が減少して、鉄があるのにうまく吸収出来ないという症状にも陥りやすくなります。


石灰施肥で求める肥効が発揮されていない事で鉄欠乏に陥る可能性も見えてきました。




これらの内容を踏まえ、減酸に向けてやるべき事は土壌分析を行い石灰が適切に効いているか?を確認することで過剰であれば土壌中にある石灰をクエン酸等で溶かして適切に利用する、不足しているのであれば石灰散布の時に必ず中耕を行い石灰を確実に効かせるようにして、土壌中の鉄の流出を抑えるといったことになるかと思います。


これに合わせて、鉄欠乏の回避策として、



ビール酵母由来の還元作用を持つ肥料と可能であれば酸化された鉄を混合して葉面散布する事で減酸に関与する酵素の働きが活発化する可能性が考えられます。

ビール酵母から作られた肥料の使い所:還元反応

セルエナジー | 商品紹介 | 株式会社京都農販




余談になりますが、今回の内容を整理していて、カンキツの栽培は管理方法からpHが低くなりやすい傾向があるようで、元々pHが高い土質が分布している緑泥石帯石灰岩層がミカンの栽培にとって有り難い環境なのだなと感じました。

※緑泥石帯は和歌山では下津、愛媛では八幡浜、九州では福岡の八女にあります。

※石灰岩層は和歌山では有田、愛媛では伊予、九州では熊本の八代にあります。


更に緑泥石帯では鉄の拮抗が起こり難いので青い石が出る園地は良いミカンが出来るという言い伝えについての記事で触れたような青い石とミカンの関係の言い伝えがあるのも納得できます。


最後に補足ですが、pHが低い土壌では鉄の他に各種微量要素の流出も起こります。

鉄に限らず、銅や亜鉛といった微量要素も欠乏している可能性がありますので、土壌分析をされる際は可能であれば微量要素の分析をされる事をおすすめします。

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