京都農販日誌
地質図から訪れたことのない遠方の土質を予想する3
2024/08/26
今回は地質図から訪れたことのない遠方の土質を予想する2の続きになります。
前回までの記事で火成岩(と堆積岩の石灰岩)を母岩とする土壌について触れてきました。
次は変成岩の蛇紋岩について触れることにします。
堆積岩や変成岩には様々な種類がありますが、なぜ蛇紋岩か?といいますと、蛇紋岩植生という用語がある程特徴的な土質になるからです。
蛇紋岩地帯の植生 - 岡山理科大学 生物地球学部 生物地球学科 旧植物生態研究室
蛇紋岩を構成する主の鉱物の蛇紋石は
図:火山と火成岩 - センサー地学 - 新興出版社啓林館より引用
超塩基性岩のカンラン岩の主の造岩鉱物のカンラン石が変成作用(地下深くで水を含むことで変成)を受けて生成されたものになります。
※カンラン石の化学組成が(Mg,Fe)2SiO4で蛇紋石が(Mg,Fe)3Si2O5(OH)4
京都府内では、福知山市の大江山付近や舞鶴で見かけ、栽培が難しいとされています。
大江山超苦鉄質岩体地域の鉱物|京都府レッドデータブック2015
蛇紋岩が分布されている地域の地質を調べますと、超苦鉄質岩と表記され、読んで字の如く、苦土(マグネシウム)と鉄を豊富に含む石で構成されています。
蛇紋岩を母岩とした土壌は、
地質図から訪れたことのない遠方の土質を予想する1で見ました土と玄武岩を母岩とする暗赤色土と同様になりますが、玄武岩由来の土壌と異なる性質を持ちます。
蛇紋岩を母岩とする土壌では、超苦鉄質に分類されるだけあって、苦土(マグネシウム)が多く、それと比較して石灰(カルシウム)が少ない傾向にあります。
超苦鉄質の岩は別の分類では超塩基性岩に分類され、土壌のpHが高くなる傾向もあります。
土壌のpHが高い暗赤色土になるため、塩基性暗赤色土と呼ばれます。
高pHは石灰岩を母岩とする土壌でも同様の事が見られ、鉄欠乏に陥りやすい傾向があります。
pHが常に高い土壌での栽培では、施肥後にpHを下げる生理的酸性肥料(硫安や硫酸カリ等の施肥後に土壌のpHを下げる)を常備しつつ、硫酸塩肥料の副作用を注意しながら施肥するという工夫が必要になります。
※生理的酸性肥料について:肥料の種類と特色 - 農林水産省
今までの記事で触れていない母岩として、堆積岩の
チャート、砂岩や泥岩(頁岩や泥炭含む)等がありますが、これらは風化後に形成される土のパターン化が難しいのでこの場では触れないことにします。
追記
変成岩に関する他の話題は、青い石が出る園地は良いミカンが出来るという言い伝えについての記事で紹介しました緑色片岩がありまして、これらの箇所の地質を調べてみますと、緑色岩帯になっていて、他の地域でもこの地帯になっている場合は秀品率が高い傾向がありました。
補足
蛇紋岩を母岩とする土ではニッケルが豊富に含まれ、ニッケルが鉄欠乏を更に誘発するとされています。