
京都農販日誌
超苦鉄質岩類を母岩とする土の土壌環境の改善について
2025/02/21
産業技術総合研究所が提供している20万分の1日本シームレス地質図で超苦鉄質岩類と表記される地域で栽培をされている方から土壌環境の改善(土作り)の相談がありました。
超苦鉄質岩類を母岩とする地域はクセが強く、土壌環境の改善は注意が必要です。
資材の紹介の前に、超苦鉄質岩類を母岩とする土壌の特徴を整理してみます。
主の岩石は蛇紋岩と呼ばれる変成岩であることが多く、
風化すると塩基性暗赤色土になります。
土壌分析の結果はpHと苦土(マグネシウム)が高い傾向があり、栽培方法によっては石灰(カルシウム)も高くなる傾向があります。
蛇紋岩を母岩とする土では、ニッケルが過剰にある傾向があり、このニッケルの存在が栽培難易度を跳ね上げます。
植物の根がニッケルに触れると、ニッケルを鉄だと錯覚し、鉄と一緒にニッケルも吸収してしまいます。
本来鉄を吸収するはずだったのに、一部ニッケルになってしまっているため、植物は鉄欠乏状態だと錯覚し、更に鉄の吸収を試み、徐々に体内のニッケル含有量が高まり、最悪のケースとして枯死の至ります。
水野隆文 蛇紋岩土壌における植物のニッケル過剰障害 - ペドロジスト 第 65 巻 第 1 号(2021)
そもそもの話で肥料成分としての鉄が土壌のpHが酸性でないと、植物は利用できないので、塩基性暗赤色土の高pHの時点で不利になっています。
上記の内容を踏まえた上で、対策を考えてみます。
真っ先にすべき事は、土壌のpHを下げる事です。
pHを下げるには、生理的酸性肥料を利用するのが良く、一般的に硫黄を含む肥料を用いるのが良いと考えられています。
ただ、この内容はあくまで、高pHの土壌での話であって、蛇紋岩を母岩とする土壌で注意が必要です。
※高pHの土壌は他に石灰岩を母岩とする石灰性暗赤色土がある。
硫黄を含む肥料は嫌気環境下に置くと、硫化水素の発生の原因になり、硫化水素が土壌中の鉄に作用し、利用困難な硫化鉄になり、鉄欠乏の要因になる可能性があります。
※鉄とニッケルで、硫化水素と反応しやすいのは鉄である可能性が高いです。
硫黄を含む肥料を用いる前に、pHの低い有機酸等で土壌環境の改善を行っておく方が無難です。
大量に入手可能でpHの低い有機酸としまして、真っ先に思い付きますのが、
腐葉土になります。
腐葉土に含まれるタンニンはpH4程度だとされ、今回の要件を満たします。
※参考 植物タンニン ポリフェノール ―古くて新しい鞣し 多岐に渡る応用開発―
腐葉土に含まれる腐植酸のような構造のタンニンにより、土壌中の粘土鉱物と反応して団粒構造が形成されます。
他の作用としましては、作物に対して鉄等の微量要素の吸収効率も高まりますので、蛇紋岩を母岩とする土壌での鉄ストレスを緩和できます。
物理性が改善されていますので、先程挙げました硫黄を含む肥料を与えても、硫化水素の発生率を下げる事ができ、この点でも鉄ストレスの緩和に繋がります。
蛇紋岩を母岩とする土壌の改良は腐葉土のような有機物を中心に考える事をおすすめします。
関連記事