
京都農販日誌
米ぬか嫌気ボカシ肥の解説
2025/05/09
米ぬか嫌気ボカシ肥の記事で米ぬか嫌気ボカシ肥の作り方を見てきました。
米ぬか嫌気ボカシ肥作りで最も重要なこととして水分量を挙げました。
今回は何故水分量に注目すべきか?について触れていきます。
今回の内容を読み始める前に有機化合物 - お役立ち農業辞書を一読しておくことをおすすめします。
米ぬか嫌気ボカシ肥作りがうまくいくと、甘い香りがします。
この香りの正体はアミノ酸や糖等から生成される物質によるもので、好気発酵ではこれらの成分は更に二酸化炭素(無臭)やアンモニア(悪臭)に変化していきます。
水分量を厳密にすると良い香りになることを、タンパクの発酵に注目しながら見ていきましょう。
発酵で水が重要な理由は、発酵を行う上で水がなければ発酵を行うことが出来ないということがあります。
では、水が多いと何故失敗するのか?になりますが、これはタンパクが無機化する過程を見ると良くわかります。
タンパクの無機化は
タンパク > ペプチド > アミノ酸 > アンモニア > 硝酸
の順で無機化されます。
嫌気発酵では、タンパクの無機化はアミノ酸で止まるのですが、ここに水がたくさんあると嫌気環境であっても更に反応が進んでしまいます。
アミノ酸同士が反応し有機酸とアンモニアに分かれます。
アンモニアは無機態窒素で即効性となり、米ぬか嫌気ボカシ肥で期待する穏やかな肥効ではなくなります。
以上の内容から米ぬか嫌気ボカシ肥作りで水分量が重要な理由になります。
もし、脱水処理がされていない有機質肥料を発酵させたい場合は必ず好気発酵を選択するようにしましょう。
有機質肥料の発酵について詳しく知りたい方は肥料の発酵 - お役立ち農業辞書をご覧ください。
追記
米ぬか嫌気ボカシ肥作りでは、デンプンの方の反応も見る必要があります。
デンプンは下記のように分解されます。
デンプン > ブドウ糖 > 有機酸 > 水 + 二酸化炭素
デンプンは嫌気環境下では、分解は有機酸で止まりますが、好気環境下では水と二酸化炭素になります。
水はアミノ酸の無機化を進める要因になりますので、米ぬか嫌気ボカシ肥作りで穴の空いた容器を用いるのは厳禁になります。
追記2
甘い香りは短鎖脂肪酸(有機酸)とアルコールのエステル化によるものと、糖とアミノ酸のメイラード反応によるものがあります。
前者のエステル化の例としまして、酪酸(悪臭) + エタノール → 酪酸エチル(果実香)があります。