
京都農販日誌
保肥力が高い土の土壌分析で注意すべき点について
2025/10/06

上のような土壌分析の結果に対して、興味深い話題がありましたので紹介します。
その内容というのが、土壌分析の結果を見る限り、苦土(マグネシウム:Mg)、石灰(カルシウム:Ca)とカリ(K)が不足しているように見えるのだけれども、これらの欠乏を警戒しながら栽培をしてみても一向に欠乏症が見られないのは何故なのでしょう?というものでした。
先に結論から記載しますと、土壌分析の結果の時点でどの要素も十分量あるということになります。
何故、土壌分析のグラフではMg、CaとKは欠乏しているといった描写になるのでしょうか?
話をしていた方の土壌は、内容から予想するに

のような黒ボク土である可能性が高いです。
黒ボク土は土の色が黒ければ黒い程、保肥力(CEC)が高くなる傾向にありまして、冒頭の土壌分析の結果を見ても、CECが20meq/100gを優に超えています。
※CECが高くなる資材を積極的に使用していました。
このCECがとても高いという状態が、今回の本題のMg、CaとKを読み解く鍵になります。
石灰(Ca)を例にして話を進めますが、土壌分析のグラフを描写する時、どのような計算式になるか?といいますと、グラフには石灰飽和度(%)の値を描写することになり、
石灰飽和度(%) = {(石灰分析値 ÷ 酸化石灰の成分量) ÷ CEC} × 100
で計算し、CECの値が高ければ高い程、結果のグラフの石灰の値は小さく見えるようになります。
※酸化石灰の成分量を28.04にして計算します
今回の土壌分析の結果では、石灰分析値が220でCECが27でしたので、
石灰飽和度(%) = {(220 ÷ 28.04) ÷ 27} × 100 ≒ 29.1
になります。
実際に冒頭の土壌分析の結果でも石灰(Ca)の値は規定量よりも多めの数値だったのですが、それ以上にCECが高かった為、グラフ上では石灰が足りていないように見えただけなのです。
ちなみにですが、今回の結果のうち、CECのみ15程数値を減らしてみますと、

のようにどの成分も足りているように見えるどころか、石灰は若干の過剰な状態になってしまいます。
石灰飽和度(%) = {(220 ÷ 28.04) ÷ 12} × 100 ≒ 65.4
今回のようにCECが非常に高い場合は何を見れば良いか?と言いますと、苦土(Mg)、石灰(Ca)とカリ(K)が同じぐらいの量であるか?の方が大事になりまして、一つの要素だけが極端に凹んでいる場合はその内容を改善すれば良い結果に繋がります。
※今回であればカリウムになります。
もう一点大事な事になりますが、
土壌分析をされた場合はグラフと一緒に分析値と基準値の記載があります。
分析値が基準値と大きく離れていないことも確認しておきましょう。

