
京都農販日誌
ウスバキトンボのヤゴはジャンボタニシの天敵であるそうです
2025/09/01


稲作をされている方と話をしている時にジャンボタニシの話題が挙がりまして、ジャンボタニシの天敵は何か?という話題になりました。
ジャンボタニシは大きな体の割に動きは遅く、田にいる生物に対して攻撃性がない、更には天敵として田に集まる鳥が挙がるところから捕食者に対しての毒性が無いにも関わらず、防除に困っているという現状は栽培管理に問題があるような気がしていまして、ジャンボタニシの被害が比較的少ない田の観察を続けています。
ジャンボタニシの天敵として、

ウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉)というトンボがいまして、ウスバキトンボの幼虫(ヤゴ)がジャンボタニシの稚貝を捕食するという報告があります。
4.指標生物の識別法、調査法 - 農研機構 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
稚貝の個体数が減ったところで、ジャンボタニシの食害の軽減には繋がらないと思いますが、ジャンボタニシの成貝は日本の寒さでは越冬出来ず、稚貝で越冬するものがいると言われていますので、稲作の収穫直前辺りでヤゴが稚貝をたくさん捕食してくれていれば、来年のジャンボタニシの被害が軽減されるかもしれません。
ウスバキトンボが来年のジャンボタニシの被害を軽減させる可能性があるのであれば、次に把握しておくべきことはウスバキトンボの生態についてです。
ウスバキトンボは日本のトンボではなく、初春に大陸から吹く風にのって日本にやってきます。
※イネの害虫のトビイロウンカもウスバキトンボと同じように日本にやってくることで有名です。

日本に到着したら、学校のプール等の有機物量が多い止水の環境に産卵をします。
よく学校のプール掃除をしていたら、たくさんのヤゴがいたとことで近くの池や川に放流したりしますが、その時のヤゴの中にウスバキトンボのヤゴがいる可能性があります。
ウスバキトンボの成長はとても早く、卵は一週間程で孵化し、ヤゴの期間は一ヶ月程で、羽化し成虫になってから1ヶ月程で産卵期を迎えるそうです。
プールで育ったウスバキトンボを第二世代と呼ぶことにして話を進めます。
第二世代のウスバキトンボの産卵時期は7月下旬から8月中旬とされています。
ちょうどお盆あたりに田に集まる事からウスバキトンボはお盆トンボや精霊トンボと呼ばれていたりします。
ウスバキトンボは産卵場所として止水を求めて各地を飛び回り、水を張っている田を見つけて産卵をします。
この時のヤゴがジャンボタニシの稚貝の天敵になるのですが、ヤゴの生育にとって一点程問題があります。

それは産卵が中干しの時期と重なるということです。
この中干しが厄介なのが、ヤゴは田から水がなくなると死滅しますが、ジャンボタニシの方は乾燥耐性があり、中干しの期間も生き残ります。
中干しによって再び水を張った時にジャンボタニシにとって天敵がいない環境が出来上がってしまいます。
とりあえず話はウスバキトンボの生態に戻りまして、第二世代のトンボが産卵したヤゴが無事に羽化して成虫になったものを第三世代と呼ぶ事にします。
第三世代のウスバキトンボは悲惨な事に日本の寒さでは生きることができず全滅します。
翌年にウスバキトンボを見かける事が出来ますが、それは日本で生まれた個体ではなく、再び大陸からやってきたトンボという事になります。
※参考:井上清、谷幸三著 トンボのすべて 新装改訂版 増補 世界のトンボ - トンボ出版
このウスバキトンボの話を読んだ時に、もし地域にあるすべての田が中干しをしなかったとすると、ジャンボタニシはどうなってしまうのだろう?と想像しました。
ジャンボタニシが今ほど厄介者扱いはされてはいないのでは?と想像してしまいます。
中干しに関しては賛否両論あり、できればしたくないという意見をよく聞きます。
(指導する方も含め)中干しの意義を理解し、適切に中干しを行う方が増えれば、稲作の不調から脱却出来るのではと考えています。
年々増える猛暑日対策として、中干し無しの稲作に注目しています
関連記事
⇓ 大規模な稲作で慢性的な鉄不足に陥っているのでは?という懸念についての記事
⇓ ジャンボタニシの防除に関して
ウスバキトンボに関するおすすめのページ
