
京都農販日誌
稲作における一発肥料と土壌の劣化について
2025/07/15
稲作で使われています一発肥料で気になる事がありますので整理してみます。
稲作でよく使われている一発肥料の保証成分を確認してみると、窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)のみの記載で時々、苦土(Mg)や鉄配合という表記があることを見かけます。
この配合はおそらく稲作は地力で穫るという考え方に基づき、他成分(亜鉛やマンガン)は田に流入する水に含まれているもので賄うもしくは土壌中に元からある事を想定していると予想しています。
前者の流入する水に含まれる成分に関してですが、区画整備された用水路(もしくはパイプライン)では、養分が豊富に含まれるであろう泥が入る量が激減(もしくは無し)になり、地力の低下が心配になります。
稲作では連作障害がないと考えられていますが、土壌の劣化は有り得まして、劣化は一種の連作障害だと考える事が出来ますので、稲作に連作障害がないという考え方自体が懐疑的です。
土壌の劣化に関しましては、稲作の土壌分析で注意すべき点についてで記載しましたが、pHが下がったのが一つの目安になりまして、慢性的にpHが低いと鉄や亜鉛といった微量要素の流亡が始まり、品質の低下を招きます。
※亜鉛は光合成量の増加や各種耐性に関与するので、亜鉛の欠乏は皆さんが思っているより深刻です。
作物が病気になった時は農薬の使用の前に微量要素の葉面散布をおすすめします
微量要素の流亡に対して、以前は田に入れる水に含まれる泥で賄っていたと予想しますが、区画整備と大規模化による作業の簡略化により期待できなくなりました。
先程挙げました一発肥料の配合に関しての後者の方の意見の土壌中に元からあるの方の微量要素も期待出来ません。
上記の状況の中で、窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)のみの一発肥料での稲作では劣化した田でまともに収穫する事が出来なくなってしまいます。
区画整備を行った田では、最低でも微量要素配合の一発肥料を使うか、有機配合一発肥料を使う必要があるかと思います。
ただ、有機一発肥料の方は窒素を確保する為にフェザーミール等を配合している事が多く、フェザーミールには微量要素は期待出来ないとされています。
微量要素は風化前の鉱物(泥も鉱物)に含まれていますので、一発肥料に合わせて鉱物系の肥料を施肥することで、田の土壌劣化の問題を軽減できるようになります。
追記1
稲作の省力化と大規模化の話題で、

ドローンによる施肥や農薬の散布がありますが、肥料の重量を減らすために濃い肥料を搭載する傾向にあります。
肥料の濃さ(特に窒素)に意識を向けると、今まで意識されてこなかった秀品率の要の微量要素に意識が向く事がなく、土壌の劣化を加速させる心配があります。
土壌の劣化が深刻化する前に、少しでも土壌の状態に目を向けて欲しいと切に願います。
追記2
最近、イネに菌根菌を共生させて乾田直播(マイコスDDSR等)する話題をよく見聞きしますが、菌根菌との共生は地力の前借りのようなものでして、一般的な水田と同じような感覚の施肥設計の場合、土壌の劣化が更に深刻化するので心配です。
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