
お役立ち農業辞書
鉱物系肥料
植物は自身の成長に必要な養分を土壌中に含まれる岩石から得ています。
一例を挙げますと、
火山灰で有名な鹿児島県の桜島の土壌にたくさんあります角閃石(かくせんせき)は一般的にカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)を含み、植物から分泌される根酸によって溶ける事で、これらの成分が溶脱します。
他にも養分を含む土壌の鉱物の種類は多く、微量要素の大半は土壌中の鉱物由来になります。
土を構成する鉱物の例
鉱物名 | 風化抵抗性 | 説明 |
---|---|---|
石英 | 難 | 肥効は期待できない |
正長石 | 中 | カリウム(K)の主要な給源 |
斜長石類 | 中 | カルシウム(Ca)の給源 |
白雲母 | 中 | カリウム(K)の給源 |
黒雲母 | 易 | カリウム(K)とマグネシウム(Mg)の給源 |
角閃石 | 易 | カルシウム(Ca)、マグネシウム(Fg)と鉄(Fe)の給源 |
輝石類 | 易 | カルシウム(Ca)、マグネシウム(Fg)と鉄(Fe)の給源 |
リン灰石 | 易 | リン酸(P)とカルシウム(Ca)の給源 |
かんらん石 | 易 | マグネシウム(Mg)と鉄(Fe)の給源 |
鉱物が養分を溶脱しながら形を変えることを風化と呼び、他の鉱物(二次鉱物)へと形を変えていきます。
先程の角閃石の風化を見てみますと、角閃石 > 緑泥石 > モンモリロナイト > カオリナイト > ギブサイトの順で変化していきます。
緑泥石からカオリナイトまでが粘土鉱物になりまして、ギブサイトは更に風化の進んだ鉱物になります。
カオリナイト以降の鉱物は栽培者にとって都合の悪いものになりまして、これらの鉱物が蓄積した土壌は土が劣化した状態だと見做します。
カオリナイト以降の土が蓄積した土壌を赤黄色土と呼びます。
※詳しくは栽培が難しいとされる赤黄色土について - 京都農販日誌をご覧ください。
粘土鉱物
鉱物名 | 型 | CEC(meq/100g) |
---|---|---|
カオリナイト | 1:1型 | 2〜10 |
ハロイサイト | 1:1型 | 5〜15 |
モンモリロナイト | 2:1型 | 60〜100 |
バーミキュライト | 2:1型 | 100〜150 |
緑泥石 | 2:1:1型 | 2〜10 |
アロフェン | 非晶質 | 30〜135 |
※CECは保肥力を指す
※腐植のCECは30〜280meq/100g
粘土鉱物のうち、モンモリロナイトやバーミキュライト等の鉱物(2:1型粘土鉱物に分類された粘土鉱物)には栽培者にとって望ましい機能があり、その機能は下記になります。
- ・保肥力の増加
- ・腐植酸を土に留めておく
※バーミキュライトは黒雲母等が風化することにより生成される
土作りで重要な腐植酸は粘土鉱物がない土壌(砂質土や赤黄色土)では施肥をしても土に定着せずに流れてしまいます。
施肥した腐植酸の肥効を確実なものにしたい場合は腐植酸の施肥の際に鉱物系の肥料も合わせて施肥をする必要があります。
以上の話をまとめますと、鉱物系の肥料で期待できる効果は置換性塩基や微量要素の供給と腐植酸の蓄積になりまして、常に頭に入れておきたい内容としまして鉱物系の肥料は消耗するということになります。
土中の植物にとっての養分を持つ鉱物の種類や量には地域差がありまして、鹿児島の桜島や上流から川の水経由で良質な鉱物が常に供給され続ける地域もあれば、ほとんど供給されずに肥料の計算のみで栽培をし続けなければならない箇所もあります。
当たり前の話になりますが、鉱物資源が豊富な地域では肥料はほとんど必要無く、資源が乏しい地域では多くの肥料を必要とします。
地域の特性をしっかりと見極め、無駄な施肥を控えることが、秀品率の向上の第一歩となります。
※詳しくは地質図から訪れたことのない遠方の土質を予想する1、地質図から訪れたことのない遠方の土質を予想する2と地質図から訪れたことのない遠方の土質を予想する3をご覧ください。
緑泥石に関して