
京都農販日誌
溶液栽培の培地の交換時期の目安はあるか?
2026/05/01

イチゴやトマトの溶液栽培で培地の交換時期の目安を把握しておきたいので何か良い指標はありますか?という話題が挙がりました。
この話題ですが、調べていくうちに栽培における注意点も見えてきましたので、その内容を整理してみます。
最初に注目したのがCEC(保肥力)になります。
培地内の有機物が消耗することで、保肥力が低下していくと考えたからです。
施設栽培とCECに着目して調べてみましたところ、イチゴ高設栽培における連作が生育・収量および培地に与える影響 - 熊本県農業研究センター研究報告 第14号の研究報告を見つけましたので読んでみましたところ、最長8年の使用での報告になりますが年々培地のCECが高まっていく傾向にあるという記述がありました。
何故培地のCECが年々高まっていくのでしょうか?
培地を構成する資材から考えていくことにしましょう。
培地を構成する資材を挙げてみますと、

バーミキュライト、

ピートモスと
日向ボラになっています。
バーミキュライトは2:1型粘土鉱物に分類され、日向ボラは風化すると非晶質粘土鉱物のアロフェンに変質し、どちらも土壌中でCECの要因になります。
ピートモスは腐植の素になりまして、こちらも土壌中でCECの要因になります。
養液栽培で栽培を続けるにつれ、これらの資材はどのように変わってCECが高まっていくのでしょうか?
真っ先に思い付くのが、栽培期間中にピートモスの熟成が進むことです。
栽培一年目ではピートモスはまだ未熟で、栽培を続けるにつれてピートモスが熟していくというものです。
もう一つが粘土鉱物からアルミニウムが溶脱して、それがピートモスの腐植様物質に取り込まれることです。
腐植様物質がアルミニウムを取り込むことで、腐植様物質は微生物などに分解され難くなりCECが高まるとされています。
上記の話題から冒頭で挙げました培地の交換時期でCECを目安にすることは難しい事になりました。
CECという数値で見るのは難しいのですが、ピートモスの腐熟化(堆肥化)することで保水性が高まることで養分が抜けにくくなります。
この養分が溜まりやすくなるという現象から病気になりやすい環境へと繋がっていく恐れがあります。
続いて気になることとしまして、培地の連続使用により、可給態リン酸および交換性カルシウムが増加し、交換性マグネシウムおよびカリウムは減少するという記述です。
※イチゴ高設栽培における連作が生育・収量および培地に与える影響 - 熊本県農業研究センター研究報告 第14号の研究報告より引用
上記の内容は

バーミキュライトから考える事が出来ます。

Didier Descouens - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによる
バーミキュライトは造岩鉱物の黒雲母が風化した事により変質した二次鉱物になります。
黒雲母はカリウムやマグネシウムの給源になりまして、変質したバーミキュライトもカリウムやマグネシウムの給源に成り得ます。
栽培一年目にはバーミキュライトから溶脱した分も検出されていましたが、使用年数が経つに従って溶脱量が減っていく可能性があります。
バーミキュライトからの溶脱は塩基だけではなく、ケイ酸やアルミニウムもあり、先程のCECの話と繋がります。
培地内のリン酸とカルシウムの増加は栽培時に作物に吸収されなかった余剰分だと考えられます。
どちらも深刻な過剰症が報告されている要素になりまして、培地の交換はこれら二成分の蓄積量を目安にすれば良いでしょう。
今回の内容から肥培管理の面で培地を長持ちさせる為の方法が見えてきます。
培地の交換時期が塩基バランスの乱れに因るものだとすればバランスを崩さないように施肥すれば良いことになります。
培地の使用年数が経つに従い、カリウムとマグネシウムの施肥量を増やし、リン酸とカルシウムの施肥量を減らすといったところです。
もちろん培地内には病原性の菌が優位になっている可能性もありますので、病気の出方も意識する必要はありますが、それも肥培管理次第である程度抑えることが出来るはずです。
リン酸(正リン酸)はダウン剤(溶液のpHを下げる)で使いたいという事がありますが、別のダウン剤も選択も視野に入れておくと良いかもしれません。
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