
京都農販日誌
トマトの水耕栽培で有機質肥料を使う
2025/05/25

トマトの水耕栽培で有機質肥料を使って栽培するという話題が挙がりました。
水耕栽培で有機質肥料を使って栽培する上で、真っ先に考えるべき事としまして、有機態窒素の無機化があります。
具体的にいうと、タンパクという形から、植物の根で吸収出来る硝酸に変えるというものです。
この反応は培地にいるであろう土壌微生物によって行われます。
ただ、有機態窒素はある程度分解されれば、無機態窒素まで形を変える必要はなく、途中の産物であるペプチドやアミノ酸の形になっていれば植物は利用することが出来ます。
であれば、ペプチド肥料やアミノ酸肥料を用いれば、窒素肥料の問題は解決します。
ペプチド肥料等の加工された有機質肥料ではなく、米ぬか等の食品加工由来の有機質肥料を使いたいというケースを考えてみます。

確実な肥効を得たいのであれば米ぬか嫌気ボカシ肥の形にしておいて、ペプチドやアミノ酸としての肥効の準備をしておきます。
この状態で水に溶かして、その時の上澄み液を施肥すれば期待した効果を得られる可能性が高くなります。
似たような内容が下記のページに記載があります。
ボカシ肥ではなく、有機質肥料そのものを使用していきたいというケースがあります。
この場合考えることが、培地にいる微生物(主に真菌)に有機態窒素を無機化してもらうという方法になります。
タンパク等の有機態窒素の無機化に関しましては、肥料の発酵 - お役立ち農業辞書に記載されている堆肥化の初期の炭水化物・脂質・タンパクの分解に関与する菌が無機化をすることになります。
堆肥化の初期段階ではコウジカビ、クサレケカビ等のタンパクの利用が上手な菌が働くとされていますが、フザリウム等の多くの作物に病原性(植物寄生性)を示す菌も働く事があります。
※コウジカビやクサレケカビにも作物に病原性を示す菌がいます。
どのような菌が培地に集まってくるかは周辺環境に因るものが大きく、有機物を利用出来る腐生性と植物に寄生出来る植物寄生性の菌が最も優勢になりやすいので、真菌に対する理解と細心の注意がなければ、培地が病原性の菌で占める可能性が非常に高いです。
もし、ぼかす前の有機質肥料で水耕栽培を行いたい場合は、無機化する為の場所(分解槽)を別途用意して、分解槽から養分を培地に移動する時は、分解に関わった菌が培地に混入しないようにする工夫が必要になります。
今回の内容に関する研究報告
野菜花き研究部門:有機肥料による養液栽培技術の開発 -化学肥料を使わず有機肥料だけの養液栽培が可能に- | 農研機構
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