
京都農販日誌
初期生育で綺麗な根をたくさん生やす為に
2026/04/13

※写真:秀品率の高い畑の土壌分析を行いましたの記事より
初期生育では発根の促進の方に注力すべきということはわかりましたが、実際にどうすれば良いですか?という質問がありました。
初期生育で栽培者が作物の発根の促進に関してできることについてまとめてみます。
発根促進について考えてみますと、
・発根促進に関する要素を加える
・発根の抑制に関する要素を除く
の2つが考えられます。
発根の促進については植物ホルモンの知識を使うと明確になってきますので、その視点で考えてみます。
植物ホルモンは作用が複雑なので単純化は難しいのですが、極力シンプルに見ていきますと、発根促進に関してはオーキシンを見ていくとわかりやすいです。
オーキシンは根において極少量の濃度で発根を促す作用があります。
※大量の濃度では除草剤の作用になるので注意
オーキシンが発根を促進するメカニズムを解明 〜発根を調節する農薬の開発に期待〜|PressRelease
上記の内容からオーキシンの合成が活発化すれば発根の促進につながると考えられます。
※体内で合成されるオーキシンの量では過剰になることはありません。
実際の栽培でオーキシンの合成を活発化できる要素を考えてみますと、アミノ酸の一種のトリプトファンと亜鉛(Zn)が挙がります。
オーキシンの合成に関して亜鉛が重要だと言われており、亜鉛自体が欠乏しやすい要素だとされています。
亜鉛が発根促進の要素であるとして話を進めます。
亜鉛は微量要素になりますので、欠乏するのもよろしくないですが、過剰症にもなりやすいので入れすぎも注意です。
過剰症を回避しつつ亜鉛を補填する方法として真っ先に挙がりますのが土壌改良材に加えて土の化学性を高めながら施肥をすることです。
この条件を満たすことができる資材を挙げてみますと、

地力薬師に含まれますモンモリロナイト(2:1型粘土鉱物)があります。
成分表には記載はありませんが、少量の亜鉛が含まれていまして、地力薬師自身が土の化学性を高めることができます。
亜鉛の含有量は少量だったとしても亜鉛自体が微量要素の中で要求量が少ない部類になりまして、土壌改良材として施肥する量であれば生育に良い影響を与える程の量の投入になります。
※稲作で川から水を入水する時、泥も一緒に入っていると亜鉛が増える可能性がありますが、今回はこの詳細には触れません。
発根の抑制の方を考えてみます。
発根を抑制する要素を挙げてみますと、
・土の物理性が低いことによる根腐れ
・活性アルミナの溶脱による根の伸長の停止
・発根の抑制に関する植物ホルモンの合成
の3つが考えられます。
物理性に関しては先程挙げましたモンモリロナイトと植物性堆肥で土壌改良を行うことで物理性の向上を狙うことができます。
※土の物理性には排水性、保水性と土の柔らかさがあります。
活性アルミナですが、粘土鉱物が強い酸化作用を受けますと、鉱物の構造が変化してアルミニウムが溶脱します。
このアルミニウムを活性アルミナと呼びまして、植物の根が活性アルミナに触れると根の伸長が停止します。
松本英明 酸性土壌とアルミニウムストレス 根の研究 12(4) :149-162(2003)
ただ、活性アルミナにも栽培上で有利になる使いどころがありまして、先程挙げました物理性の改善に対して腐植の強化の作用があったり、後述します土の生物性の向上により抗菌作用を示すようになりますので、植物性の堆肥を効かせていれば活性アルミナの心配はありません。
三番目の発根の抑制に向かう植物ホルモンですが、先程挙げましたオーキシンと対になる植物ホルモンのサイトカイニンがあります。
サイトカイニンは増収で重要となる植物ホルモンになりますが、初期生育でサイトカイニンの影響が大きくなりますと、発根よりも地上部の茂りが優勢になってしまい、栽培後期で発根量が少ないことによる苦戦(各種耐性の低下)に繋がります。
サイトカイニンはどのような条件で合成されるか?になりますが、栽培者が一番制御しやすい条件としては、根圏の硝酸態窒素の濃度が高い時です。
初期生育の窒素肥料として硝酸態窒素を頻繁に用いると発根が抑制の方向に向かいます。
硝酸態窒素と聞いて真っ先に頭に浮かぶのが、

熟成した家畜糞になるかと思います。
家畜糞は熟成が進む程硝酸態窒素の濃度が高くなりつつ、土壌改良材として大量に投入したくなるというイメージを持った肥料になります。
家畜糞を土壌改良材の堆肥として扱ってはいけないというのは、土壌改良材としては硝酸態窒素の影響が大きいからになります。
初期生育の段階では極力有機態窒素のアミノ酸肥料を用いると発根抑制の要因を除きつつ窒素を効かせることができます。
※アミノ酸肥料の例:島人グルミン | 商品紹介 | 株式会社京都農販
※硝酸態窒素の使いどころに関しては硝酸石灰の使いどころをご覧ください。
話は亜鉛に戻りまして、土壌中に亜鉛は十分量あるはずなのに意図通りに亜鉛が効いてくれないということがあります。
この原因というのが各肥料成分の拮抗作用になります。

※図:土壌䛾基礎知識Ⅰ - 農林水産省 15ページより一部改変して引用
亜鉛は土壌中の石灰やリン酸が過剰の場合は拮抗作用で効きが悪くなります。
石灰とリン酸はどちらも過剰症になりやすい要素になっていまして、発根を促進させるためにはこれらの過剰性を解決する必要があります。
石灰の過剰については石灰過多の土壌への対策、リン酸の過剰についてはリン酸過剰問題に対して腐植酸の施用は有効か?をご覧ください。
発根促進に関して他に意識すべき点ですが、基肥の構成でEFポリマーを加える事をおすすめしますで記載しました初期生育時の見えない干ばつへの対策があります。
具体的な対処法としまして、

土壌改良剤で物理性や化学性が高まり、排水性がありつつ水持ちがよくなった土壌であったとしても、


保険として基肥で高吸水性樹脂を仕込んでおき、保水性を限りなく高くしておくことです。
保水性の向上の資材のEFポリマーには物理性の向上の可能性もある
高吸水性樹脂を仕込む事により、水持ちが良くなることはもちろんの事、土壌中で樹脂由来の多孔質な構造が出来、土の生物性(主に多様性)が向上する可能性があります。
土の生物多様性を向上させる事でも発根促進に繋がる要因がありまして、それはオーキシンを合成する菌との共生があります。
生態学研 共生の相乗効果を発見 2種の真菌で植物の成長促進(2021.11.01) | 京都大学新聞社/Kyoto University Press
眞木裕子 ぼかし肥料の発根促進作用における乳酸菌の働きについて - 雪印種苗
発根の発根の繋がる環境づくりとして、生物多様性の向上にも意識を向けておくと良いでしょう。
今回話題に挙げました亜鉛については微量要素 - お役立ち農業辞書に詳しい記載があります。
追記
オーキシンに関して渡邉彰 腐植物質の植物成長促進機能に関する近年の研究 - Humic Substances Research Vol. 18 (2022)で興味深い内容が記載されていましたので紹介します。

内容をピックアップしますとオーキシン(インドール酢酸:IAA)がファンデルワールス力や水素結合により腐植物質の超分子構造中に保持されており、pHやイオン強度が変わると、腐植物質の分子状態が変化してIAAが放出されるという事が考えられるそうです。
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